型式番号:ORX-005
ギャプランTR-5とは
ティターンズのテストチーム(T3部隊)がギャプランを改修した機体。ガンダム・インレの戦術実証機であり、「兵器を搭載する母機(母艦)の役割」「弾道軌道での超音速侵攻」を両立した機体を目指して開発されている。
名前の元ネタは『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』に登場するうさぎ「ファイバー」、そのうさぎ言語(lapine)の名前「フライルー」。フレア・ルーとも表記される。lapineにおいて「フレア」は4以上、沢山、1000。「ルー」は小さいという意味で接尾語として使用される。
TR-5の各形態はガンダムTR-6[ウーンドウォート]のアドバンスド・フライルーⅡ形態およびファイバーⅡ形態として結実する。またフルドドⅡ装備形態の運用コンセプトもここで確立された。
ギャプランTR-5[フライルー]
元々はTR-5[ファイバー]のコアユニットとして配備された機体。当初は本来の愛称「ファイバー」や、ブレードアンテナが装備された頭部の形状から「ファイバーガンダム」などの愛称で呼ばれていた。
後にファイバーから大気圏離脱・再突入用のパーツを外した機体の区別を明確にするため、メカニックマン達からの要望に応えてメインパイロットであるウェス・マーフィが「フライルー」と命名された。
ギャプラン本体は基本的にベース機と変わらない仕様だが、姿勢制御用スラスター(アポジモーター)が各部に増設され、頭頂部の外装がヘイズルと同規格のセンサーとブレードアンテナを装備したガンダムタイプに近い形状となっており、2号機は更にフェイス・エクステリアもモノアイからガンダム同様のデュアルアイに換装されている。
また、両腕のムーバブル・シールド・バインダー(推力36,000kg/基)を廃し、ヘイズルなどが装備するシールド・ブースター(推力22,000kg/基)へと換装する事によるデチューン(総推力24,000kg低減)を行う事で、強化人間でなくても操縦可能となった。
武装面においてもムーバブル・シールド・バインダーに備わっていたジェネレーター直結型メガ粒子砲が取り外された事で、メインウェポンをロング・ブレード・ライフルへと変更している。
1号機、2号機とも最終的には宇宙世紀0088年2月のコロニーレーザー攻防戦におけるエゥーゴとの決戦に投入され、乱戦の最中に中破。部隊の母艦であるアレキサンドリア級[アスワン]への帰還は果たしたものの、同艦の轟沈と共に失われた。
武装
ロング・ブレード・ライフル
ガンダムTR-1[ヘイズル・ラー]でテストされた複合武装。Eパックを試験的に採用したショートバレルタイプのビームライフル(ビームピストル)に、ヒートブレードを有するロングバレルとストックを装着した形態。
ヒートブレードは余剰熱を使用して刀身を加熱するが、あくまで予備兵装であり、過度な運用は銃身の歪みが発生する為、フェールセーフティとしての運用が主となる。
シールド・ブースター
ヘイズルで初期からテストされていた複合兵装。シールドに22,000kgの出力を有するスラスターと、低可燃性プロペラントのタンク機能を持たせた装備。 本機では、ベース機であるギャプランの加速性能を下げるために用いられているほか、後述の[ファイバー]形態のコアユニットもこちらを装備する。
ウインチ・シールド
ガンダムTR-1用Gパーツ[フルドド]の構成部材のひとつであるノーズ・センサー・ユニットをシールドの拡張ハブとして左腕に装備可能で、これにより両腕に装備した2枚のシールド・ブースターを防御面積の拡大した1枚のシールドとして扱える。
本機の場合腕部とノーズ・センサー・ユニットの間に「ウインチ・ユニット」を噛ませて装備するため、シールド・ブースターの推力でノーズ・センサー・ユニットを内蔵のメガ粒子砲ごと射出する有線遠隔攻撃兵装「ウインチ・シールド」として扱うことが可能になっている。
ビーム・サーベル
本来の接近戦用武装。2基がマウントされており、MA形態ではサブ・ウェポンのビームガンとして使用される。
腰部スプレッドビーム砲
両腰に増設された対ミサイル防御用の低威力拡散ビーム砲。上述のジェネレーター直結型ビームライフルを廃した事で生じた余剰出力を利用していると推察される。
ギャプランTR-5[ファイバー]
型番:ORX-005+LRX-007X
「弾道軌道による敵拠点への超音速侵攻」をコンセプトにフライルーをコアユニットとして開発された拠点侵攻用の大型可変MA。ガンダムTR-6の大型オプションパーツ「ファイバーⅡ」の前身であり試験運用のための装備。
ファイバー形態はセンサー・弾道ユニット、機首ユニット、耐熱フィールドユニット、スラスターユニットと二つの複合バインダーユニットから成る追加パーツで構成されている。
旧世紀に開発された大陸間弾道ミサイル(ICBM)に類似した運用コンセプトを有しており、MA形態で地上から打ち上げられ、一度大気圏を離脱後、大気圏に再突入し地球の引力を利用することで敵が迎撃不能な速度まで加速して敵軍の拠点を強襲する。ICBMと異なり、敵地に進入後、可変MAの利点を活かしたピンポイント攻撃が可能である。
特徴的な大型バインダーは、スラスターとプロペラントタンクの他、敵拠点の迎撃システムから機体を守るためにIフィールド・ジェネレーターや拡散ビーム砲といった能動的な防御装備が内蔵されている。また、このバインダーは拠点強襲時に機体を減速させる為のエアブレーキやMSの搭載スペースとしても利用され、2機のMSを搭載し敵地にて展開することで小隊規模での拠点制圧も可能となっている。
ギャプランと同様にMS形態への変形も可能となっているが、この状態では両肩の大型バインダーがIフィールド発生機ごと2基に分割されるため、ビームバリアを展開できなくなる。強大な推力により、このMS形態でも重力下における空中戦闘が可能なため、地上戦機を圧倒するが、総重量の大幅な増加とバインダーの干渉によって歩行はほぼ不可能になってしまう。加えて、空力学的に劣悪な形状も手伝い、空戦での運動性能はむしろ低い部類である。よって、可変機との戦いでは装備排除による[フライルー]への移行が重要となる。
ウェス・マーフィーもまた、カムチャッカのエゥーゴ基地跡において、小回りの利くアッシマーとの空中戦では不利と、素早く判断。ファイバーユニットを惜しみ無く捨てることで、戦況の優位を取り戻している。
以上の他に、運用面での欠点として、ファイバーは高い防御力と加速性を得た引き換えに、旧ジオン公国軍が運用した大型MAに迫る巨体となってしまい、戦艦のMSデッキには入ることができないため、宇宙での輸送の際には船外にワイヤーで牽引されて整備などが行われる。
加えて装備が大型、かつ推進剤容量の限界により、制圧に失敗した場合は出撃地点まで自力での帰還は不可能であり、更には仮に制圧に成功したとしても、専用の大がかりな回収部隊が必要となってしまう。
事実上の特攻兵器であるため、試験運用の際にこれに同乗したカールをして「カミカゼアタック」と揶揄された。
各種形態
ギャプランTR-5[フライルー・ラーⅡ]
型番 | ORX-005+FF-X39A |
---|---|
全高 | 25.2m |
本体重量 | 50.8t |
全備重量 | 115.1t |
ジェネレーター出力 | 3,040kW(+410kW) |
ギャプランTR-5[フライルー]にスプレット・ビーム砲とサブ・アーム・ユニットを配したスカート・アーマーと、肩部にガンダムTR-1[ヘイズル]用の追加武装であるフルドドをベースに開発したサポートユニット「フルドドⅡ」の主要装備「ショルダー・ユニット」1対を装備した「領域支配(エリア・ドミナンス)モビルアーマー」。
強化パーツ装着に対する重量増(原型機のギャプランと比較して20t増)に対応する為、シールド・ブースターをムーバブル・シールド・バインダーへと戻している。
なお、ショルダー・ユニットはガンダムTR-6用の強化装備であり、フルドドのウイング・ユニットと換装してヘイズルにも装備できる。
ショルダー・ユニットはTR-6用大型オプションのジョイントハブでもあるので、下記のようにサイコガンダム/サイコガンダムMk-Ⅱ系の腕と脚をオプション化したギガンティック・アーム/レッグユニットを接続できるなど、高い拡張性を有している。
ギガンティック形態
『ティターンズの旗のもとに』設定画稿を経て『Re-Boot』で正式に設定された形態。上記フライルー・ラーⅡにギガンティック・ユニットを装備している。ガンダムTR-S[エルアライラー]のプロトタイプ的な存在。
腕のすぐ横にギガンティック・アームが存在するため取り回しの都合で腕部に装備は存在せず、代わりにフルドドⅡに付随するマルチ・アーム・ユニットにシールド・ブースターがホールドされる。このマルチ・アーム・ユニットにはシールド・ブースターの他に有線射出が可能な開放バレル式メガ粒子砲「ウインチ・キャノン」や核弾頭を搭載した大型対艦ミサイルの装備も検討されていた模様。
サイコギャプラン
ギガンティック形態同様に旧AOZの画稿が初出で『Re-Boot』でも紹介されたジオングのコンセプトを継承した火力強化形態。
胸部に拡散ビーム砲を外装しムーバブル・シールド・バインダーは先端が有線射出可能な4連装大型ビーム砲を内蔵した強化型バインダーに交換、それに伴い背部スラスターには遠隔操作管制用のサイコミュユニットが増設されている。
このサイコミュの機構は後のサイコガンダムMk-Ⅱやエルアライラーの左ギガンティック・アームにも確認できるため、本機の試験データが利用されている可能性がある。
ギャプランTR-5[アドバンスド・フライルー]
フライルーに新開発されたTRシリーズ汎用強化パーツ一式を装備したTR-5の最終発展型。
当初これらのパーツはマーフィー搭乗の1号機に装着される予定だったが、戦線の激化による2号機の実戦配備に伴い、各々にパーツを分配した別仕様の機体として完成された。
もっとも、この計画変更も実際はエリア・ドミナンス仕様の一つであり、異なる2機の特性を活かしたフォーメーション戦術、同一機故の高い互換性による柔軟なパーツ換装等、様々な利便性をもたらす。
ムーバブル・シールド・バインダーに「ウイングブースター」1対、背部スラスターの上にハイ・メガ・キャノンとマルチウェポンコンテナを装着しており、胸部にはヘイズル・アウスラのものを改設計し胸部にも接続できるラッチを備えた強化型ウインチ・キャノンを装備している。ただし、ウインチユニットは外部依存のためギャプランの胸部そのもので当然ウインチユニットなど内蔵していないフライルーの胸では射出不可。
ショルダー・ユニット同様、これらのパーツもガンダムTR-6との互換性を持つ。
この形態はガンダムTR-6[ウーンドウォート]アドバンスド・フライルーⅡ形態の構想に流用されている。
ギャプランTR-5[アドバンスド・フライルー・ラーⅡ]フルアーマー仕様
型番:ORX-005AD+FF-X39A
1号機・2号機に分散装備された兵装を統合・装備した形態。フルドドⅡの装備により、全領域支配対応の完成形となった。
立体化
立体化については、HGUCにてギャプランをベースに頭部を新規造形、ロング・ブレード・ライフル(とビームピストル)、ショルダー・ユニットなどを追加することで、[フライルー・ラーⅡ]1号機が一般流通で製品化された。商品名は「ギャプランTR-5[フライルー]」だが後年の命名規則改定で商品名と作中の名称の不一致が起きている。
ショルダー・ユニットやスカートのサブ・アームユニット(アドバンスド・ヘイズルのような武器ホールドギミックなどは無いダミー)などは取り外せるもののシールド・ブースターは付属しないた素のフライルーを再現するにはヘイズル改のシールド・ブースターが2枚必要となる。
なお、この製品に付属するショルダー・ユニットはのちに販売された「フルドドⅡ拡張セット」などとは互換性がないので注意。
また、ギガンティック・アーム・ユニットとしてサイコガンダムの腕を接続する際にはフルドドⅡ側の穴は軸の径とは合わない為、軸を太くする必要がある。
ギャプランからオミットされた増加ブースター・ユニットはガンダムTR-1やガンダムTR-6への接続ジョイントを新規造形した「クルーザーモード用増加ブースターセット」としてプレミアムバンダイ限定で発売された。
色は試作カラーのホワイトと実戦配備カラーのダークブルーの2色が存在し、無塗装でフライルーに合うのは前者。
食玩ガンダムコンバージでは[フライルー・ラーⅡ]2号機が収録された。
関連項目
ガンダムTR-1 キハール ダンディライアン ガンダムTR-6