概要
大今良時によってコミカライズされている。
2005年12月にGONZO製作でアニメ化されることが発表されていたが、2006年12月21日に製作中止が発表。
その後、2010年11月からGoHandsによる三部作劇場アニメ作品が公開された。脚本は原作者の冲方丁自身が手がけている。
あらすじ
男性型社会を象徴するかのような高層塔型建築が並び立つ華やかな工業都市・マルドゥック市。
そこで暮らす15歳の少女娼婦ルーン・バロットは、ショーギャンブラーにしてオクトーバー社の汚れ仕事を引き受ける男・シェルの専属娼婦として虚無感を抱えながら日々を送っていた。
そんなある日、バロットはシェルによって突然車ごと焼き殺されかける。重傷を負ったバロットだったが、シェル及びオクトーバー社の犯罪を捜査していた委任事件担当捜査官のドクター・イースターと、人語を話す金色のネズミ型万能兵器ウフコックにより救出され、マルドゥック・スクランブル09法に基づく禁じられた科学技術の特別使用によって一命を取り留める。
治療によって電子干渉(スナーク)能力とそれに伴う超人的な戦闘能力を手に入れたバロットはウフコック、イースターと共にシェルの犯罪を立証するべく事件を追うことを決意。
一方、バロットを殺し損ねたことを知ったシェルは、ウフコックのかつての相棒であり、凄腕の委任事件担当捜査官ボイルドを雇い、彼女たちに差し向けるのだった。
登場人物
主要人物
- ルーン・バロット
声:林原めぐみ
本作のヒロイン。12歳の時に父親に強姦されて一家離散したことを切掛に売春婦となった少女娼婦。
ある裏取引を控えたシェルによって焼殺されかけて重傷を負うが、人命の保護などに限って禁じられた科学技術の使用を認める『マルドゥック・スクランブル-09法』に基づき、全身に電子干渉機能を持つ金属繊維による人工皮膚を移植されて一命を取り留める。
これにより全身が高レベルな一種の電子情報端末と化し、手を触れずにあらゆる電子機器への操作・干渉(スナーク)が可能となった他、彼女自身の持っていた適性が技術と合致、感覚と意識の加速によって常人を遥かに超える身体能力と知覚能力を獲得することになった。
当初は依存的で虚無的な性格だったが、ウフコック達とシェルの犯罪を追う中で様々な人々との出会いや戦いを経て、力を得たことに伴う責任やルール、真の強さや勇気、他者を愛することとは何かを身を以って学び、精神的な逞しさと生きることの意味を築き上げていく。
- ウフコック・ペンティーノ
声:八嶋智人
委任事件担当捜査官。人語を解する金色のネズミ型万能兵器(ユニバーサルウェポン)。
終戦前の宇宙戦略研究所で開発され、周囲の人間の感情を匂いとして読み取る能力を持っており、研究所では「金の卵」と呼ばれた。肉体が多次元構造になっており、亜空間に収納してある物質を用いて様々な兵器や道具に変化(ターン)させることができる。兵器として非常に強力だが、彼自身の意志を無視し、適正な範囲を逸脱して「濫用」されるとセイフティが発動、彼の心身に多大なダメージを与えてしまうことになる。
誠実で思慮深い性格であるが故に、物事を真面目に考えて悩んでしまう癖があり、名前と引っ掛けて「煮え切らない」と周囲から揶揄されることもある。尻尾をつままれて持ち上げられると怒る。
- ドクター・イースター
声:東地宏樹
委任事件担当捜査官。かつては宇宙戦略研究所の研究者だったが、戦争終結による研究所の廃棄が決定された際、ウフコック等と共に研究所を出てマルドゥック・スクランブル-09法に基づく証人保護プログラムに従事するようになった。シェルに殺されかけて全身大火傷を負ったバロットを救い、彼女の証言を元にシェル及びオクトーバー社の犯罪を追う。
当初、髪はカオス理論に基づきまだらに染め、派手な色の白衣を着込み、多くのキーホルダーを付けているというさながらパンク青年のような容姿であったが、バロットの不興を受け服装、髪型を改めた。ボイルドの無睡眠化に自分の研究が関わっていることに責任を感じている。
- シェル・セプティノス
声:中井和哉
マルドゥック市の娯楽産業を総括するオクトーバー社のショーギャンブラー。
オクトーバー社傘下のカジノを複数経営しており、裏ではオクトーバー社のマネーロンダリングも行っている。裏取引が行われるとその記憶を抽出して自身から除去する手術を受けているが、その度に子飼いにしていた家出少女や少女娼婦を殺害し、その骨をブルーダイヤに加工するという「儀式」を行う危険人物。ある大きな取引に備えてバロットを殺そうとするも失敗、彼女達が自分の犯罪を立証しようとしてることを知り、ボイルドを雇って再びバロットを抹殺することを目論む。
- ディムスデイル・ボイルド
声:磯部勉
圧倒的な戦闘力を持つ委任事件担当捜査官であり、かつてのウフコックの相棒。
元はエリート軍人であったが、ある事件で廃人寸前となっていたところを宇宙戦略研究所に保護され、開発されたばかりのウフコックと出会い、パートナーシップを結んだ。研究所の廃棄後はウフコック、イースター等と共にマルドゥック・スクランブル-09法に基づく証人保護プログラムに従事していたが、とある事件においてウフコックを「濫用」したことで彼と決別、現在はオクトーバー社の下で委任事件の捜査に当たっている。
研究所で擬似重力(フロート)を発生させる能力と一切の睡眠を必要としない肉体を与えられており、これは銃弾の軌道を逸らしたり、立ち位置を変化させる等、幅広い応用性を持つ。しかし無睡眠化とウフコックの喪失によってウフコックを求める以外のあらゆる感情を失い、巨大な虚無感を抱えるようになっている。武器として64口径という極めて巨大なリボルバーを使用するが、これはかつてウフコックがターンし、残していった物。
バンダースナッチ・カンパニー
依頼による誘拐及び殺人を生業とする集団で、人体を扱う畜産業者として潜伏しており、殺害・解体した犠牲者のパーツのうち、各々が気に入った物を生きた状態でコレクションしている臓器フェティシスト集団。脳に通信装置を、網膜にディスプレイデバイスを移植しており、それを用いて高度に連携をとることが可能。ボイルドの指示でバロットを狙う。
- ミディアム・ザ・フィンガーネイル
声:若本規夫
殺害した人間の指を自分の指に移植している。
- ミンチ・ザ・ウィンク
声:三宅健太
筋骨隆々の大男。殺した人間の眼球を全身に移植している。
- フレッシュ・ザ・パイク
声:脇知弘
バックアップ及び電子戦担当。殺害した女性の乳房を全身に移植しており、特に気に入った物はホルモン注射で育てている。
- レア・ザ・ヘア
声:かないみか
殺害した人間の髪の毛や頭皮を移植している。女性のようだが、元は男性。
- ウェルダン・ザ・プッシーハンド
声:田中正彦
リーダー。自身の掌に殺害した女性の性器を移植している。
エッグノックブルー
シェルが経営するマルドゥック市最大手のカジノであり、業界トップクラスのディーラー達が集う。このカジノの最高額チップにシェルが自身から除去した取引や殺人に関する記憶データを隠し、オクトーバー社への牽制等に用いていたことを突き止めたバロット達は迅速かつ合法的にデータを入手すべく、壮絶なギャンブル戦を挑むことになる。
- ベル・ウィング
声:藤田淑子
その世界では名前を知らないと言われているほどの凄腕のベテラン女スピナー。
バロットとのルーレットでの対決の中で語らいながら、彼女の見せる能力と才能を評価、「女としてのあり方と強さ」を教え、虚無的だった人生観に多大な影響を及ぼす。
- マーロウ・ジョン・フィーバー
声:小野大輔
ディーラー。優秀な技量を持つディーラーだが、自身の能力を過信するあまり、バロット達とのブラックジャック勝負で仕掛けを逆手に取られて完全敗北を喫する。
- アシュレイ・ハーヴェスト
声:土師孝也
エッグノックブルーのハウスリーダーであり、最強のディーラー。
シャッフルしながら全てのカードの位置を文字通り自在に操る超絶技術や寸分違わずその位置を把握するという人外の認識力に加え、バロットのプレイを一目見て手袋に化けて助言を与えていたウフコックの存在に気づくという観察力まで持ち合わせる圧倒的実力者。
バロットとブラックジャックで激戦を繰り広げるが、その中でも変化・成長していく彼女をベル同様に気に入り、「運」とは何か、「生きるのに必要な強さ」とは何かを問いかけ、敵ながら彼女を大きく進化させることになる。