仏教に措ける菩薩の一尊。梵名アヴァローキテーシュヴァラ(Avalokiteśvara)。
衆生(しゅじょう)の声を聞き、その求めに応じて救いの手を差し伸べる、柔和な女性の姿をした慈悲深い菩薩。
通常は「世」の文字を省き「観音菩薩」(かんのんぼさつ)と呼称する事が多い。これは唐の二代目皇帝・太宗の本名が「李世民」と表記する事に対する避諱(ひき、目上の者の諱を用いることを忌避する漢字文化圏特有の慣習)に基くもの。
他にも観自在菩薩(かんじざいぼさつ)、施無畏者(せむいしや)、円通大士(えんつうだいし)、救世円通(ぐせえんつう)など様々な別称がある。
勢至菩薩(せいじぼさつ)とともに阿弥陀(あみだ)仏の脇侍として仕える。
補陀落(ふだらく、または“普陀落”とも表記)と言う霊山に居を構える。
慈悲の無限性に応じた多様な姿(通常、三十三形態あるとされる)で説かれ、「千手観音」「魚籃観音」「馬頭観音」「白衣観音」「楊柳観音」などが有名。
信仰の対象であるのみならず、民話などにも頻繁に名が登場し、「西遊記」でも重要な役どころを演じている。