概要
ラーン=テゴスは、無数の吸入管が備わった丸い胴体、蟹の様な鋏がついた六本の触腕、長さ1フィート程の鼻という異形の神性で、ラーン=テゴスは獲物を捕えて全身の吸入管から吸血する。
ラーン=テゴスは無窮にして無敵の存在であり、この神が死ねば他の旧支配者は復活できなくなるという。
300万年前、ユゴスから地球に飛来して北極に棲みつき原始人を信奉者にしていたが、
ラーン=テゴスへの崇拝が廃れたことで一時冬眠に入った。
しかし20世紀初頭にロジャーズ博物館の館長スティーヴン・ジョーンズによって北極圏にある石像都市の地下からロンドンに“像”持ち込まれた。だが、ジョーンズも間もなく行方をくらまし、“像”もオンタリオ美術館の手に渡った後消息不明となる。
なお、信奉者によるラーン=テゴスへの呪文は以下である。
ウザ=イェイ!ウザ=イェイ!イカア・ハア・ブホウ-イイ、
ラーン=テゴス-クルウルウ・フタグン-エイ、エイ、エイ、エイ
ラーン=テゴス、ラーン=テゴス、ラーン=テゴス
下馬評
一部の神話作品読者からはラーン=テゴスを“最弱の旧支配者”として扱う向きがある。
そもそもの出典作品である「博物館の恐怖」だが、この中でラーン=テゴスは、
・信奉者がスティーヴン・ジョーンズ一人だけで、しかもかなりのところ狂気に染まっている。
・先述の『無窮にして無敵』『この神が死ねば~』もジョーンズの談によるものであり、作中では魔導書のような典拠はない。
・ロンドンに来てからの食料は野犬または野良猫のみ。 ・平生の隠れ家はジョーンズが用意した水槽の中。
・触腕で扉一つ破るのに手こずる。 ・事件の後、蝋人形として展示される。
という残念すぎる扱いで、終始SAN値の低いスティーヴン・ジョーンズの方がよっぽど恐怖に値する存在である。
しかも、ジョーンズの助手であるオラボナという人物がオチを務めるのだが、その不敵な態度と色黒の容姿という描写からアレじゃないかという憶測まで飛び出し、ラーン=テゴス自身の印象の弱さに拍車をかけている。
なお、解説書の中には“ラーン=テゴスを滅ぼすこと自体人間では不可能”と設定について補完しているものや、TRPGのサプリメントには都市一つ壊滅させる力を持っているなどそれなりの扱いをしているものもある。
「博物館の恐怖」について
顧客の一人ヘイズル・ヒールドから、うんざりする程の酷いプロットを送られてラヴクラフトが嫌々執筆した作品であったらしい。Call of Cthulhu等の作品のパターンを踏襲しているのは、ラヴクラフトがわざと行ったものと想われる。
マダム・タソー蝋人形館を解雇され、まともでない、或いは正体不明の何かを崇拝していると噂されるジョージ・ロジャーズが運営するロジャーズ博物館は様々な蝋人形を展示していたが、それらはスプラッターな、ホラーな方向に優れていた。そして、クトゥルー、ツァトゥグア、チャウグナール・ファウグンといったものまで展示されていた。そこを訪れロジャーズと彼の助手オラボナの知己を得たスティーヴン・ジョーンズは、そこでロジャーズから南極で眠っていた神を見つけと教えられ写真を見せられる。ロジャーズはその神ラン=テゴスに仕え生贄を捧げているのだと主張するが、写真のラン=テゴスを造り物だと想ったジョーンズは取り合おうとせず、その晩、彼を生贄にしようとしたロジャーズを撃退する。そして二週間後、ロジャーズ博物館を訪れたジョーンズは助手のオラボナから恐怖の展示物を見せられる。
明らかに小神であるラン=テゴスに対する大げさな崇拝や、ラヴクラフト自身の創造物を次々と引き合いに出すなど、実はラヴクラフトは、自分がゴーストライティングする事になったこの作品を笑いのめしていたのではないだろうか。
ノフ=ケーの神
ラーン=テゴスは、4本腕毛むくじゃらの種族ノフ=ケーと結び付けられる。またラーン=テゴスはツァトゥグァと激しく敵対しており、そのことからノフ=ケーとツァトゥグァを崇めるヴーアミ族も対立している。
「博物館の恐怖」では“像”だが、実体をもたない大気の神という側面も持っている。