概要
近視(きんし)は、屈折異常のひとつで、眼球内に入ってきた平行光線が、調節力を働かせていない状態で、網膜上の正しい位置ではなく、もっと手前に焦点を結んでしまう状態。近眼(きんがん、ちかめ)ともいう。
つまり遠くが見えにくい状態である。
近視は屈折の問題であり網膜や視神経の疾患ではないので一般的に矯正視力が低下するものではない。
現代、近視は増加傾向にある。小中学生でも近視の割合は年々高まり、小学生の1/4、中学生の1/2は近視であると言われる。この増加傾向は、小中学生の生活習慣の変化によるものとも、小中学生の平均身長が伸びたことの不可避的な副産物とも言われている。
近視は目の成長が止まるにつれて進まなくなる。
原因
近視の原因は未だに解明されていないが、遺伝的な要素と環境が関係していると考えられている。
遺伝的な要因
親が近視の場合、子供も近視になる確率が高くなる。遺伝的要素が複雑に絡み合っていると考えられる。
環境的な要因
一般的な近視の場合、環境も影響すると考えられている。勉強、読書、パソコンなどディスプレイを見る作業を長く続けていると、目が疲れ、好ましくない。しかし、こういったことが近視の原因になるかどうか、はっきりした証明はない。
成長過程に近視になる子どもが多い理由
誕生から20代前半にかけては眼球が成長するので誰でも近視の方向に屈折状態が変化する。つまり、
- 遠視が強かった者は遠視の程度が弱まる。
- 丁度よい強さの遠視を持っていた者は正視になる。
- 遠視が弱かった者は近視になる。
- 遠視の無かった者は強度の近視になる。
この時期に近視の症状が現れなかった者は、近視化しなかったのではなく、遠視が十分に強かったために近視が顕在化しなかっただけである。
成長期の終わった後の最終的な屈折状態(近視または遠視の強さ)は、前述の二つで決まる。ただし必ずしも遺伝だけで決まるとは決まっておらず、議論の対象になる。ただ環境による要因より遺伝的要素の方が影響は強い。
矯正方法
眼鏡・コンタクトレンズ
最も一般的な屈折矯正法。 凹レンズの眼鏡、コンタクトレンズで行われる。
高すぎる屈折力を凹レンズで緩和することにより、網膜上にピントが合うようになる。 また、見えにくい自覚症状が有る場合で偽近視で無い場合、医師の処方にもとづいて、メガネ・コンタクトレンズを購入するのが大原則である。 見えにくいままでいると、頭痛や肩こり、また生活するうえでのストレスとなり、体に大変好ましくない。
視力回復手術
角膜を手術などにより薄くして屈折力を弱め、矯正する。以下の手術法がある。
- RK手術
角膜を切開、将来の眼球破裂の危険があるため現在はあまり行なわれない。RKはラジアル・ケラトトミーの略。
- PRK手術
レーザーにより角膜を薄くする。PRKはフォトレフラクティブ・ケラトトミーの略。
- レーシック手術
PRKの改良型。
- ICR手術
角膜の周辺部にリングを埋め込んで変形させる。成功すれば眼鏡・コンタクトレンズの煩わしさが無くなるが、費用が高価。手術に危険性が伴う。後遺症が残る可能性がある。手術が成功しても思ったより視力が回復しない。気圧が下がると(飛行機内や高山で)近視が戻り、気圧が上がると(ダイビング等)遠視化する。角膜の治癒力により、数年から十数年で元に戻って(近視化して)来る。外傷に対して弱くなる。
といった問題がある。
- phakic IOL手術
phakic IOLには水晶体前の後房内に、又は虹彩支持させる形で、有水晶体下にて眼内レンズを挿入し近視矯正を行うため、角膜を薄くしない。現在は安全性の高い後者(ICLやArtiflex)が代名詞となっている。
強度近視の矯正に優れ、以前のように白内障などの合併症も減っており、欧米や韓国ではレーシックを凌ぐ勢いで使用されている。
認定資格者の医師のみが手術可能である。
- トレーニング
眼球運動による視力回復トレーニングにより毛様体の筋力を回復させる。しかし、民間療法であり医学的根拠は十分でない。
- オルソケラトロジー
角膜矯正用コンタクトレンズを使用する。 夜寝る前に装着するだけで昼間は裸眼で過ごせるが、瞬きがなくなり涙量の減る就寝中にコンタクトレンズを装用することは角膜感染症などのリスクを日中だけ装用する場合より飛躍的に高める。利便性だけで考えると夜寝る前に装着する「だけで」という手軽な感覚になるが、衛生面も考えると手軽どころかくれぐれも慎重に行うべきことである。
今のところ、一度変形した眼球を戻す方法は今のところ存在していない。