イシュトヴァーンとは、グイン・サーガのキャラクター。
CV:浅沼晋太郎
概要
ゴーラ王。妻はモンゴール前大公アムネリス。長男はドリアン。またイシュトヴァーン自身もカメロンに告げられるまで知らなかった、ドリアンより年長の息子として、アムネリスの侍女であったフロリーとの間に生まれたスーティ(小イシュトヴァーン)がいる。母はヴァラキアの娼婦イーヴァ。父は不明。
黒髪、黒い瞳、浅黒い肌、すらりとした長身の美青年。傭兵時代は極めて陽気な楽天家にして自信家で、自らを「災いを呼ぶ男」「紅の傭兵」などと呼び、すべての災いは自分を避けるとして、運の良さを誇っていた。が、モンゴールの将軍となった頃から、その陽気さに陰がさし始め、短気で衝動的な一面ばかりが目立つようになってきた。モンゴール将軍からゴーラ王へと至ったイシュトヴァーンの道程は、多くの戦いと殺戮、裏切りに満ちて血塗られており、残虐王、殺人王と呼ばれる所以となった。
沿海州ヴァラキアの娼婦の子として生まれて間もなく孤児となり、伝説の賭博師コルドに育てられたイシュトヴァーンは、幼少時から将来は一国の王になることを公言してはばからなかった。その根拠は、彼が誕生した時の予言にある。彼が生まれた時、掌中に白い玉石を握っていた。それを見た産婆の老予言者は、彼が将来〈光の公女〉の手によって王座に就くことになるであろうと述べたのだ。事実、彼の才気とカリスマ性は幼少時から際立っており、その出自にもかかわらず、ヴァラキア提督カメロンから後継者に切望されていたほどである。
伝説の海賊クルドの財宝を巡る冒険に失敗した後、中原へ向かい、モンゴールの傭兵となった彼は、配属された先で城主の勘気を被って投獄されるが、その牢獄でグイン、リンダ、レムスと出会う。彼ら一行に加わり、セム族、ラゴン族とともにモンゴールと戦ったノスフェラス戦役では、モンゴール軍に間諜として潜入し、モンゴールの伯爵マルス率いる一隊を全滅させる。だがこの行為に対する罪悪感が、彼を長く苦しめることとなる。
レムスとリンダをアルゴスに届けた後、北方での冒険で資金を得た彼は、サイロン郊外で醜い占い師アリストートスと出会う。王となる器の持ち主を探していたというアリストートスの言葉に興味を引かれた彼は、モンゴールを足がかりにゴーラの王座を手に入れるというアリストートスの策を聞き、彼を軍師として以後行動をともにすることとなる。
その後、赤い街道の盗賊の首領となった彼は、ノスフェラスからの帰途にあったアルゴスの黒太子スカールの一行を襲撃して返り討ちに遭い、瀕死の重傷を負う。その際、スカールの妻リー・ファを殺害したため、スカールから生涯の仇敵として狙われるようになる。
どうにか一命を取り留めた彼は、再び盗賊を率い、クムに幽閉されていたモンゴール公女アムネリスに接近する。首尾よくアムネリスを救出した彼は、彼女のもとに集まってきたモンゴールの残党とともに戦い、首都トーラスの奪還に成功する。
モンゴール救国の英雄として将軍となったイシュトヴァーンだったが、その地位は却って自由を愛していた彼の心を鬱屈させることとなった。彼を探し求めてモンゴールを訪れてきたカメロンとの再会によって、彼の心は少なからず癒されるが、それがイシュトヴァーンに執着するアリストートスの嫉妬心を招く原因ともなってしまう。そしてその嫉妬心は、第二次ケイロニア-ユラニア戦役に参戦した際に、イシュトヴァーンがアルセイスで出会い、弟のように思い始めていた少年リーロの暗殺を引き起こすなど、イシュトヴァーンの心に深い闇をもたらしていくことになる。
やがてアムネリスと結婚した彼は、間もなくしてアルセイスで起こった、ユラニア三公女とクム三公子との合同結婚式のクーデターに遭遇する。それをきっかけとして起こったゴーラ三公国による三つ巴の戦いでは、途中でユラニア側からクム側に寝返るという変わり身を見せ、当時のクム大公タリオを討ち取ってクムを弱体化させるとともに、ユラニアを滅亡に至らせる。また、アリストートスが嫉妬心からこれまで密かに行ってきた様々な悪行を知り、激怒して自らアリストートスを殺害する。
その後、ゴーラ最後の皇帝サウルからの啓示を受けたとして、イシュトヴァーンは旧ユラニアを版図とするゴーラ王国の建国を宣言、自ら初代ゴーラ王を名乗る。だがその直後、ノスフェラス戦役での彼の間諜行為がモンゴール首脳の知るところとなる。トーラスで裁判にかけられた彼は、その証人に憑依したアリストートスの亡霊による告発に恐怖し、自ら罪を認めてしまう。辛くもその場を脱出したイシュトヴァーンは、予め伏せておいたゴーラ軍によってトーラスを制圧、妻であるモンゴール大公アムネリスを新生ゴーラの首都イシュタールに連行し、幽閉する。臨月だったアムネリスは夫への憎悪を抱きながら男子ドリアンを産み落とし、自害する。
やがて勃発したパロ内乱に際し、密約を結んでいたナリス側に味方するべく、イシュトヴァーンは自ら軍を率いて参戦する。だがその中途、彼を仇敵と狙うスカールの奇襲を受けて孤立した彼の前に、レムスに憑依したヤンダル・ゾッグが現れて後催眠の暗示をかけられる。そしてヤンダル・ゾッグの催眠術にかかった彼は、突如ナリス軍を攻撃、その拠点であるマルガを瞬く間に陥落させ、ナリスを捕虜とする。続くグインとの戦いに敗れ、ヴァレリウスによって催眠術を解かれたイシュトヴァーンは続いてのナリスの死に動揺し、ほとんど何も得られないままパロ内乱は終結し、イシュトヴァーンはゴーラへ帰国する。
帰国したイシュトヴァーンは、モンゴールで勃発した反乱の鎮圧に自ら乗り出す。その際、ルードの森で偶然グインと出会い、一時的に捕虜とする。だが、スカールの助けを得て逃亡したグインを追う際に、グインとの一騎打ちに敗れて重傷を負い、生死の境を彷徨うこととなる。その後、辛くもイシュタールへ帰還し、しばらく療養と内政に専念していたが、それでも新たな戦場と野望を模索しているようであった。
ブランがイシュタールに帰還する直前に、カメロンからフロリーとその息子(スーティ)のことを聞き、二人がパロに向かったことを聞かされる。イシュトヴァーンはそれに興味を抱き、リンダと結婚してパロを併合したいという野望も併せて、カメロンに独断で一千のゴーラ兵を率いてパロへと向かう。そして国境でのヴァレリウスとの協議の末に、二百の手勢だけでクリスタルへと入城し、リンダと面会する。そして開催された宴の最中、二人きりになった時にリンダに求婚するが、リンダはナリスの異母弟アル・ディーンと内々で婚約していると告げ、求婚を断わられる。それでも諦めずにクリスタルに滞在し続け、ヴァレリウスと二人きりで話している時にフロリーとその息子(スーティ)の話題を出し、二人に会わせろと要求する。
しかし、ヴァレリウスはフロリー親子はパロを離れたとだけ告げて面会は叶わなかった。また、この時にイシュトヴァーンはフロリーとの間に出来た息子の名前が自分と同じイシュトヴァーンであることを知った。その後、イシュトヴァーンはフロリー親子とヨナがミロク教の聖地ヤガへ向かっていると推測し、かねてより申し入れていたマルガにあるナリスの墓標への参拝をした後は、そのままヤガへ向かう意向であることをヴァレリウスに告げる。
そしてマルガでの参拝を終えた後、クリスタル・パレスでの別れの宴でリンダにグインの近況を告げた後でゴーラ軍を率いてクリスタルを出発した。そのままヤガに向かうかと思われたが、途中で針路変更して北上を開始した。