概要
栗本薫による、ヒロイック・ファンタジー小説。
彼女にとってライフワークだった作品で、累計3300万部を誇る、『1人の作家が手掛けた小説としては世界最長のシリーズ』として知られる。
作者は当初、100巻での完結を想定していたが、完結に至らなかったため、以降も刊行。2009年に死去したことで、第130巻「見知らぬ明日」をもって未完となったが、栗本氏自身は、自らの死後も誰かが物語を語り継ぐことを希望していたという。
そのため、以後は未発表原稿や別の作家による原稿をまとめた『グイン・サーガ・ワールド』が展開されており、作品完結に向けて物語が書き続けられている。
しかし正伝は「パロの暗黒」のように原作者の意図を無視した内容が描かれる、世界観にそぐわないキャラクターや思想が登場する、重要シーンの会話文が非常に稚拙である、あまつさえ主人公グインをはじめ重要人物の考え方さえも歪曲するなどレベルの低下が著しい。
ストーリー
首都クリスタルへのモンゴール軍の奇襲により、中原の歴史ある国パロは滅亡の危機に瀕していた。国王、王妃までもがモンゴール兵の手により殺害されるという状況の中、家臣はパロ王家に太古より伝わる古代機械(物質転送装置)を用いて、国王の長男にして王太子であるレムスと、その双子の姉リンダを友邦国アルゴスへ移送しようとした。が、座標設定に狂いが生じ、2人はあろうことか敵国モンゴールの辺境、魑魅魍魎の跋扈するルードの森へと転送されてしまった。
身を守るすべとてなく、ただ怯えて身を隠すしかなかったレムスとリンダは、ついにモンゴール軍の小隊に発見されてしまう。しかしその時、突如として現れた豹頭人身の異形の超戦士が小隊を全滅させ、双子は難を逃れる。自身の名「グイン」と「アウラ」「ランドック」という単語を除き、全ての記憶を失っていた。グインは憔悴し切って倒れるが、リンダの介護によって体力を取り戻し、以後2人と行動をともにすることとなる。
魑魅魍魎の襲撃から一夜の間は辛くも逃れた彼らだったが、翌朝には一帯を支配するモンゴールの出城・スタフォロス城の軍勢に再び発見され、衆寡敵せず投降を余儀なくされる。全身を業病に冒された城主「黒伯爵」ことヴァーノン伯爵により投獄された一行は、隣の牢に収監されていた若き傭兵イシュトヴァーンと出逢う。その夜、ノスフェラスに住む半獣半人のセム族がスタフォロス城に攻め入った。一行は場内の混乱に乗じて脱獄。獄中でリンダと知り合ったセム族の娘スニを加えた4人は、スタフォロス城の眼下に流れるケス河へと身を投じて脱出に成功する。
そして翌朝、彼らより先に脱出に成功していたイシュトヴァーンが一行に加わり、ケス河の対岸、妖しい瘴気渦巻く不毛の砂漠ノスフェラスを最初の舞台として、レムスとリンダの、故国を目指す苦難の旅が始まるのである。
主な登場人物
- グイン (CV:堀内賢雄)
- レムス・アル・ジェヌス・アルドロス (CV:代永翼)
- リンダ・アルディア・ジェイナ (CV:中原麻衣)
- イシュトヴァーン (CV:浅沼晋太郎)
- アルド・ナリス (CV:内田夕夜)
- マリウス (CV:阿部敦)
- アムネリス・ヴラド・モンゴール (CV:渡辺明乃)
- スカール (CV:岩崎征実)
舞台設定
キレノア大陸の西端近くにある、比較的温暖な気候で知られる地域を「中原」と呼び、北をケイロニア、東をゴーラ、南をパロという大国がそれぞれ支配している。これらは世界の文明・文化の一大中心地として発展を遂げている。それぞれの国の境には、衝突を避けるための緩衝地帯として、自由国境地帯と呼ばれる、どこの国にも属さない地域が存在している。
諸国の気風を現す俗語として「モンゴールの弁舌、ユラニアの冒険心、クムの忠誠、パロの謙遜」というものがある。これらを見出すことは非常に難しい、という皮肉である。
パロ王国
中原の中でももっとも古い王国。聖王国を称する。首都はクリスタル。
文化の最先端、学問の聖地、美人貴族の国…など都会的で華やかな要素が強い。
また、謎の古代装置や得体の知れない「魔道師」を重用するなどといった胡散臭い一面もある。
ゴーラ帝国
パロに次いで歴史が長い大帝国。かつては皇帝家が絶大な権力を誇っていたが、現在では皇帝家もほぼ象徴化しており、それぞれモンゴール、クム、ユラニアの3大公国が国土を分割統治している。
モンゴール大公国
中原で最も歴史が浅い国。首都はトーラス。
手柄を認められた騎士ヴラド・モンゴールが誰も欲しがらない不毛の地を手に入れて開拓したという経緯があり、パロとは対照的に田舎者、粗雑、野心的という印象を持たれている。
軍人の国だけあって軍隊は強く、モンゴールの五色騎士団といえば広く名が知られている。
第二部序盤で初登場。その後より歴史が浅く描写が修正された。
クム大公国
キタイからの移民によって建国され東方独特の風俗をいまも伝える、人種的にも文化的にも特殊な国。首都はルーアン。
帝国支配の野望を強めるユラニアに対抗する形で、商人の国キタイからの移民が中心となって建国された。住民は快楽主義で、またキタイの流れを汲むものとして抜け目のない商売上手でも知られる。湖沼や河川が国土の多くの部分を占めており、運河も整備され水上交通が発達している。国内第2の都市であるタイスは遊郭や賭博、闘技などが盛んであり、「快楽の都」として名高い。
ユラニア大公国
三大公国のなかで最も歴史が古い国。首都はアルセイス。
2000年ほど前に、ゴーラ帝国の実力者として当時の皇帝を傀儡としたユラニア大公により建国された。
その後ユラニアに対抗すべく建国されたクムと対立しつつ、二大公国体制を維持していくこととなった。しかし、長い歴史を重ねる内に国から次第に活気が失われ、退廃的な文化が支配的となると同時に、国力も衰退していった。現代においても住人は新奇な事に関心がなく無気力で保守的。
それゆえにグラチウスに食い物にされ、ついに滅亡の憂き目を見る。
ケイロニア帝国
かつては未開の地として蔑まれていたが、統一されてからは強大な武力と安定した経済力に支えられ最強と目されるほどになっている。首都はサイロン。
守りが極めて堅固で、世界で唯一首都に他国軍の進入を許したことがないと云われる。幾度となく滅亡の危機を迎えている他の二国と比較して平和が際立つが、その弱点となっているのが皇帝家の世継問題である。
魔道に好感を抱いていないにもかかわらず、首都には多くの魔道師が集う「まじない小路」がある。
皇帝直轄の部隊は傭兵が中心であるが、極めて尚武の気質が強いこの国では明白な家業が有るか病弱でなければ男子全員が志願によって軍人となるとさえ言われ、事実上完全志願の国民軍である。
アニメ
2009年4月から9月まで、NHK・BS2にて16巻までが全26話で放送された。
スタッフ
監督 - 若林厚史
助監督 - ヤマトナオミチ
シリーズ構成 - 米村正二
キャラクターデザイン原案 - 皇なつき
キャラクターデザイン・総作画監督 - 村田峻治
コンセプトデザイン - 大河広行
色彩設計 - 甲斐けいこ/篠原愛子
美術監督 - 東潤一/平柳悟
設定デザイン - 松本浩樹、高橋武之
撮影監督 - 久保田淳
編集 - 岡祐司
音響監督 - 明田川進
録音調整 - 田中和成
音響効果 - 村上大輔
音響制作 - マジックカプセル
音響制作担当 - 八木橋正純
エグゼクティブプロデューサー - 植田益朗
プロデューサー - 後藤秀樹/成毛克憲/川人憲治郎
アニメーション制作 - サテライト
制作 - Project Guin
主題歌
オープニングテーマ
「グインのテーマ」
作曲 - 植松伸夫 / 編曲 - 成田勤、中山博之
エンディングテーマ
「Saga〜This is my road」
作詞・作曲・編曲・歌 - カノン
挿入歌
「Where'er you go〜Cavalleria Rusticana〜」(第23話)
作曲 - マスカーニ / 編曲 - 安部潤 / 訳詞・編曲・歌 - カノン
各話リスト
話数 | サブタイトル | 話数 | サブタイトル |
---|---|---|---|
第1話 | 豹頭の仮面 | 第14話 | 光の船、光の公女 |
第2話 | 黒伯爵の砦 | 第15話 | 再会 |
第3話 | 紅の傭兵 | 第16話 | 胎動 |
第4話 | 死の河を越えて | 第17話 | さらば愛しきひとよ(前編) |
第5話 | 宿命の出会い | 第18話 | さらば愛しきひとよ(後編) |
第6話 | セム族の集結 | 第19話 | 蜃気楼 |
第7話 | ノスフェラスの戦い | 第20話 | 紅の密使 |
第8話 | 狼王との出会い | 第21話 | クリスタルの反乱 |
第9話 | ラゴンの虜囚 | 第22話 | 復讐の女神 |
第10話 | 辺境の王者 | 第23話 | 如何なる星の下に |
第11話 | 戦士たち | 第24話 | モンゴール最後の日 |
第12話 | 新たなる運命 | 第25話 | 宿命との戦い |
第13話 | 海へ | 第26話 | 旅立ち |