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解説

CV:岩崎征実

アルゴスの前王太子。

内縁の妻にグル族長グル・シンの娘リー・ファ。異母兄にアルゴス王スタック。父はアルゴス前王スタイン。母はスタインの愛妾リー・オウ。恋人にパロ聖騎士伯リギア。

黒髪、黒髭、黒く太い眉の精悍な顔つきの逞しい男。常に黒を基調とした衣服を身にまとっており、〈黒太子〉と呼ばれている。兄スタックに男児が誕生したことと、自らの病を機に王太子の座からは退いたが、〈黒太子〉という呼び名そのものは彼一代限りの通称として使用が認められている。信義に厚く、義理堅いが、草原の独特の価値観がその行動原理の根本にあり、しばしば中原の価値観を持つ人々とのあいだに軋轢を生じる原因ともなっている。

パロの王女を母に持つ兄とは違い、騎馬民族グル族出身の母を持つこと、そして彼自身、宮廷での生活は好まずに、主にグル族とともに草原での遊牧生活を好んで送っていることから、アルゴスの人民の中心をなす騎馬民族からの人気は非常に高いものがある。そのため彼の率いる軍は、アルゴス正規軍とは別に、騎馬民族によって構成される遊軍としての性格が強い。その騎馬民族特有の勇敢さと、常識に囚われない神出鬼没ぶりで、小規模ながらも世界最強の軍の1つとして怖れられている。

王太子時代は兄との仲も極めて良かったが、兄に男児が誕生してからは、アルゴス国民の間での彼の人気を兄が疎んでか、兄から猜疑の目を向けられるようになった。もっとも、スカール自身にはいまだ兄への悪感情もさほどなく、しばしば兄から暗殺者を送られることもやむなしとして受け入れている節もある。

スカールが物語に登場するのは、黒竜戦役勃発からしばらく経った頃のことである。騎馬民族軍を率いた彼は、黒竜戦役時にたまたまアルゴスを訪れていたパロの王族・ベック公ファーンを助け、パロ奪還へ向けての戦いを開始する。中原との間にそびえる、踏破不可能と云われたウィレン山脈越えによる奇襲を成功させた彼は、クリスタル公アルド・ナリスが起こした反乱鎮圧のためにクリスタルへ向かっていたアムネリス軍を急襲し、これを打ち破る。さらにナリス軍と合流してモンゴールの首都トーラスへと攻め入り、これを陥落させ、モンゴールの滅亡に大きな役割を果たすこととなる。

このトーラスの金蠍宮で偶然手にした文書が、彼の運命を大きく変えることとなる。そこには、失敗に終わったモンゴールのノスフェラス侵攻の動機となった、グル・ヌーについて記されていた。そのグル・ヌーの秘密を探るべく、彼は数千人のグル族のみを率いてトーラスを密かに脱出し、ケス河を渡ってノスフェラスへと入る。

そこで出会ったセム族の助力を得て、グル・ヌーを目指したスカールだったが、ノスフェラスの苛酷な気候と、そこに住まう怪物たちが彼ら一行を苦しめる。そしてついに、志半ばで倒れるか、という寸前に、彼の前に世界三大魔道師のひとり、賢者ロカンドラスが現れる。ロカンドラスに誘われ、彼はグル族と別れてグル・ヌーへと向かう。そして、そこで彼は、グル・ヌーの地下に眠る星船の秘密を目の当たりにする。このことにより、彼は世界に対して野望を燃やす様々な人物や魔道師の興味の対象の中心人物の1人となっていく。

ロカンドラスのバリヤーの効果で、生身の人間としては初めて、スカールはグル・ヌーからの生還を果たす。だが、おそらくは放射能と思われるグル・ヌーの瘴気は、ロカンドラスの力でも完全に防ぐことができず、それによってスカールの健康は著しく蝕まれてしまう。

わずかな部下に守られながら、スカールは病身をおして故国を目指す。だが、その途上、イシュトヴァーン率いる赤い街道の盗賊たちに襲われる。その戦いの中で、リー・ファがスカールの身代わりとなって命を落とす。スカールは最後の力を振り絞ってイシュトヴァーンに重傷を負わせ、かけつけたパロの国境警備隊によって保護される。

警備隊の手によってパロの首都クリスタルへと連れてこられたスカールは、そこで手厚い介護を受ける。この時、リギアと恋仲となる。パロの優れた医学によって、やや健康を持ち直したスカールだったが、ノスフェラスで得たスカールの知識を狙う魔道師カル=モルの亡霊や、ナリスの手から秘密を守るため、病身を押してクリスタルを脱出し、アルゴスへの帰国を果たす。

兄スタックに男児が誕生していたこともあり、スカールは王太子の座を退いて、グル族のもとで療養生活を送る。もはや彼の命もこれまで、と思われたが、彼の前に現れた魔道師グラチウスの黒魔道による治療により、彼は奇跡的に健康を回復し、再び以前の逞しさを取り戻すに至る。

やがて、マルガで隠遁生活を送っていたナリスの要請を受け、スカールは彼のもとを密かに訪れる。そこでスカールは、キタイによる中原侵略の危機と、それを防ぐべく反乱を起こさんとするナリスの決意を知る。その決意に心動かされた彼は、ナリスにノスフェラスで彼が知った秘密を告げる。ナリスがリー・ファの仇であるイシュトヴァーンと意を通じていることを知り、いったんは激怒したスカールだったが、最後にはナリスへの助力を約してマルガを後にする。

パロ内乱が勃発すると、スカールは約束通りに騎馬民族軍を率いて、危機に陥ったナリスの援軍に現れる。だが、その際にナリスが行った佯死による奸計に、味方までをもあざむくものとして激怒したスカールは、そのまま自軍をまとめて去っていく。

それ以後のスカールは、妻の仇であるイシュトヴァーンをひたすらつけ狙うようになる。パロ内乱に参戦したイシュトヴァーン率いるゴーラ軍を急襲した彼は、イシュトヴァーンとの一騎打ちで勝利するが、あと一歩のところで討ち果たすことができずに逃してしまう。そして、この頃から再び病魔がぶり返し、彼の体調は急速に悪化していく。

それでも執念を見せ、イシュトヴァーンをつけ狙う彼は、ルードの森でイシュトヴァーンのもとから逃げ出してきたグインを救出する。実はそれは、グル・ヌーの秘密を知るスカールと、世界の謎の中心であるグインとが出会えば、世界の秘密の鍵の一端が明らかになると考えたグラチウスの策謀によるものでもあった。だが、グインが記憶を失っていたためか、その時には何も特別なことは起こらなかった。

なおも執拗にスカールとグインとを手中に収めようとするグラチウスの手から、魔道師イェライシャらの助力もあって、2人は逃れることに成功する。スカールは、彼の病の治療を行おうというイェライシャの申し出を受け入れる。 やがてイェライシャの治療が功を奏し、体調もある程度回復して草原地方に戻ったスカールは、あるとき盗賊に襲われていたヨナを救う。ヨナからヤガに向かっていることと、グインが自分と会ったことを忘れてしまったことを聞かされたスカールは、以前から戦うミロク教徒の出現に危機感を抱いていたこともあり、ミロク教の聖地ヤガの実情を調査するために、部下と共にヨナに同行してヤガへと向かう。

そして部下をヤガ郊外に待機させ、ヨナと二人だけでヤガに潜入したスカールはヨナの勧めで「エルシュ・ハウ」という偽名を名乗ることになる。そしてヤガで宿を探している最中に、ヤガの商人であるイオ・ハイオンと出会い、イオの勧めで彼の屋敷に泊まることになる。しかし、イオの屋敷の使用人であるエルランという子供から「一日でも早くこの屋敷から立ち去ったほうがいい」と忠告され、イオに不信感を抱く。また、スカールはエルランが男装した女の子ではないかと疑う。そしてスカールの予感は的中し、宿を見つけてイオの屋敷から立ち去ろうと部屋で荷物を制している最中にイオが現れ、ミロク教の教えを理由にヨナと共にイオの屋敷の「虜囚」にされてしまう。

しかし、行き先を告げれば外出は許可されたので、スカールたちはヤガの探索を続行していたが、突然ヴァレリウスの命令で派遣されてきた一級魔道師バランと遭遇し、クリスタルの現状を知る。そして、イオがヨナを探していた知人に会わせる為にとある礼拝所に連れて行ったので、スカールは密かに後をつけ近くに潜伏していたら、ヨナが必死で逃げてきたのですぐに合流し、二人でヤガからの脱出を図る。

そしてヨナと共にヤガ郊外に脱出し、ヨナを部下に託すとスカールはフロリー親子を次に脱出させる為にヤガに戻る。そしてフロリーの借家でフロリー親子と対面すると、事情を説明して共に脱出を図る。しかし、途中で同行していた下級魔道師サリウからヨナが突然現れた謎の大女に攫われ、しかもヨナに同行させていた部下たちを皆殺しにされたと聞かされた直後に、部下を率いたイオに遭遇してしまい、イオを隙を見て胴を両断したものの、イオは死なずに尚もスカールたちに追いすがってくる。やがてフロリーが地中から現れた苔だらけの怪物に捕まってしまい、足止めされているところに突然ブランが現れて共にその場を離脱したが、フロリーを助け出すことはできずにブランやスーティと共にヤガ郊外に脱出する。

そこで今後のことをブランと話していると、突然グラチウスが現れて《新しきミロク》の背後にはキタイの竜王ヤンダル・ゾッグがいることを告げ、スカールに助力を申し出る。しかし以前からグラチウスに不信感を抱いていたスカールはその申し出を断る。その後、またもイエライシャが現れてグラチウスを追い払う。そしてスカールとブランは、イエライシャからある提案を持ちかけられる。

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スカール(グイン・サーガ)
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