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CV:内田夕夜


概要編集

神聖パロ王国聖王にして、パロのクリスタル大公。妻はリンダ・アルディア・ジェイナ。異母弟にパロ王子アル・ディーン(吟遊詩人マリウス)。父はパロ王子・ヤヌス大祭司長アルシス。母はアルシスの妻ラーナ大公妃。

黒髪、黒い瞳、痩身の絶世の美青年で、男女を含めて最も美しい人物であるとまで讚えられた。その美は外見ばかりではなく、彼のあらゆる立ち居振る舞いや趣味にまで及んでおり、極めて洗練されたセンスによって「典雅の裁決者」との異名を得るにも至った。キタラ(ギターやリュートに似た弦楽器。古代ギリシャの弦楽器キタラとは形状が異なる)などの楽器、歌、舞踊の名手としても知られ、また武器を取ってはレイピアの達人でもあり、パロの文武両面の頂点に立つクリスタル公爵の地位に就く者として、正にふさわしい人物であった。

その能力は魔道や学問にも及んでいる。自らも初級の魔道師資格を持つ彼は、魔道に対する造詣が深く、自ら直属の魔道士部隊を指揮して、戦時や平時の情報収集などに大いに活用していた。またあらゆる学問に対して深い興味を抱き、未知なるものに対する強い憧憬を抱いていた。中でも、彼が唯一の〈マスター〉として操作を許されていた古代機械に対する関心は極めて高く、カラヴィアのラン、ヨナ・ハンゼと云った若い優秀な学者とともに、その研究に熱心に取り組んでいた。

その端正にして優雅な姿や挙措、それに似付かわしい能力の高さから、パロ宮廷内や国内における人気は極めて高かったが、その反面、密かに周囲の人々を見下し、侮蔑するようなところもあった。その侮蔑は、とりわけ彼を熱狂的に支持するような人々に対して向けられることが多かった。また、自分自身や他者の生に対する執着が希薄で、それぞれの命を弄んで見せるような一面もあった。

彼の性格に、そのような小昏い一面が加わることとなった理由は、彼の生い立ちにある。父アルシスは弟アル・リース(後のアルドロス三世。リンダとレムスの父)と王位を激しく争い、内乱の末に敗れたという経緯があったため、ナリスは生まれた当時から謀反の旗頭となりうるとして王から警戒され、地方都市マルガにてほぼ軟禁状態におかれたまま成長したという経緯があった。またその父母は、純血の掟に従った愛なき結婚であったがために、ナリスは父からも母からも愛されることはなかったのである。

異母弟アル・ディーン(後のマリウス)と、守り役である聖騎士侯ルナンの長女リギアの2人だけを友として育ったナリスは、病弱を押して努力を重ねて知識と教養、そしてレイピアの腕を身につけていく。そして、成人となった18歳の誕生日に見事な宮廷デビューを果たし、パロの文武の長たるクリスタル公の大任に任ぜられる。だがその代償として、宮廷生活に馴染めなかった弟の出奔を招き、そのことがナリスの内面に大きな影を落とすこととなる。

クリスタル公に任ぜられた当初は一部から大きな反発も招いたが、その才能とカリスマ性は宮廷内に次第に確固たる地位を築いていった。しかし、モンゴール軍によりパロの首都クリスタルが急襲された黒竜戦役の緒戦において重傷を負い、戦線からの離脱を余儀なくされる。モンゴール占領下のパロでしばらく潜伏したのち、クリスタルに潜入するもナリスに懸想するサラの密告により捕らえられ、モンゴール公女アムネリスとの政略結婚を強制されることとなる。

だが、それを逆に好機と捕らえた彼は、恋の達人としての手管を弄してアムネリスを籠絡する。そしてアムネリスとの婚礼の際、彼を暗殺する動きを利用して自らの死を装い、再び潜伏に成功する。やがてパロの下町アムブラで起こった暴動を利して反乱を起こした彼は、パロ各地の武将とも呼応してモンゴール軍を撃破し、クリスタルの解放に成功する。続く第二次黒竜戦役で、アルゴスの黒太子スカールらとの連合軍により、モンゴールを滅亡させたナリスは、帰国後、従弟レムスの聖王即位に伴い、摂政宰相に任ぜられる。だが、パロ解放の最大の立役者として国民からの熱狂的な支持を受けるようになったナリスの絶大な人気が、レムスの悋気を誘い、後に国内が国王派と宰相派とに二分されていく一因となっていく。

やがて従妹リンダと結婚したナリスは、しばし幸福な結婚生活を味わう。だが、その結婚によってもたらされた彼のさらなる人気が、彼の聖王即位を求める動きを呼び、一部国王派の暴走をも招くこととなる。ナリスは拉致監禁の上に暴行を受け、右脚を切断、残る手足の自由をもほとんど失ってしまう。それをきっかけとして、ナリスは宰相の座を辞し、後任に魔道師ヴァレリウスを指名して、故郷とも云うべきマルガにて妻リンダと隠遁生活を送ることとなる。

その彼に再び転機をもたらしたのは、当時復活したモンゴールの将軍であったイシュトヴァーンによる極秘の訪問であった。彼との会談により心動かされたナリスは、今や無二の側近ともなったヴァレリウスに、レムスに対する反乱の決意を告げる。それは、彼の生い立ちによって宿命づけられていたと云っても過言ではない決意ではあったが、その決意に至るにはもうひとつの理由もあった。それは、聖王レムスの背後に彼が見ていた、キタイによる侵略の影だった。

奇禍による重傷を装い、その治療のためとして再びクリスタルへ戻ったナリスは、病身に鞭打って密かに賛同者を募り、反乱への準備を固めていく。だが、その動きはすべて、レムス側の知るところとなっていた。反乱を起こそうとした矢先にレムス側に機先を制されたナリス側は常に後手に回ることとなり、非常な苦戦を強いられる。クリスタルからの敗走の途中、全滅の危機こそスカール率いる援軍によって免れたが、その直前、全軍にナリスの死が伝えられる。

だが、それはヴァレリウスが助けを求めた大魔道師イェライシャの秘薬を用いた佯死であった。その策略を持ってレムス側との停戦にこぎ着け、ナリスは軍とともにマルガへと帰還することに成功する。しかし、その味方をも欺いた策略を卑劣としてスカールは怒り、ナリスと袂を分かつこととなる。マルガへ到着したナリスは、マルガを中心とした地域を領域とする神聖パロ王国の独立を宣言し、その初代国王に即位する。

なおも内乱における苦戦は続いたが、イシュトヴァーン率いるゴーラ軍の参戦により、一旦は戦況は好転したかに思えた。だが、そのイシュトヴァーンをキタイの魔道竜王ヤンダル・ゾッグの魔の手が襲う。ヤンダル・ゾッグの催眠術にかかったイシュトヴァーンは、自軍に対してマルガ攻撃を指示、圧倒的な兵力を誇るゴーラ軍にマルガは瞬く間に陥落し、ナリスはイシュトヴァーンの捕虜となってしまう。

その後、ヴァレリウスとグインの活躍により、イシュトヴァーンの後催眠は解かれ、ゴーラ軍との間に改めて同盟が結ばれることとなる。が、その捕虜生活は、長引く戦いの中で悪化していたナリスの病状をさらに悪化させることとなってしまった。もはや自らの命が旦夕に迫ったことを悟ったナリスは、グインとの会談を切望する。その席でナリスは、グインに自らが知る古代機械の秘密を託し、その直後、股肱の臣ヴァレリウスの腕の中で静かに息を引き取った。


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