概要
〈前衛〉の意。もとは先頭に立つ少数精鋭部隊を意味するフランスの軍隊用語。
転じて因習,伝統,権威に反逆し,表現形式の変革を試みる芸術をさす。前衛芸術。
したがって特定の主義,流派ではなく,時代の先端に立つ革新的な芸術傾向の総称。
〈前衛〉の意。元来はフランスの軍隊用語で,本隊に先がけて敵陣を偵察し奇襲する精鋭の小部隊。次いで政治に転用されて,大衆の自然発生的反抗を目的意識的な体制変革へと組織する,革命運動の指導部ないし革命政党の意。さらに芸術に転じて,因襲や社会通念を打破し,未知の表現を切り開こうとする,芸術上の実験や冒険をさす。アバンギャルドとは,一般にはこの前衛芸術のことをいう。 その源流はランボー,ロートレアモン,ネルバルら,社会から疎外される不幸を現実から自由な想像力の起点に転じた,19世紀の〈呪われた詩人たち〉で,ベル・エポックに文明の終末と人類の黙示録的解放をうたったアポリネールや,精神生活の二等辺三角形のうち,孤独な頂点にいる芸術家は〈精神の内的必然性〉に従えば,底辺にいる大衆の未来の生活感情を先取りできると説いたカンディンスキーの著書《芸術における精神的なもの》(1912)をはじめ,20世紀初頭のフォービスム,キュビスム,表現主義,未来主義,シュプレマティズム,構成主義などの芸術運動には,この概念がすでに潜在していたといえる。