概要
1998年の北朝鮮によるミサイル発射実験を契機として導入が決定された事実上の偵察衛星である。北朝鮮によるミサイル発射実験が1998年8月31日に行われた後、同年の12月22日に情報収集衛星の導入が閣議決定されている。
「情報収集衛星」の英訳"Information Gathering Satellite"の略称からIGSとも記載されることがある。(海外のサイトではそのものずばり"Japanese spy satellite"と書かれることも多い)
運用は内閣衛星情報センターによって行われているが、安全保障上の理由で衛星の基本情報や撮影した画像およびその撮影場所・日時等については一切公開されていない。また、衛星の打ち上げについても打ちあげを担当するJAXA公式の打ちあげ中継は行われていない。ただし近年は有志によってustreamやニコニコ生放送などで生中継が行われている。
構成
基本は予備も含めて光学衛星2基+レーダー衛星2基の4基体制が基本となっている。ただし2011年現在レーダー衛星が早期故障のため運用できない状態となっており光学衛星のみでの変則的な状態となっている。
なお、レーダー衛星3号機は2011年12月12日に打ちあげが成功し、来年度にレーダ4号機が打ち上げられる予定となっている。
外見想像図
情報収集衛星に関する情報は殆ど公開されておらず、外見も公には公開されていない。ただし、いくつかの断片的な情報を元に推測はされている。要約すると次の通り。
- レーダー衛星 概ねALOS2と同等の外見と推測されている。
- 光学衛星(第一世代) 開発期間の短さからALOSの光学センサーをベースに流用したため、衛星バスも既存の物を使用したと思われる。
- 光学衛星(第二世代以降?) 専用の衛星バスを新規開発し、他国の光学衛星に見られる6角柱の本体をベースに三枚の衛星パドルと円筒形の光学系が取り付けられた形状と推測される。
関連する議論及び外見予想図のCGについては以下のリンクで公開されている。イラストを描く場合の参考になるであろう。
- 情報収集衛星「光学3号」に関するつぶやきまとめ
- Paradise islands Space Center / IGS 2nd Generation 想像図・LightWave形式データが公開されている。(サイトトップはこちら→ Paradise islands Space Center)
地上から逆偵察
先にも書いたとおり、情報収集衛星に関する情報は軌道要素も含めて公式には公開されていないが、アマチュア天文家の中には観測により軌道要素を推測し、地上から衛星を撮影する物もいる。日本の情報収集衛星に限らず、古くは冷戦時代から米ソの偵察衛星を探して撮影するアマチュア天文家の存在も知られており、情報を非公開にしても完全にその場所を秘匿することができないことを示している。
- Aero Figure | 宇宙機のコーナー ISS・情報収集衛星を初めとした宇宙機の地上からの撮影画像が公開されている。(サイトトップはこちら→ Aero Figure)
問題点
情報収集衛星については主に以下の点が問題点として議論されている。
- 災害時の情報の利用 災害時の情報提供について、当初は衛星の能力の秘匿のため難色を示していたが、2004年の新潟県中越地震あたりから各省庁に情報は提供されていると政府答弁で述べられている。ただし安全保障上の制約を理由に、運用実績については明らかにされていない。
- ALOSとの用途の重複 衛星の構成、用途にALOSとの共通点が多いため、共通化して運用できないかとの意見もあげられている。
- 宇宙開発予算の圧迫 衛星の開発・運用は内閣官房で行われているが、年間400億程度と言われる予算は宇宙開発予算から出されていると言われており、他の宇宙開発予算へのしわ寄せが懸念されている。