概要
野々宮珠世とは、横溝正史の長編推理小説「犬神家の一族」の登場人物である。
犬神佐兵衛の恩人である、那須神社の神官・野々宮大弐の孫娘。幼い頃から佐兵衛には孫のように可愛がられていた。彼女の愛用の懐中時計は佐兵衛がくれたものである。
犬神佐清とは幼い頃から相思相愛で、懐中時計を壊したときはいつも佐清に修理してもらっていた。
両親が相次いで亡くなった後、佐兵衛のはからいで、姉弟のように育った猿蔵と一緒に犬神家に引き取られた。
遺産相続の一件で、佐武や佐智に襲われて危険な目にあうなど、複雑な立場に追いやられる。
実は佐兵衛の孫。珠世の母祝子は大弐の妻晴世と佐兵衛の娘で、二人の仲は大弐も知っていて隠していた。終生を日陰の花として送った晴世と佐兵衛の長女でありながら貧しい神官の妻で終わった祝子に対する佐兵衛の後悔と憐憫の情が、珠世に莫大な遺産相続の恩恵を与えることにつながった。
事件の真相が明かされた後、佐兵衛の遺言で贈られた家宝を佐清に贈ることで、佐清を犬神家の後継者にした。
人物
絶世の美女だが、常に毅然としていて隙のないとっつきにくい性格。とても利口で時に狡猾。だが好きな人や心を許した人には素直なようで、佐兵衛や佐清について語るときは穏やかな様子を見せた。
また佐清が母松子の罪を隠すために自分が犯人として死のうとした際、その演出のためにわざと珠世を殺そうとしたふりをしたときには、珠世は佐清に嫌われたとショックを受けて、佐清が自分を殺す真似をしたことの真相を知ったときは泣いて取り乱すなど、決して冷淡な女性ではない。
また松子から「(刑を終えて出てくるまで)佐清を待っててくれるわね?」と聞かれたときは、「お待ちしますわ、10年でも20年でも。佐清さんさえお望みなら」と答えるなど、好きな人(佐清)に対する一途さを見せていた。