マウイ
まうい
神話の英雄
その伝承はハワイ、サモア、トンガ、タヒチ、ニュージーランドにわたって残っている。火をもたらした、太陽の公転を遅くした、島を釣り上げた、ウナギを倒してココヤシを生み出したなどさまざまな伝承が残る。ただ、その経緯には諸説ある。同名の兄弟がいる伝承もあり、その場合英雄として活躍するマウイは末っ子とされる。ヒネ(ヒナとも、シナとも)は母とも、妻とも、姉妹ともいわれる。
ニュージーランド
区別してマウイ・ティキティキ・ア・タランガ(タランガのまげにくるまれたマウイ)、あるいは単にマウイ・ティキティキ(まげにくるまれたマウイ)、マウイ・ポーティキ(末っ子のマウイ)とも。母の名はタランガ。なにかと女性の血族に縁が深いらしく、火を盗んだのも先祖の女神マフイカからだったり、最期に敗れたヒネ・ヌイ・テ・ポはマウイの祖母ともいわれる。
出生
マウイは流産した子だったので、タランガはそれを自分のまげにくるんで海に棄てた。しかし、幸運にもマウイは祖先タマ・ヌイ・テ・ラ(ランギとも)神に拾われて蘇り、しばらく育てられた。ある日マウイは本当の家族に会おうと決意し、集会小屋を訪れる。そこから兄弟を見つけ出し、「自分もマウイで、兄弟だ」と説明するも、なにも知らない兄弟からは疑いの目で見られる。そこでマウイは母に経緯を話す。タランガも当初マウイのいうことを信じなかったが、それを確信すると息子との再会を喜んだ。
空を押し上げる
太古の昔、天と地は人間が地面を這う必要があるほど互いに近かった。
太陽を捕まえる
太古の昔、太陽は現在の何倍も熱く、何倍もの速度で回る一方で、月はゆっくり動いていた。そのため、夜は昼に比べて大変長く、また短い昼の間は、耐えきれないほどの灼熱の世界になっていた。そのなかで、人々はせわしなく働いていた。
島を釣り上げる
マウイは兄達と共に寝たきり状態の祖母(祖先ともいわれる)ムリ・ランガ・ウェヌアの世話をしていたが、兄達は「どうせ祖母は長くないから」と祖母の世話をしなくなっていった。
マウイのみが献身的に祖母の世話を続けていたため、優れた魔術師であった彼女はマウイに様々な魔術を伝授すると共に「自身の死後に顎の骨を外して魔法の釣り針を作るように」と遺言を残した。
祖母の死後、遺言通りに祖母の顎の骨から魔法の釣り針を作ったマウイは、ある日兄達と共に沖合いに釣りに出かける。
兄達は釣り餌を分けてくれなかったので仕方なくマウイは自身の鼻を殴って出した鼻血を糸玉にまぶして釣り餌代わりにして釣り糸を垂れていたら、魚とも岩ともつかない巨大な存在を釣り上げた。
その際に一旦家に帰る(獲物を取り押さえる縄を持って来るため、あるいは神に祈りを捧げる儀式の用意のためなどの説がある。)マウイは兄達に自分が帰って来るまで下手な手出しをしないように言い渡すと家に帰るが、兄達は暴れ回る「それ」に恐れをなして、刃物で斬りつけたり棍棒で殴ったりして更に暴れさせてしまう。
その結果、マウイが戻る頃には船は大破し、兄達も海に投げ出されてしまうが「獲物」もなんとか仕留めきったマウイ達は「獲物」を持ち帰る事に成功する。
「獲物」は巨大な島となり、「テ=イカ=ア=マウイ(マウイの魚)」と呼ばれ、兄達が袋叩きにした際の傷跡が山や谷などの地形となった。
また、祖母の顎の骨から作った魔法の釣り針は「マタウ=ア=マウイ(マウイの釣り針)」と呼ばれ、島の東側の岬になったとも天に輝く星になったとも言われる。
このエピソードでマウイが釣り上げた島こそ、ニュージーランド北島である。
火の起源
マウイはあるとき、母が
死の起源
あるときマウイは父とヒネ・ヌイ・テ・ポの話をした。
ハワイ
半神半人の英雄(クプア)。アーサー・コッテルの『世界神話辞典』によると、最期は彼のいたずらを快く思わなかった人間たちに殺されたという。
火の起源
参考資料・リンク
全般
ロズリン・ポイニャント『オセアニア神話』青土社
後藤明『南島の神話』中央公論新社
ニュージーランド
吉田敦彦監修・編『国際理解にやくだつ世界の神話 7』ポプラ社
アントニー・アルパーズ編著『ニュージーランド神話―マオリの伝承世界』青土社
映画『モアナと伝説の海』の登場人物
CV:ドウェイン・ジョンソン/吹き替え:尾上松也
人であり風と海の半神。モアナの冒険の仲間。
全身のタトゥーはその経歴や功績をあらわす「歩く広告板」(『ジ・アート・オブ モアナと伝説の海』より)で、そのなかに住むミニマウイは潜在意識のような存在である。
功績や設定は実際の神話がもととなっており、その再現度は非常に高い。
冒頭で語られる伝承では、「母なる島テ・フィティの心を盗むも、直後に大地と炎の悪魔テ・カァに打ち落とされ、二度と姿を現すことはなかった」とされる。
以下ネタバレ注意。
作中での活躍
テ・カァによって千年にわたって孤島に閉じ込められていた。
他のキャラクターとの関係
モアナ
当初は「私の舟に乗り、テ・フィティの心を返しに行く」という説得を聞かず、モアナを洞穴に閉じ込めてひとり島を出ていこうとしたり、何度も海へ投げ飛ばすなど、彼女のことを冷たく扱っていた。
だが、そんな彼もタマトア戦ののちにモアナのことを認めるようになる。
タマトア
因縁の相手。捨て子だった出自を知られているあたり、ただの敵ではない模様。
テ・カァ
自身を打ち落とし、釣り針を取り上げた上で孤島に閉じ込めた因縁の敵。
余談
- 初期は小柄で坊主頭の外見だったが、「ものすごく大きい」「髪にマナという特別な力がこもっている」との現地民の見解から、現在のデザインに修正された。
- 元ネタが元ネタなだけに反応も大きく、「西洋の偏見が反映されている」とも批判された。また、商品展開でもハロウィン衣装の件で騒動が発生し、結果販売中止となっている。
神話との相違点
- 釣り針の起源については神話上で「祖母の顎の骨から作った」とされるが、『モアナ』では「神々から授かった」とされる。
- 変化能力は自身が習った魔法ではなくて釣り針の神力とされる。
- 家族にまつわる設定や逸話は「もとは捨て子だった」「ラロタイの守護者だった祖母ヒネがいる(ただし原案のみ)」ということ以外なにも描かれていない。
- 純粋に神の血筋を引いているのではなく、出自は人間である。
- 神話では痩せているとされる。