概要
新美南吉の児童文学。新美の生前に計画され、死の直後に刊行された童話集「牛をつないだ椿の木」に収載された。
あらすじ
ある雪の朝、表を走り回って帰って来た子ぎつねが手を冷たそうにしているのを見た母ぎつねは手袋を買ってあげようと思い、夜に町へ向かう途中子ぎつねの片手を握って人間の手に変えた。
母ぎつねは子ぎつねに町の帽子屋へ行って、扉を少しだけ開けて人間の手を突き出して「手袋をください」というように言った。間違ってきつねの手を出してしまうとひどい目に合わされるから、気をつけろと忠告したうえで、子ぎつねを送り出した。
帽子屋についた子ぎつねは戸をたたくが、帽子屋が扉を開けた時に差し込んできた店内の光に目がくらみ、間違ってきつねの手を出して「手袋をください」と言ってしまう。帽子屋は相手がきつねだと悟ったものの、お金が本物だったため特に何もすることなく黙って手袋を渡した。
帰り道、家の中から聞こえる子守歌を聴きながら帰った子ぎつねは母ぎつねに間違ってきつねの手を差し出してしまったが、特に何もされなかったから「人間ってちっとも怖くない」と語った。母ぎつねは呆れながらも「ほんとうに人間はいいものかしら」とつぶやいたのだった。