魔法使いの丘
まほうつかいのおか
概要
スティーブ・ジャクソン(英)による四部作のゲームブック「ソーサリー」シリーズの第一巻。
原題は「THE SHAMUTANTI HILLS」。
今までに二度翻訳されており、それぞれ邦題は
「魔法使いの丘」(創元推理文庫・1985年・訳者:安藤由紀子)
「シャムタンティの丘を越えて」(創土社・2003年・訳者:浅羽莢子-あさば さやこ-)
発売当時のゲームブックにはおなじみの選択肢を誤れば即死(あるいは極度に不利な状況に陥る)というパラグラフも少なくないが、第一巻ということもあって後続の巻に比べれば難易度は低め。
慣れれば真面目にサイコロを振っても一時間も掛からずにクリア可能なバランスになっている。
ストーリー
フェンフリー同盟間の盟約により、アナランド王国に貸与されていた《王たちの冠》。
所有者にたぐいなき統率力と判断力を与えるその《冠》がある時、遥か北東の地、マンパンの大魔王の手の者によって奪われた。
《冠》奪還のためには大掛かりな軍隊では到底成功の目はなく、単身での任務のみがただひとつの希望。あなたは、その命懸けの旅に志願する。
無法者や魔法使い、怪物達のはびこる危険なシャムタンティの丘を越え、あなたは城塞都市カーレを目指さなくてはならない。
主な登場人物
表記は旧訳版に準ずる。
あなた
本作における主人公。職業は魔法使いと戦士の2つの中から選べる。
女神リーブラ
あなたが信仰する正義の女神。冒険の中で一度だけ支援をしてくれる。
軍曹
視力に優れたサイトマスターという種族の軍曹。
あなたの旅の成功を願い、カントパーニの門より送り出す。
アリアンナ
森小屋に閉じ込められた謎の美女。だか……
ジャン
小妖精のような姿をしたミニマイトという種族の少年。
魔法障壁を身にまとっており、彼がそばにいるとあなたは呪文が使えない。
グランドレイガー
ビリタンティ村の酒場の主人。酒代の代わりにあるものを渡すと……?
フランカー
旅人を相手に剣の修行をしている刺客。
ガザ・ムーン
一見人当たりの良さそうな老婆だが、ミニマイトの魔法障壁を歯牙にもかけぬ力を持つ魔女。
彼女の誘いは決して断ってはならない。
シャムタンティ
本作の舞台。
アナランドの大塁壁北門から広がる広大な丘陵地帯で、タイタン世界で比較的安全な旧世界の中でも、唯一危険地帯と呼ばれる「カーカバード(旧訳版ではカクハバード)」の南端部でもある。
クリスタンティ、カントパーニ、ダンパスといった地が広がっている。
猛獣やモンスター、盗賊など、多くの危険が潜む地ではあるが、カーカバードにしてはまだ危険度はそれほど高くはない地でもある。
丘陵地を越えた北端に、大きく東西にジャバジ川が横切り、川を挟んだ向こう側が、バクランドになる。このシャバジ川は広大であり、渡し船も無く自力で横切る事はほぼ不可能。川を越えてバクランドに向かうには、「城砦都市カーレ」の南門から入り込み、都市内部の橋を渡り、北門から出ていく以外に方法が無い。
カントパーニ
アナランド北部から、そう離れていない場所に位置する村。この村の商店には、掘り出し物が揃っており、重要アイテムもその中に混じっている事も珍しくない。
郊外には山賊が出現する様子。また、クリスタンティに至る道の途中では、ゴブリンやオーガが潜む鉱山がある。
クリスタンティ
カントパーニから北上した位置にある村。髪の毛を結い上げ、骨のピンで留めるという独自のファッションが存在する。また、村人たちはほぼ全員が大酒飲み。
滋養に富む林檎に似た果実「ボンバ」の栽培を行っている。更に、ここの近辺にはアリアンナの住居が存在する。
ダンパス
クリスタンティの先にある小さな村。
ビリタンティ
ダンパスの先にある村。主人公が訪れた時には、丁度「子供の祝祭」の真最中だった。
グランドレイガー酒場が存在する他、治癒効果のある「水晶の滝」がある。
トレパーニ
ダンパスの先にある村。村の主な住民は、半人半鬼の種族スヴィン。
村の近くには、内部が迷路になっている洞窟が存在し、マンティコアが潜んでいる。最近、略奪者たちにスヴィンの酋長の娘が攫われてしまったらしい。
この村を北上すると、ジャバジ川、そしてカーレの南門へとたどり着ける。
その他
黄死病
体力回復が出来なくなる病。進行すれば手足を失う事もある。シャムタンティのいくつかの村で発生しているらしい。感染力も高く、知らない者が病人と接触してしまったら、即座に感染してしまう。
ブリムベリー
癖のある臭いと味の果実だが、優れた薬効を有する天然の治療薬でもある。収穫したのちに絞り汁にする事で長期保存する事が可能。このブリムベリーの搾り汁を飲む事で、黄死病も初期段階ならば治癒する事が可能(主人公が用いる呪文に必要なアイテムの1つでもある)。
ボンバの実
林檎に似た汁気たっぷりの、滋養に満ちた果実。そのまま食べても美味だが、この果実とともに別の食料を食べる事で、体力の回復度合いが倍になる。
子供の祝祭
ビリタンティ村で行われていた祭。大人と子供の役割を一日だけ交換する事で、子供時代を懐かしむという祭りで、大人は15歳以下の子供に一日奉仕しなくてはならない。大人は子供の気まぐれに一日中付き合って従わねばならず、子供は大人に対して色々と命じ、明日この事で叱られない事も含めて愉快な思いができる。