城砦都市カーレ
じょうさいとしかーれ
「城砦都市カーレ」とは名作ゲームブックシリーズ「ソーサリー」の第2巻である。
原題は「KHARE' - CITYPORT OF TRAPS」
今までに三度翻訳されており、それぞれ邦題は
「城砦都市カーレ」(創元推理文庫・1985年・訳者:中川法江)
「魔の罠の都」(創土社・2003年・訳者:浅羽莢子)
「罠の都カーレ」(SBクリエイティブ・2023年・訳者:こあらだまり)
シャムタンティの丘を超えた主人公が、カーレの南門から侵入し、北門から脱出するまでを描いた作品。バクランドへの入り口である北門の扉は魔法の力によって堅く閉ざされており、主人公は扉を開ける呪文を知っている人々を探しながら危険な街・カーレを通り抜ける。
1巻「魔法使いの丘」と比べると全体的な難易度は高いが、魔法使いの丘で適切な行動を取っていれば、関係者からの協力を得ることができる。
女神リーブラ
主人公が信仰する正義の女神。冒険の中で一度だけ支援をしてくれる。選択肢によっては主人公が改宗することもあり、それ場合は(後の巻も含め)彼女の援助を得られなくなってしまう。
アンバー・ザ・バーバリアンとケグー・オブ・ダドゥーリー
レスラー。祭りの賭けレスリングに出場している。魔法を使えば彼らの試合の行方をある程度操作することも可能である。
アンバーは、その名の通りバーバリアンで挑戦者。ケグーはオーガで、チャンピオンレスラー。アンバーの方が背が高いが、ケグーの方は技量が髙い。
カマキリ男
彫像のような見た目の痩せたヒューマノイド。その両腕は鎌で、普段は彫像の振りをして、動かずに獲物を待ち続けている。そして、知らぬ間に近づいた不用心な人間などを、両腕の鎌を伸ばし捕まえ、噛みついて即死させて食べてしまう。
戦いの際も、もしも攻撃が一度でも成功したら鎌に捕まった事になり、敵は即死扱いになる。
ただし逆に、敵が片方の鎌の手を切断したら、戦う術が無くなるので容易に止めを差せる。
光るアイテムに興味を示し、過去の犠牲者から奪い所持する習性がある。
生き骸(リビング・コープス)
アンデッドモンスター。見た目はほぼゾンビで、普段は本物の死体の振りをして、あるいはそれらの中に紛れ込んでおり、獲物が接近すると起き上がって襲い掛かってくる。
脆そうに見えるが、ゾンビ以上に素早い。敵からの一撃を受けると、頭部、胴体、両腕、両足と、身体を6分割させ、それぞれ独立して襲い掛かる。すべての部位にダメージを与えると、今度こそ本当に死を迎え、死体となり果てる。
フランカー
第1巻「魔法使いの丘」で一戦交えた刺客。面識があれば主人公に対して助言してくれることもある。
ロータグ
カーレに住む貴人。学者であり賢人。カーレ北門の呪文を一行知っており、主人公のルーン文字に関する知識を試してくる。ブリッスル・ビースト(棘々獣)という獣を飼っている。
ブリッスル・ビースト(棘々獣)
大型犬ほどの大きさに成長する、トカゲのような生き物。その背中には、ハリネズミやヤマアラシのように、太いトゲが無数に生えている。都市圏の富裕層においては、愛玩用のペットとして飼われており、慣れていれば主人について歩き、番犬のように戦ってもくれる(しかし、高価で希少な動物なので、飼い主が戦いを止めるのが普通)。
なお、この動物の肝臓を香辛料で漬けたものは、シャムタンティやアナランド北側では珍味として食卓に上っているらしい。
レッドアイ
目から熱視線を出して攻撃してくる危険で好戦的な生き物。ひょろっとした体型で、人間やエルフの遠い親戚の種族。チンピラのような思考と行動を有しており、争いの口実が出来たら、熱の視線で周囲に喧嘩を売る。街の北側は、彼らが勝手に占拠して独自のコミュニティを作っている。
フレイヤー(鞭叩き)
蛸に似た頭部を持つ、人間型の生き物。両腕は無く、タコのように生えている無数の触手が腕代わりになる。頭部のタコ部分の皮膚はスライムまたはゼリー状で、安定していない。この醜く異様な外見の為に、嫌悪され排斥されがち。
しかし、料理人として非常に優れた技量を有しており、世界各国の珍味をこしらえる事に関しては右に出ない。それゆえに、食通や食道楽の貴族や富裕層に雇われる事も多く、その屋敷、ないしはその台所で遭遇する事もありうる。技量、体力はそこまで高くないが、触手の先には針がついており、攻撃を受けた時の被ダメージが多い。
悪意の神スラング
カーレで信仰されている悪意の神。旧訳版では「スラン」表記。
悪意を以て、敵に復讐してくれる神だと信仰されている。その姿は、蛇のような舌を持つ、でっぷりした大男。かつて神話の時代には、妹である嫉妬の女神タニットとともに「死」や「疫病」「腐敗」といった混沌側に付いていた。
スラングの聖人
悪意の神・スラングの信徒。礼拝堂にて説法を行い、謎かけを持ちかけて標的を改宗させようと試みている。口がうまく、その説法は人を引き付ける力を有し、彼との謎かけに答えられなかったら、その者はスラングの信者になる事を誓わされる(すなわち、それまでに何らかの神を信仰していた場合、その神への信仰が無くなり、加護も受けられなくなる)。
カーレにおいては、実力者でもあるらしい。
クーガ、フォーガ
双子の神々。秩序側の神で、それぞれ優雅さと誇りを司る。カーレでも信仰されており、優雅と誇りを司る事から「復讐を肯定する神」と解釈されている。カーレ内のクーガの神殿には、クーガの像(イラスト)があり、信者はその顔に口づけする事でクーガの神託を聞く事が出来る。
(「カレー」の訳もあり)
本編の舞台となる、悪徳がはびこる危険な都市。
旧世界の北東部地域、カーカバードの、シャムタンテイ丘陵地と、バドゥ・バク平原を隔てる大河、シャバジ川の中流、カーカバード海から約555㎞上流に存在している。
カーカバード海の海岸には、港町は存在せず、外海から来た船は川を上ってこのカーレへとやってくる。
また、上流にはラムレ湖が存在。ここで採れた魚を売りに、はしけや小舟が下ってやってくる。
カーレはその外縁部を、ぐるりと城壁で覆っている。内部に入るためには、北と南の門、またはシャバジ川の上流・下流のどちらかから船で入り込む以外に方法はない。
シャムタンティからの旅人が、シャバジ川を徒歩で越えるためには、このカーレの南門から入り、横断し、北門から出ていく以外に道はない(川は広く、流れも速い。そして横断するための交通手段も無い。河川には怪物の類も多く潜む他、未知のカルト集団が襲撃するため、船での横断は推奨できない)。
都市内部には、唯一の橋ハーバーブリッジが存在。ここを通る事で、シャバジ川を越えて北上する事が可能となる。
周辺地域にはカーレ以上の、そしてカーレ以外の都市は存在しない(南はシャムタンティの丘陵地域で、小規模の村があるのみ。北はバドゥ・バク平原が広がり、都市どころか村すらも存在しない)。そのため、周辺の住民たちにとっては唯一の都市であり、文明地である。
カーレ内部は多くの泥棒や追いはぎなどが集まっており、秩序を重んじる市民たちは自分たちのテリトリーを守ろうと、各所に罠を仕掛けた。しかしどこに自分の罠があるのかを知らせずにいたため、計画は逆効果に。秩序維持どころか、ただ歩き回るだけで罠に引っかかる危険が発生してしまった。
現在は、住民たちは自分のテリトリーから踏み出さず、知らない通りや横丁に入らないようにして生活している。
このような事情の為、都市内部は縄張りとその住民たちによる、パッチワークのようになっている。
住民たちですらこのような有様なので、旅のよそ者が迷い込んだら、より大変な状況になる事は言うまでもない。
仕掛けられた罠をくぐり抜けたとしても、安心はできない。カーレ市内の宿屋に泊まっても、目覚めたらギロチンの罠にかけられていた、または眠っている最中に煮えたぎる釜に入れられた……という話には事欠かず、実際それで命を落とした者も多い。
南門には通常鍵がかけられており、おいそれと旅人が入り込む事はできない。入り込めたとしても、兵士に捕まり牢に入れられる事が多い。
また、北門から出て行こうとするも、兵士たちにより守りが固められている。賄賂を差し出せば彼らは目をつぶってくれるが、門自体は魔法の呪文により鍵がかけられている。
開くためには、四行の魔法の呪文をどこかで入手し、それを門の前で唱えるしかない。ただし、呪文を知らないのはもちろん、その順番を間違えると、封じられていたサルファー(硫黄)・ゴーストが出現する。このゴーストには通常の武器は効かず、敏捷なので呪文も掛けにくい。そして北門を開けようとして失敗した者全てを、窒息性の毒の気体で包み込み殺害するように命じられている。
カーレの地下には、広大な下水道が広がっており、スライム・イーターのような怪物たちの住処になっている。
外壁部にはスラム街が広がり、中心部に向かうに従い家屋や商店が密集するように。街の中心部には大規模な賭博施設「ヴラダの賭博場」があり、一攫千金を求める者達が毎日足繁く通っている。
住民は人間の他、ドワーフ、黒エルフ、マンオークなどの異種族も多い。レッドアイは勝手に一部区域を占領し、自分のコミュニティを作っている。また、ハーピーやマンティスマン(カマキリ男)などのモンスターもあちこちに生息している。