私が少女であったころ、わたしたちは灰色の海に浮かぶ果実だった。
わたしが少年であったころ、
わたしたちは幕間のような暗い波間の中に声もなく漂っていた。
開かれた窓には、雲と地平線の間の梯子を上っていくわたしたちが見える。
海より帰りて船人は、再び陸(おか)で時の花びらに沈む。
海より帰りて船人は、再び宙(そら)で時の花びらを散らす。
概要
北の湿原地帯にある全寮制の学園を舞台に、主人公の水野理瀬と仲間たちが事件に巻き込まれていくミステリー。
『メフィスト』(講談社)にて1998年10月増刊号から1999年9月増刊号に連載され、
2000年に刊行、2004年には文庫版が刊行された。
関連作品として『三月は深き紅の淵を』、『黄昏の百合の骨』、があり、
短編小説の『図書室の海』には理瀬の幼少期の物語『睡蓮』が掲載されている。
あらすじ
三月以外の転入生は破滅をもたらすといわれているとある全寮制の学園。二月最後の日に転入してきた理瀬の心は揺らめく。彼女が学園にやってきてから、いくつもの不可解な事件が起こる。閉ざされたコンサート会場や湿原から謎の失踪をした生徒たち。生徒を集め交霊会を開く校長。図書館から消えた「三月は深き紅の淵を」といういわくつきの本。理瀬が迷い込んだ三月の国の秘密とは?
舞台
北海道の湿原地帯、『青の丘』という人口に作られた山の上に建つ全寮制の学園で三月に新学期が行われる事から通称「三月の国」と呼ばれている。
学園は中等部と高等部合わせて六学年。各学年を男女共に六人ずつ縦割りにした計十二人のファミリーと呼ばれるグループを作る。
憂理曰くこの学園の生徒たちは、保護を目的とした『ゆりかご』、特殊教育を要する『養成所』、家庭や環境による異常児が多い『墓場』に分かれているという。
常に生徒の入れ替えや消失が多く、行方不明になった者もいるというが・・・・
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