山の民
やまのたみ
概要
秦よりさらに西にある深い山々に住む民族の総称。
民族ごとにデザインの違う面を被り、腰布を巻きつけただけといった簡易的な格好ではあるが、断崖絶壁を利用した城を築くなど、その技術力は非常に高い。
河了貂も山の民の末裔であるため、特に作中初期は独特な格好をしていた。
四百年前の秦王・穆公は彼らと盟を結んでいたが、穆公亡き後一方的な盟の断絶を受けて山に追いやられたことで秦国に根深い恨みを抱いていたが、穆公にだけは現在でも敬意を払っている。
断絶の理由は、馬酒兵にある。
穆公と盟を結び、その後秦国と晋の戦争で秦に援軍として現れた山の民が穆公の軍馬を勝手に殺して食らった際、馬に合う酒を振る舞われた恩を返すために援軍として訪れた。
わずか三百人の戦士で数千もの兵を蹴散らし、さらには敵本陣の晋王を捕えてしまうほどの高い戦闘能力を持つものの、その戦い方は味方された秦兵ですら背筋を凍らすほどに凄惨であったという。
山の民にとっては恩を仇で返された形になったことで、未だに根強く秦人を恨んでいるのである。
しかし、王都奪還編にて嬴政らが逃避行の末に見つけた穆公と盟を結んだ避暑地は、四百年経っているにもかかわらず綺麗に整備されていたことで、嬴政は穆公との思い出の場所を聖地としてあがめていると推測した。
そして秦王・嬴政と山の王・楊端和との間に改めて盟を結ぶことになり、王都奪還に尽力。
この一件自体は王宮の内々で情報統制を行い、クーデター自体がなかったことにされたため、山の民と一般の秦人の国交には何ら影響はなかったが、蕞の戦いで窮地の秦国を救うべく、その時戦っていた敵民族との全ての戦績と犠牲を投げ打って救援に来たことで、楊端和が秦の大上造(大将軍)の爵位を貰う(この時点で秦国中で山の民の認知が大々的に行われたと思われる)など確かな同盟関係となり、秦国の一大勢力となった。
軍としての山の民
上記の通り秦人にとって山の民は大々的に認知されていると見られるが、作中では現状、非戦闘員の山の民が軍と無関係の秦人と交流する描写が見られない。
王都奪還編の時点で非戦闘員の山の民は旧来の思想が捨てきれずに秦人を恨む者も見られ、秦人も彼らを山猿などと呼ぶこともあり、鄴攻略に着手するまでの数年間では国交正常化は難しいのかも知れない。
よって現状で山の民という言葉が指す意味は、楊端和が率いる軍勢としての意味合いが強い。
以下は軍勢としての山の民について記述する。
山の王・楊端和を筆頭に、各民族ごとに軍が分割されているのが最大の特徴。
戦国七雄の一般的な階級区分は見られず、楊端和が大将軍(上記の通り秦国でも公的に認められている)、族長が千人将や将軍の位置づけと考えられる。
楊端和直属の軍の他、作中では現状、鳥牙族・フィゴ族・メラ族・猿手族が登場し、鄴攻略時に犬戎族も配下にした。
楊端和軍
山の王。幼少より世界を広げたいと考えており、かつてない国の広がりを求めて、政と強固な盟を結び王都奪還に力を貸した他、日夜山界の民族との戦いに明け暮れ、勢力を拡大している。
蕞の戦いの功績で大上造(大将軍)の爵位を貰い、鄴攻略の功績で六大将軍の第四将に任命された。
将軍。最古参のメンバーと思われる。
昔は人語すら話せない獣のような気性の荒さだったが、過去の獣の心は未だに持っており、本人の意思でその獣を解放できる模様。
それを抜きにしても常人離れした体力と身体を持ち、崖から崖を渡る大ジャンプを見せたこともある。
将軍。信との絡みが多く、王都奪還編にて自らの面を折った信を戦士として認めた。
鄴攻略時でも秦国の言葉は上手く話せていない。
元は成蟜子飼いの常識外れの巨体と怪力を持つ巨漢。
王都奪還編にて山の民に引き取られ、合従軍編で久々の登場を果たした。
理由は不明だが鄴攻略では未登場。
鳥牙族
- シュンメン
鳥牙族族長。王都奪還編にてランカイを引き取り教育係を務めた。
合従軍編や鄴攻略にも登場。
フィゴ族(鄴攻略より加入)
- ダント
フィゴ族族長。「フィゴ王」と呼ばれ、皆が一目置く猛将。下ネタが好き。
楊端和に惚れ込んでおり、彼女が自分に惚れることを狙って鄴攻略に参加していた。
実力は本物で、犬戎族の将軍トアクを瞬殺した他、壁と共に犬戎族の王ロゾを討伐した。
メラ族(鄴攻略より加入)
- カタリ
キタリの兄。山民族では珍しく温和で礼儀正しく冷静な性格。
メラ族族長だが、鄴攻略にて戦死したことでキタリが族長になった。
- キタリ
カタリの妹。秦国の言葉は流暢に話せず、血気盛んで毒舌。
鄴攻略にてメラ族族長を継承し、ブネンを瞬殺し兄の仇を討った。
猿手族(鄴攻略より加入)
- エンポ
猿手族族長。壁を走る者と言われる猿手族随一の壁登りの達人。
小柄な老人だが、周囲から「エンポじぃ」と呼ばれ一目置く老将。楊端和を「マンタンワ」と間違えて呼ぶ。
楊端和から橑陽攻略の特命を受け、猿手族を率いて城を一夜で陥落させた。