ブラックホール(映画)
ぶらっくほーる
概要
「ブラックホール」(原題: The Black Hole)とは、1979年のアメリカのSF映画である。
ストーリー
人類の居住可能な惑星を探して、何カ月もの間宇宙を旅していたNASAの宇宙探査船U.S.S.パロミノ号。クルーは船長のホランド、副長のチャールズ、科学者のデュラントとケイト、ジャーナリストのハリーの5人、そして小型ロボットのV.I.N.CENT.(ヴィンセント)。
地球への帰路を急いでいた船は、史上最大級のブラックホールに遭遇する。
ブラックホールのすぐ近くには、20年前に消息を絶ったアメリカの超大型宇宙船シグナス号の姿があった。シグナス号はブラックホールの間近にいながらも、それに引き込まれずに宇宙空間を平然と漂っていた。
ブラックホールの引力に翻弄されながらも、なんとかシグナス号の船内に侵入したパロミノ号の一行。彼らの前に現れたのは、銀色の仮面と黒装束に身を包んだヒューマノイド達と、不気味な赤いロボットマクシミリアン、警備ロボット部隊。そして天才科学者にしてシグナス号の唯一の生き残り、ラインハート博士だった。
一行を出迎えたラインハート博士は、シグナス号で起きたこれまでの出来事を語った。今から20年前、シグナス号が流星群によって破損した際に88名の乗組員たちは緊急用シャトルで脱出。ラインハート博士と共に残ったケイト博士の父親はすでに死亡。ラインハート博士は反重力装置と、博士の手足となって働くヒューマノイドやマクシミリアンを開発し、一人ブラックホールの研究を続けていたのだった。
船内を探検していたV.I.N.CENT.は、旧式のおんぼろロボットBO.B.(ボブ)に出会い、20年前の恐ろしい真実を知る。それは、ブラックホールを探検するという危険な探求心のために、ラインハートがケイト博士の父親を殺害、残った乗組員たちをヒューマノイドに改造し、シグナス号を乗っとったというものだった。V.I.N.CENT.からその話を聞かされた乗組員はパロミノ号で脱出しようとするが、デュラント博士はマクシミリアンに殺害され、ケイト博士はラインハートの命令で病院(ヒューマノイドの製造室)へと連行されヒューマノイドに改造されそうに。しかし改造手術の直後に、ホランドらによって救出された。
船長たちは脱出を急いだものの、ハリーにパロミノ号を乗っ取られてしまい、その船もシグナス号からの攻撃で破壊されてしまった。
はたして、ホランド船長たちは脱出する事が出来るのだろうか……。
登場キャラ
ハンス・ラインハート博士
天才的な科学者で、全長457.5メートルもある人類史上最大の宇宙船・シグナス号の船長。ブラックホールの重力を遮断するシステムと、ブラックホールにも吸い込まれないほどの出力を持つ動力源“シグニウム炉”を開発。ブラックホールの近傍に停泊し続けて、そこから得られる科学データを解析し、超重力によって形成される超空間トンネルへの探査旅行によってブラックホールの秘密を解き明かそうとしている。
物理学、ロボット工学、エネルギー工学など多方面で高度な研鑽を積んで成果を上げてきた天才科学者として有名だが、傲慢で身勝手な危険人物でもある。
人知れず活動してきた故の人恋しさもあったせいか、賞賛者となったデュラント博士を右腕となる人物と見込み、ブラックホールへの旅に連れて行こうとする。
アレックス・デュラント博士
天体物理学者。ラインハート博士の卓越した才能と科学者としての優れた思考に共感し、彼の“弟子”としてブラックホール探査旅行に付き従おうとするが、ケイト博士の必死の呼びかけによって20年前に起きた真実を知り…。
ダン・ホランド
パロミノ号の船長。観察力に優れた冷静沈着な人物。シグナス号内で出会ったラインハート博士の強引かつ自己中心的な言動を危惧し、シグナス号内部を調査する。そこで警備用以外のロボット乗員たちが、脳を破壊されてヒューマノイドにさせられた“元・人間”であることを知る。捕らえられたケイト博士の救出に向かうが、ハリーの身勝手な行動でパロミノ号を失ってしまい、別の方法での脱出を決断する。
ハリー・ブース
ジャーナリスト。船内の不気味な様子と船を完全に私物化したラインハート博士の危険な言動を怪しみ、いち早く脱出を主張。結局、危険な探査旅行へ向かい始めたシグナス号から、1人だけでも脱出しようとパロミノ号を奪ってしまった。
チャールズ・パイザー中尉
宇宙船一等航海士。ホランド船長の部下としてV.I.N.CENT.と共にブラックホール重力圏からの生還を目指す。脱出時にパロミノ号に待機していたが、ホランドとケイトを待っている際、追い詰められて脱出できないホランドからの「自分たちを待たずに、すぐに脱出しろ」という命令を無視。二人を助けるために向かっていった。
ケイト・マックレイ博士
天体地球物理学者。パロミノ号クルーの紅一点。父がシグナス号の乗員だったこともあり、父を始めとする乗員の行方を心配していた。V.I.N.CENT.とテレパシーで会話ができ、それによってラインハート博士が20年前に警備用ロボット軍団で船を制圧し、乗員たちが脳を破壊されてヒューマノイドに改造されたことを知らされるとデュラント博士に真相を告げ、ラインハート博士に反抗。そのまま捕らわれて病院へ連行され、改造手術でヒューマノイドに改造されかけたが、その開始直後にダンとV.I.N.CENT.及びBO.B.に救出される。
登場ロボット
V.I.N.CENT.(ヴィンセント)
感情を持った小型ロボット。形式番号LF-396。身長92cm、重量47kg。
作業用マニピュレータ4基、レーザーガン2基、ドリル・アーム1基を内蔵。底部に二基を装備した反重力ホバリング装置で、宙に浮いて移動する。音声認識装置で地球上のほとんどの言語を話すことができ、特定の人物とのテレパシー会話能力も有する。
比較的新しい地球の技術で作られたらしく、ラインハート博士のロボットには無い機能を持ち、基本性能も高い。
かなり人間臭い性格を有しており、ブラックホールの重力下で船外作業を行っていた際、ケイトとのテレパシー会話で気取った返答をしていた。
その他にも、ことわざや格言を口にする癖があるらしく、劇中ではハリーやチャールズを閉口させていた。
名前は"Vital Information Necessary CENTerized(必要関連情報集中装置)"の略。
BO.B.(ボブ)
倉庫で発見されたボロボロの小型ロボットで、V.I.N.CENT.の旧式モデル。かつてラインハート博士の反乱に抵抗した乗員たちに味方した経緯があったせいか、ラインハート博士に警戒されて、修理されること無く破損したまま放置された。「オールド・ボブ」とも呼ばれ、アメリカ南部訛りで喋る。
基本的な装備および武装はV.I.N.CENT.と同様だが、上記の理由でほとんど修復されておらず、作業用マニピュレーターや反重力ホバリング装置なども片方は無くなっていたり、作動不能のままになっている。修復を受けていればシグナス号警備ロボット軍に引けを取らない性能を持つ。
ラインハートに開発されたロボット軍団とは異なり、一方的に博士に従う存在ではなかったため、V.I.N.CENT.と意気投合し、これまでの経緯をシグナス号の乗員たちに伝え彼らの脱出に協力する。
脱出時に警備ロボットたちと内蔵したレーザーで撃ち合い、一般警備ロボットを何機か破壊するも、マクシミリアンのレーザーを受けてしまった。それが原因で、これまでのダメージの蓄積もあって作動不能に。最後にV.I.N.CENT.へ励ましの言葉を送ると、完全に機能停止(死亡)する。
名前は"BiO-sanitation Battalion(生体衛生設備大隊)"の略。
マクシミリアン
シグナス号の管理やラインハート博士の護衛、警備用ロボット達の指揮をする真紅のロボット。身長193cm、重量115Kg。
動力源はラインハート博士の開発した小型シグニウム炉である。V.I.N.CENT.と同様に反重力装置で宙を移動する。
シルエットは人型だが、両足はスタピライザー状で歩行も着地もできない。腕は六本あり、肩から細長い合計六本のアームが下がっており、必要に応じて使用する。アームはレーザー砲や、爪が開き回転するドリルなど、それぞれ異なった装備を有する。他にロケットブースター・対レーザー装甲を持ち、防御力と攻撃力が非常に高く戦闘に特化した性能を有する。
V.I.N.CENTやBO.B.のレーザー攻撃は全く効かず、一行を執拗に追い続けた。
言葉は発しないが意思や感情を持っており、愛嬌のつもりなのかホランド船長らの前でひっくり返った姿を見せている。
外部からの呼びかけに対する反応が鈍く、しばしば命令を無視したかのような行動に出てしまい、拘束するだけで済ませるはずだったデュラント博士を殺害ししてしまう。一行の脱出直前まで追い続けるが、至近距離まで近付いた所でV.I.N.CENT.の工作用ドリルで装甲に穴を空けられダメージを受けた。
S.T.A.R.主将(スター主将)
レーザーで武装した警備用ロボットの隊長格。おんぼろロボットのBO.B.を馬鹿にしている。マクシミリアンが出てくるまでは、最高位のロボットだったらしい。訓練中にV.I.N.CENT.と射撃対決をするが、V.I.N.CENT.の放ったレーザーが壁に反射し、胸に当たり行動不能に。
名前は"Special Troops/Arms Regiment(特殊兵士/武装連隊長)"の略。
ヒューマノイド
シグナス号でラインハート博士の手足となって働く70体のロボット。銀色の仮面と黒いマントを身にまとった人間のような姿をしており、動作しなくなった仲間をブラックホールに葬り出す宇宙葬までする人間くささを持っている。しかしその実態はラインハートの手によって脳を破壊され、意思を奪われたシグナス号の乗組員である。
登場宇宙船・その他
パロミノ号
ホランドを船長とした中型探査宇宙船。所属はNASAで、アメリカ国籍の船。人類居住可能な惑星探査に赴いた任務の帰還時に、巨大なブラックホール、およびシグナス号を発見する。
船内には宇宙船のデータベースがあり、宇宙空間に浮かぶ船のシルエットから検索し、所属国籍と船名、その目的といったデータを出す事が出来る。それを用いて、シグナス号と判明した。
途中でホランドらがシグナス号で行われていた事の事実を知り、逃走しようとした際。ハリーが一人で勝手に脱出。その際にシグナス号のレーザーの直撃を受けて破壊されてしまった。
シグナス号
本編の舞台となる、全長457.5メートルある人類史上最大の超大型宇宙船。アメリカ所属で、船体は「鉄骨とガラスで形成された幽霊屋敷」のような外観を持つ。船長はラインハート。
その動力に用いられている「シグニウム」は、シグナス号から取られた。もとよりケイト博士の父親など、多くの人員を乗せて出立していたが、20年前に消息を絶っていた。多くの有人式小型探査宇宙船を持ち、ブラックホールの周辺や周囲の宙域に放っては、データを収集していた様子。
スタッフ
監督:ゲイリー・ネルソン
脚本:ゲイリー・デイ、ジェブ・ローズブルック
原案:ジェブ・ローズブルック、ボブ・バーバッシュ、リチャード・H・ランドー。