せめて 不細工な死体にならない事を祈れ
概要
魔王軍の脅威が去った世界。「Lv.1の村」で需要の減少により経営不振に陥った道具屋を営む少年・ムラビトは、勇者との戦いの果てに生き残ってしまったさすらいの元魔王・マオと出会う。
期せずして魔王の力の継承先に選ばれてしまったムラビトと、力を捨てて死んでしまいたいマオ、さらには魔王を倒して英雄に祭り上げられた青年・アッシュも加わり、崖っぷちの道具屋「すだち屋」は再建に向けて東奔西走――“平和な世界”で悩める者たちのファンタジー&コメディ。
「月刊少年マガジン」にて連載中。単行本は2022年7月14日現在、既刊2巻。
「次にくるマンガ大賞2022 コミックス部門」にノミネートされている。
登場人物
ムラビト
サイショ村の道具屋「すだち屋」店長。18歳。ユニークな名前は父が付けたもの。10年前に“勇者”が“魔王”を討伐してからは、冒険者の激減もあって廃業の危機に陥っており、便利屋同然の副業で得た稼ぎで経営を維持している有り様。
お人好しで利益は二の次ながらも人を助けるために生き抜いた父を愛し、咄嗟の無茶も父親譲り。損失上等の大雑把な経営を見てきた反動か、利益になりそうな事柄には目の色を変えがち。アイテムに関しては知識・扱いともに熟達しており、初見の薬草にも対応する勉強熱心な努力家。
曲がりなりにも命の恩人であるマオには感謝しており、世界からあぶれてしまった「元魔王」に道具屋の共同経営を持ちかける。最大の目的は、すだち屋の名を世に広めて魔王の力を取り除くための情報を集めること。
マオの力を一部受け継いだことで、魔物の力が増す夜間には姿を変じるようになるが、Lv.1のステータスに引っ張られて魔王っぽい事はほとんど出来ない。
マオ
美しい黄金色の瞳を持つ“魔族”につらなるゴスロリ少女。一人称は「我(わたし)」。自身の投身自殺(の試み)を庇って絶命したムラビトに情けをかけ、蘇生のために血を分け与えた。かつて勇者に打ち倒された「マオ=マオーウ776世」その人。
生まれ持った資質によって魔王の座を継ぎながら、魔王軍の権威失墜によって求心力は低下、人の世に溶け込めるわけもなく、頑丈過ぎて冥府へ行くことさえ叶わない孤独を抱えてきた。
魔王の資格たるスキル・魔物ノ統率者(モンスター・コンダクター)を継承したムラビトを見込んで、力を捨て去る唯一の手段である継承に望みをかけており、全ての力を受け継がせるまで「道具屋の嫁」として居候を決め込む。人間的な情緒には疎い節もあるが、“普通”の生き方に憧れてきたため、仮初めの道具屋暮らしに安らぎを見出している。
魔王軍を統率していただけあって、零細道具屋には不釣り合いな「万能薬(エリクシル)」の製法を持ち込んだ他、経理にも精通しており、店頭では看板娘として頭の角にカバーをかけて過ごしている。アッシュのことはトラウマ混じりに大嫌い。
アッシュ
第776代魔王を討った「勇者アーサー」の中の人。27歳。一介の冒険者として旅立ち、魔王討伐という大偉業を成し遂げたことで、10年近く平和の象徴たる「アーサー」を演じてきたために精神を病み、共に旅をした悪友たちの協力で密かにサイショ村での療養生活(という名目の酒浸りの日々)を送っていた。マオの癇癪による魔神獣の誤召喚騒動を目撃したことで魔王の復活を悟るも、可憐な美少女として暮らすマオに倒錯した嗜虐心を抱き、すだち屋へ面接に押しかける。
「クズ」を自称し、酒とギャンブル、マオの嫌がること全般が大好物。一方では自身の本性によって人々を幻滅させてしまうことを憂えており、「無一文のアッシュ」としての再訪を心から喜ぶムラビトに報いるため、道具屋店員として再出発する。
旅立ちの際にムラビトの父から装備一式を無償で提供されたため、未払いの代金に加えて、現行の浪費も給料から天引きされている。勇者としての経験に加え、人心を巧みに掴む営業術も心得ており、「勇者公認そっくりさん芸人」としてすだち屋の広告塔を担う傍ら、魔王の卵と元魔王という危ういコンビを監視している。
クチモグラ
下僕としてマオに付き従っていた魔王お世話係。流暢に人語を操るため、衣装を着込んで店員に変装することも多い。魔物の長がムラビトに変わってからもマオを「殿下」と呼んで敬っており、ムラビトが離縁を申し出た際にはあまりの無礼にブチ切れている。
村長
丸顔にちょび髭のモブ代表のようなおじさん。経営不振の道具屋を一人で切り盛りしているムラビトを案じており、あれこれと世話を焼いている。ユーモラスな見た目ながらも、義に厚く情が深い。