概要
東北大学に存在するサークルで、大学からは体育会系に分類されている。
正式名称は「Team Windnauts」。チーム名は「Wind(風)」と「Nauts(船乗り)」を組み合わせた造語で、
そこには「風の海を渡ってゆく、風の船乗り」という意味が込められている。
2001年以降、飛距離を競う「人力プロペラ機ディスタンス部門」の書類審査に毎年合格し続け、
着実に記録を伸ばしてきたチームであり、2011年8月現在で優勝3回・準優勝2回の実績を持つ。
現在では、東京工業大学のチーム「Meister」や、日本大学のチーム「NASG」とともに、
上記の部門における最強チームの一角を担っている。
2003年には学生チーム初となる琵琶湖北岸(24.8km)地点に到達し、その時点の歴代最高記録を更新。
(※当時は折り返しルールがなかったため、そこで出された着水命令に従い、余力を残し着水した)
折り返しルール制定より2年後の2006年には、チーム初となる折り返しフライトに成功。
プラットフォームへの帰還こそできなかったが、28.6kmの長距離フライトでチーム記録を更新、初優勝。
そして2008年には、遂に前人未到の折り返しフライト完走に成功し、当時の限界距離(36km)に到達。
それまでの大会記録を上回る「鳥人間史上最高記録」で、ぶっちぎりの優勝を果たした。
これに伴い、それまで18km地点にあった折り返しポイントが以後の大会で20km地点に変更され、
その結果ルール上の限界距離は40kmにまで延長されることとなった。
彼らの残した大会ルールに基づく計測距離の36kmは、2011年8月現在未だに破られていない。
機体の特徴
Windnautsは例年、翼幅が32m前後・機速が7.2m/s前後の、いわゆる「大型低速機」を制作している。
ディスタンス部門で大記録を狙うチームは、ほとんどがこの辺りの翼幅・機速の機体を運用しているが、
Windnautsの機体には、それ以外にも細かなところで複数の特徴がある。基本構造には、
自作のCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を用いた桁(機体の基礎となる骨組の部分)を利用し、
上記の翼幅を持ちながら31kg前後という、極めて軽い機体を制作する技術を確立している。
また、主翼に人力プロペラ機としては珍しい「初期上反角」をつけているのが最大の特徴。
主翼の根本の構造を予め緩やかなV字にすることで、文字通り翼が軽く上に反った形となる。
これは、テイクオフの際に揚力を得やすくすることと、主翼を上部から支えるワイヤーを廃し、
機体重量および飛行時にかかる空気抵抗の大幅な軽減を狙うための設計である。
そのほか、飛行時に安定を保つため、機体に対しかなり大きめの垂直尾翼が備え付けられている。
熱いパイロット達
このように、人力プロペラ機ディスタンス部門で数多くの記録を打ち立ててきたWindnautsだが、
記録以上に注目されるものとして、パイロットが飛行中に発する熱い発言がある。
2006年や2008年のパイロットもかなり熱い発言を繰り返し、特に前者は当時かなり注目されたが、
2011年のパイロット「中村拓磨」氏が発したそれらは、今まで以上に数多くの人々を魅了し、
それまでにない感動を与えるとともに、放送終了後には各方面で話題となった。
また、その際のフライトも、記憶に強く残る極めて波乱に満ちたものであった。
まず、プラットフォームからの直線距離が3kmに達した時点でGPSが機能しなくなり、
自らが湖上のどこにいるのか把握できないという自体に陥ってしまう。
追い打ちをかけるように無線が通じなくなり、更にはその状況下で複雑な風に機体が押され、
機首は完全にプラットフォームの方を向き「逆走」状態となってしまった。その後、
逆走中に何とか奇跡的に無線が回復するも、高度は落ち、いつ着水してしまってもおかしくない…
そんな状況下でも、中村氏は必死で進路の修正を試み…遂には直線距離1.5km前後の地点で、
想定外の大旋回を成功させ、機首の方向を完全に立て直し、さらに再び距離を伸ばし始めた。
その後、機体が度々風に流されつつも少しずつ距離を伸ばし続けるが、序盤のトラブルが災いし、
中村氏の身体は徐々に乳酸に蝕まれ、肉体は限界を迎え始め…遂には左脚が攣ってしまう。
しかし、肉体が限界を迎えてもなお、その屈強な精神力で機体のペダルを漕ぎ続け、
最終的には琵琶湖北岸周辺・会場からの直線距離で18687.12mの地点に着水した。
しかし、大会ルールに基づく計測では上記の記録となったものの、
会場に備え付けられたGPSより判明した総飛行距離は、なんと約35kmにも及んだ。
そのフライト時間は90分強。これを見届けた多くの人が、人間の底力というものを知ったという。
なお、中村氏がフライト中に発した名言は以下の通り。
中村拓磨氏名言集
「直進する……!」
「聞こえる?桂……GPSの信号がない」
「あの、何も聞こえない!無線がっ!」
「クソっ……対岸は見える、だがこれはダメなんだろう?」
「クソっ……GPSが切れたら俺は運転もできないのかよ」
「もう半分くらいの体力を使っている……帰ってこれるのか、これで……?」
「悪いね……ヘボパイロットで……」
「エンジンだけは……一流のところを見せてやるぜ」
「クソっ……フルパワーだぜっ!! 信じらんねぇ!!」
「やっと戻った……うわ、だいぶ流されてるな……!」
「俺の人生は晴れときどき大荒れ……いいね! いい人生だよ!」
「風を……風を拾うんだ……」
「(風に)押されてる……解ってる……解ってるけど…あああああ!!」
「あっ!左脚が攣ってる……片脚だけで回すのは……右も限界に近い……」
「あっ……いぎっ……あああああ!! 脚があああああ!!」
「あっ、あああっ……動けえええええ!!」
「東北大学だろ…… ウィンドノーツだろっ!」
「まわれっ!! 回らんかーっ!!」
「桂、今何キロ?」
「うわあああああ!! くそおおおおお……もっと飛びたかった……」