概要
UPが出した、「長編成車両を平坦線で60マイル(100km/h)で牽く機関車」という無茶な要求に対してアルコがしのぎを削って作り上げた大型貨物用機関車である。
高速貨物用としてこれ以前に存在した、3985型機関車(チャレンジャー)をスケールアップしたような設計となっているが、大型化にあたって様々な変更が行われている。(ボイラーの溶接による圧力増強、二本煙突の採用、動輪数の増加など)
4000形の抱える欠点
4000形機関車には、世間の評価とは裏腹にかなりの欠点が存在したのだが、その最たるものが、ボイラーの性能である。
4000型は低質なワイオミング産の石炭を燃料とするため、大型の広火室を持っているのだが、写真などを見てみると、かなり細長く作られていることがわかる。
これは、動輪の上に火室を乗せたことによるもので、浅く水平な火室は完全燃焼的にも火室容積的にも不利であった。
しかし、火室を圧迫する要因はこれだけでは無かった。
ボイラー板厚増加で嵩んだ重量による、高重心化である。
100km/hの走行を目的とする4000形にとって、高重心は何としても避けたかったのである。
そこで4000形では水面を下げることで解決を図ったのだが、これによって火室の天井は下がり、火室容積はさらに圧迫された。
上からも下からも圧迫された火室容積を確保した結果が、この細長い火室なのである。
これだけならまだしも、水面を低くしたことによるしわ寄せは、煙管にも行ったのである。
天井を低くしたために、煙管の取り付け可能本数が減少。
ガス通過面積を著しく下げてしまったのである。
4000形は欠陥機だったか?
前述の通り、4000形の設計はかなり際どい妥協の末に成り立っていおり、そこには技術的な限界があったとみえる。
しかし、4000形は戦時中の物資輸送に多大なる貢献をし、かつ運用上においてもさした問題をきたしていなかったというのも事実であり、これは石炭の安いアメリカの中でも安価なワイオミング州産石炭を焚いていた事に起因する。
はっきり言って、重連で輸送力を強化する方が余程不経済的だったのである。
また、4000形の投炭は運転室内の機器により制御できたためワンマン運転が可能であったことも追い風となった。
4000形の世界記録
世間において、4000形は「世界一強力な蒸気機関車」「世界一重い蒸気機関車」「世界一長い蒸気機関車」などの称号を持っていることで知られているが、実際にはそうとも言えない。
「世界一強力な蒸気機関車」に関しては、「ペンシルバニア鉄道Q2形」の7980馬力が最強のうえ、「世界一重い蒸気機関車」においても、機関車重量のみを見れば「C&O鉄道H8形」の352tが最重である。
残るは「世界一長い蒸気機関車」であるが、これに関しては「テンダーを含めず」なら4000形が世界一である。(テンダーを含めた全長ではペンシルバニア鉄道S1形)