概要
型式番号EMS-TC03。パイロットはコーシャ。
両脚部にヴェスバー(可変速ビームライフル)のマイナー・アップデート武装である「ニードル・ヴェスバー」を内蔵した、超長距離狙撃機である。
このニードル・ヴェスバーは、コーシャが「絞り込む事に特化した」と語った通り、ヴェスバー元来の機能である射撃ビームの出力・速度(収束率)の連続帯域調節機能において、標準となる収束率を高域値に設定した武装であり、ジェネレーターへの負荷を小さくした状態で高貫通力・長射程のビームを撃ち出す事が可能となっている。
高い収束率に照準を合わせた分、拡散率の高い破壊力(破壊面積)の高いビームの射出は不可能となっており、この意味では本来ヴェスバーの利点であった、1モジュールでの複数任務対応能力を捨てた事になるが、コロニーを一撃で撃ち抜く貫通力と、地表付近から衛星軌道を狙撃可能な長射程を手に入れている。よって、Iフィールド・ビームバリアを多重に纏ったファントムですら、ニードル・ヴェスバー一基の通常出力弾を受け流すのが精一杯であった。
機体構造としては、脚部にほとんどの『砲撃機能』を集中・積載しており、脚部に内蔵したヴェスバーに、大腿部に積載したジェネレーターを直結している(両脚部にジェネレーターを搭載した設計はΖガンダムに近い面もある)。さらに膝下全体をビームを収束させる為のバレルとする事で、長射程ビームライフルを内蔵しながらも小型・単純な機構を両立させている。しかしこの代償として、脚部は重力下での歩行性能が著しく低く、「無いに等しい」と評されるレベルとなった。
なお、MS形態時の両腕には攻防一体武器であるビーム・ファンを装備し、脚部のヴェスバー砲口からビームサーベルを発生させる事も可能であるものの、前述の歩行機能の低さから特に1G環境下における格闘戦能力はそれほど高くはない。
また、ニードル・ヴェスバーそのものの欠点としては、高出力のビームを極限まで収束させるバレル部への負担が大きく、短時間に連続で使用した場合は砲身がその熱に耐え切れず融解してしまう事が挙げられる(このため、二基あるヴェスバーは交互での使用を前提としている)。
――以上が本機のスペックであるが、あらゆる長距離レーダーが無効化されるミノフスキー粒子下(例として、宇宙世紀0096年において開発された超々ハイコスト機・ユニコーンガンダムでさえ、センサー有効半径は僅か22,000m)での機動戦闘において、『命中させる事のできない長射程ビーム兵器を搭載した機体』の開発例は枚挙にいとまがなく、過去、それら機体のいずれもが大きな戦果を挙げる事無く消えていった。
当然ながらバイラリナも同じ道を辿るはずであったが、パイロットであるコーシャが、地表付近から衛星軌道上のザンネックにニードル・ヴェスバーを連続命中させるという、神業と評するしかない狙撃能力を有していたため、本機の価値は180度反転。戦略級の機能を有すると言っても過言ではない有用性を示す事となった。
上記の狙撃は、ザンネックがテストパイロットの操縦によりほぼ静止していた事と、ビームの直進性により狙撃元の位置特定が不可能ではなかったとは言え、モニターに全く映っていない衛星軌道(最低でも地表から300,000m)のマト(18mサイズ)に何度も直撃を与えた事になり、ザンネックの撃墜後の状況も把握できていたことから、コーシャの特殊能力・狙撃技量はかのアムロ・レイすら大きく上回っていたといっても過言ではない。
ただし、サイド4の資源コロニー『ミート・オブ・トゥーン』におけるファントムとの戦闘において、市街地への被害、さらにはコロニー外壁に穴を空けるという、スペースノイドから「鬼畜」の烙印を押される最低最悪の戦闘行為を躊躇いなく実行している事から、彼女自身は一面では完全なる狂人である。
最終的にバイラリナは、特殊なMSに敗北しているが、これは宇宙細菌の確保という任務的制約があったためであり、キゾ艦隊の補足範囲外から一方的に攻撃していれば、全くの無傷で彼らを撃滅する事が容易に可能であった。
因みに本機も他機種と同様にフェイス展開による放熱に対応している、が、上記の通り主な発熱部は脚部であるため、離れた位置にある頭部の変形展開機構から放熱させる理由は謎である。
ちなみに木星にヴェスバーの技術がある理由は0116年に木星船団の関係者がサナリィからデータを失敬したからだと思われる。
バリエーション
クレイン
「DAST」に登場した、傭兵カグヤ・シラトリが搭乗する可変MS。バイラリナの基本フレームにザンスカール製の機体等のパーツを取り付けたミキシングビルドの機体。
可変機構は健在だが、部品の欠損や設計資料の不足により変形する向きが上下逆と、MA形態時のバランスが悪化している。
主武装のニードル・ヴェスパーもエネルギー伝達の不具合でMA形態での使用に限定され、収束率も70%ほどに低下している。
カグヤがムーン・ムーンに帰還した際に、フルチューンされ、MS形態でもニードル・ヴェスパーの使用が可能になるなど火力が向上している。
バイラリナ・マス
「DAST」に登場したバイラリナの量産モデル。ビーム兵器が希少化した時代背景から有用とされ劇中では3機が確認された。製作者の談によれば性能は原型機の75%をキープ、さらにサイコミュによる無人制御機能が追加されパイロット次第では同時に3機までの制御が可能とされるが戦闘機動が取れるほど複雑な動きができるかは未確認である。
頭部装甲とカラーリングが変更されているが性能的な違いはない。