4000形蒸気機関車
よんせんがたじょうききかんしゃ
4000型蒸気機関車は、ユニオン・パシフィック鉄道が1941年から1945年にかけて製作した、車軸配置4-8-8-4の貨物用テンダー機関車である。BigBoyという愛称と、機関車の総ホイールべ―スにおいて世界最大の蒸気機関車であることで知られる。
1936年、ユニオンパシフィック鉄道は貨物列車の高速化のため車軸配置4-6-6-4の「チャレンジャー」と呼ばれる関節式機関車を導入したが、オグデン-ワサッチ山脈間の急勾配では重連運転か補機の必要があり、その付け替えは列車の高速化を阻害していた。この問題の解消のためユニオンパシフィック鉄道は新型機関車を計画。3300トンの長編成貨物列車を牽いて11.4‰の勾配を超え、平坦線を100km/hで走行する強力な機関車を求めた。設計にはチャレンジャーが参考にされ、単式関節式、二軸の先従台車など、基本的なところを踏襲しつつ、動軸を6つから8つに増やすことで動輪上重量を増加させたり、ボイラーを拡大したりすることで、要求の達成を目指した。
足回り
1727mmの動輪を4軸備えた走り装置を2つ、計8軸の動軸を備える。前部のものはカーブに合わせて首を振るが、後部のものはボイラと固定されている。これは関節式機関車の一形式であるマレー式に酷似しているが、厳密には異なり、マレー式は後部シリンダで膨張したあとの低圧蒸気を前部シリンダで使いまわす複式なのに対して、本形式の場合は前後に高圧蒸気を送り込む単式である。単式は複式のように前部シリンダが肥大化する(低圧側のシリンダは高圧側の2.25倍の容量を持つよう設計される)ことがないため、機関車の大型・高速化に適しており、輸送量が非常に多いアメリカの鉄道ではよく用いられた形式である。本形式の場合はこれに加えて前部台車に水平方向のみの移動を許すことで、高速時の安定性をさらに増している。
ボイラ
最大外径2707mmの巨大なボイラを備える。使用圧力が21kg/cm2と高いため、板厚は34mmもある。低品質なワイオミング産の石炭を燃やすため火格子面積は14m2ときわめて大きくとられ、投炭はもちろん自動給炭機が行い、一時間に11tもの石炭を燃焼させた。
本形式の火室の全長は燃焼室を併せると煙管よりも長い。これは単に火室の幅が限界で面積を確保するには前に伸ばすしかなかったのと、動輪上に置いたため火室がきわめて浅くなり、それをカバーするため燃焼室を2844mmもとったのが原因である。この細長い火室のため、勾配で火室天井が水面から出るのを防ぐため火室天井を下げることとなり、その結果、火室管板がほぼ半円形となり、煙管取り付け面積を大きく減じることとなった。もともとボイラ径が火床面積に比べて小さく、煙管が6705mmと長いのも合わさり、強大な通風力を要したはずである。
またこれらは伝熱面積の大幅な低下を招き、本機の総伝熱面積は533m2と火床面積に対してかなり小さい。比較例として、ほぼ同等の動輪上重量を持つ単式関節式機関車のH-8形は火床面積が12.5m2と本形式に比べて小さいにもかかわらず、総伝熱面積は673m2であった。これは火室を動輪上に置かず、3軸の従輪で支えて深くとったためである。しかし、このような策を取ることが出来たのはH-8形が軸重を39t以上として動軸数を6軸に収め煙管長を7000mmに抑えられたたからで、本形式の場合は動軸数は8軸もあり、火室を動輪上に置かなければ煙管長は鉄道の定めた限界である6705mmを超過してしまう。燃焼室をさらに伸ばす手もあるが、やりすぎれば過熱温度が低下するため限界がある。煙室を後ろに伸ばしても、重量バランスが崩壊して勾配で前部エンジンを空転させる羽目になる。
1941年、オグデン-グリーンリバー間に配備された本形式は11.4‰の勾配を走破し、設計の目的を無事に達成した。1943年には性能試験のため測定車を牽いてオグデン-エバンストン間の122.2kmを数回走行し、最大で6290馬力を発揮することがわかった。また本機は11.4‰で3300トンを牽引するよう設計されていたが、試験では3800トンを牽引して平均29~32km/hで走行し、想定を上回る高性能を実証した。乗務員からも扱いやすいと評され、本形式の牽引重量は長期の運用の中で数回増加した。戦後、石炭の価格上昇と人件費の高騰、そしてディーゼル機関車の台頭から線路を追われ、1959年7月21日の今朝に運行を終了した。