概要
アブサロムとは、ジョジョ第三部の小説『砂漠発地獄(ヘルシティ)行き』に登場するオリジナルのスタンド使いである。
妹のミカルとともに、砂漠で難儀しているジョースター一行を襲った。
スタンド「凶悪連結器(サタニック・カプラー)」のスタンド使い。
ンドゥールとの戦いの後、砂漠を着の身着のままで彷徨う羽目になったジョースター一行が、『実体のある奇妙な蜃気楼』を目撃し、更には砂嵐に巻き込まれ、熱と乾きと砂に難儀していたところに、鉄道および列車とともに出現。列車内部にジョースター一行を招き入れる。
ヘルシティまで向かい、そこからアスワン行きの列車と接続すると、電光掲示板に表示。全員を内部に乗せる。
が、途中で本性を現し、自身がDIOの命でジョースターたちを捕えた事を口走り、妹・ミカルのスタンド「闇の蜃気楼(ダーク・ミラージュ)」の能力とともにジョースターたちに精神攻撃を行った。
後に承太郎とポルナレフ、そして(承太郎に連れられた)イギーに脱出されてしまい、改めて再戦する事に。
その際に、捕らえたままのジョセフ、アブドゥル、花京院は生かして、承太郎を殺した後に殺す事を公言し、水と食料を与えていた。
再戦時、ミカルの「闇の蜃気楼」が作り出した「実体のある蜃気楼の街」の内部に入り込み、そこで承太郎と交戦。
進化させ強化した「凶悪連結器」の能力で、承太郎を苦戦させ負傷させる。
しかし承太郎の機転で、内部のジョースターたちに逃げられ、更には「列車の特性」を用いた方法で一時的に走行を止められた後、承太郎のスタープラチナのラッシュを受けて敗北。
『蜃気楼の街』が消え、アブサロム自身も負傷した状態で追い詰められるも、大気の塵と合体し、(「恋人」時のように)超小型の列車と化してアブドゥルの体内に入り込む。しかしそれすらも、花京院と承太郎の協力プレイで発見され、止めを指されてしまった。
しかし、命までは奪われず(再起不能。全治六か月)、承太郎から「一度だけ、てめえに和解のチャンスをやる」と言われ、村人たちとともにやり直す事を示唆された。
過去
承太郎とポルナレフは、近くのオアシスの村人たちに助けられた際に、村野長老からアブサロムの過去を聞く。
それによると、幼少期から好奇心が強く、蜃気楼が好きで、妹のミカルとも仲が良い少年だった。
そして、蜃気楼に映る「異国の文明」、都市や工場や巨大な船舶などに心惹かれ、砂漠の果ての文明社会が「幸福の地」「魔法の国」と崇拝するまでになる。その中で特に「鉄道列車」に心惹かれ、文明社会の象徴としてとらえていた。
そして、崇拝が過ぎるあまりに、村の原始的な生活を恥ずべきものと思うように。
しかし、劇中から四年前に、両親とともにカイロへと赴いた際。乗っていたバスが鉄道列車に衝突し、両親は即死。ミカルも喉を切り裂かれ、以後声が出なくなってしまった。
以後、アブサロムは文明世界を「悪魔の都」と、憎悪するように。
しかし、事故から半年後。村に戻って来た時に彼は、「カイロで出会った神・DIOに忠誠を誓う」と村の皆に伝え、そのまま去っていき、現在に至っている、との事。
長老を含む村人たちは、DIOの事をアブサロムの口から聞いているだけで、「アブサロムが頭の中で勝手に作ったもの」、さもなくば「とんでもない大ボラ吹き」ととらえている。
しかし長老は同時に、アブサロムがDIOにすがり、心の安らぎを得ている事、心の支えになっている事から、DIOに対し感謝もしている。
長老と村人たちも、アブサロムとミカルに対しては敵対も排除もしていない。二人が、承太郎たちに叩きのめされたところにやって来た際に、
「よくも大切なわしの村の若者を、『わしらの』アブサロムとミカルをこんな目に合わせてくれたな!」と、二人を救わんとした。
スタンド「凶悪連結器(サタニック・カプラー)」
『鉄道列車』のスタンド。
スクラップと合体した物質融合型のスタンドで、本人曰く『取りようによっては、世界最大のオリジナル鉄道模型(のスタンド)』。線路もまたスタンドの一部で、こちらは『砂漠の砂そのものを線路に変化』させている。
アブサロムの脳内にある『鉄道列車』に関するデータを反映し、スタンドそのものも変化する。また、他者の脳内から『鉄道列車』のデータ(記憶)を手に入れる事で、列車自体をアップデートさせる事が可能。
ただし、文明から隔絶された砂漠で生活しているために、新たなデータを得る事がなかなかできず、苦労しているらしい。
アブサロム自身は、列車内の運転席に入っている。
外部からの攻撃は列車の外装が防ぐが、他者や敵が列車の客車内に入ってしまったら、閉じ込められてしまい、更に「スタンドを含む攻撃が、ゴムの様に外へ膨らんだ内壁により、衝撃が受け流されてしまう」。
この時に、エメラルドスプラッシュで攻撃しても、反動で跳ね返されて逆にジョースター一行がダメージを食らってしまった。
また、客車内には無数の触手を伸ばす事で、内部の人間に巻きつき床に固定させる事が可能。さらに、内装を透明化する事で、外の蜃気楼の景色を強制的に見せる事も可能である。
列車の外の敵に対しては、列車を彷彿とさせるパワーとスピードを用いた突進攻撃を行う。走る際に起こす衝撃波により、容易に車体に接近できず、承太郎は苦戦した。
しかし、列車を再現したスタンドゆえに、各部の構造もまた列車のそれを踏襲しており、その点が弱点ともなっている。
上述の通り、データを得る事でその『スタンド像』もアップデートしていく。以下、詳細。
第一形態
最初に、砂嵐に難儀するジョースター一行の前に現れた形態。
ディーゼル機関車の形状だが、後述する様々な年代の機器がごっちゃになっているため、承太郎たちは最初、「ちぐはぐ」な列車という印象を覚えていた。
車体の前半分は1960年代製の機関車(EMD社のDP35に似ている)、後ろ半分は客車という形状で、ドアには80年代のテクノロジーであるLED製の電光メッセージボードが内蔵されている。
内部は粗末な木製のベンチシートと、板張りの床に壁、はめごろしの窓など、第二次大戦前、1930年代の列車のそれに似ている。
蒸し暑く、臭いもこもっており、振動も酷かった。しかしそれらに文句を言ったジョセフとポルナレフにより、エアコンがいきなり現れ作動し、車体の揺れも(空気バネやコイルスプリングが作動す、)おさまった。
第二形態
蜃気楼から精神的にダメージを負ったジョースター一行の脳内から、アブサロムが得たデータによりアップデートした姿。
ベンチシートが独立式のソファシートに変化。板張りの壁や天井が硬質プラスチックに変化。
天井灯が蛍光灯になり、車窓面積も大型化。
外観も、一体化していた機関車と客車が分離し独立。二両編成の列車に変化。
台車はダイナミックブレーキと空気バネ採用の最新式に、ヘッドライトはハロゲンランプ使用のダブルビームに。
更に、運転席舌のフロントスカートからは「一対のノコギリ状の角」、ボディの各部からは「鋭利なトゲ」が伸びている。これはイギー=犬からデータを採取したためらしく、犬にとっての「列車のイメージ」を反映させたため。このせいで「ハリネズミとクワガタムシ」を合わせたような形状になっている。
第三形態
承太郎との再戦のために行った、最後のメタモルフォーゼ。
SNCF(フランス国鉄)の超高速列車TGV-Aに酷似した銀色の流線形の車体になっていたが、クワガタ状の一対の角とボディ各所からのトゲはそのまま残されている。
新幹線並みの超高速で疾走するのみならず、疾走時の「衝撃波」とトゲとで、承太郎を苦戦させた。
さらに、「実体のある蜃気楼の街」内部では、角を振動させてビルの壁などを容易に破壊し、神出鬼没に出現しては攻撃が可能に。
しかし、列車そのものが持つ構造を利用した策で、動きを止められ、それが元で敗れる。
最終形態
重傷を負いつつも、最後の悪あがきとしてアブサロムが『大気中の塵や埃と合体』させた、ミクロサイズの『凶悪連結器』。そのビジョンは、『古ぼけた、みすぼらしい蒸気機関車』となっている。
血管内に入り込み、心臓に辿り着いてから自爆し、一人ずつ殺害する事を狙っていた。自身の精神波が途絶えたら、スタンドの列車のボイラーが爆破するように命じているため、うかつに本体への攻撃も出来ない
当初はアブドゥルの体内に入り込んでいたが、同じくミクロ化したハイエロファントグリーンとスタープラチナにより、スタンドそのものを攻撃され、再起不能に陥る。
関連項目
ミカル:実妹。スタンド「闇の蜃気楼(ダーク・ミラージュ)」を用い、兄の戦いをサポートした。