概要
ヴィッカース造船によって設計されていたが、BAEが同社を買収したことにより計画も引き継がれ、BAEによって開発・製造されることとなったものである。運用開始は2005年から。
軽量化のために構造を徹底的に簡略化しており、専用の牽引索を持たず、砲口にフックを引っ掛け砲身を引っ張って牽引するという大胆な構造になった。また全高を低減し、更にはチタン合金を多用している。同口径の榴弾砲が最低でも7t以上、10tを超える製品もある中で、本砲の重量は4.2tと非常に小さく、UH-60汎用ヘリでも吊り下げることが可能になっている。
しかしながら代償としてコストが非常に高くなっており、安めの自走砲が買えるぐらいの値段になっている。
その割に使い勝手は悪く、他の製品の多くがエンジンを搭載し短距離の自走能力を有しているのに対し、M777は一切動力を搭載していない。
また軽すぎるために滑り止めの駐鋤が利きにくいようで、反動で滑っている事例も散見される。
運用
山岳地帯だけあって自走砲の展開やトラックによる牽引が難しく、空輸に便利なM777は重宝されており、実際の配備もアフガニスタン駐屯舞台から優先して行われた。
山嶺を超えるために垂直と見紛うような超高仰角での射撃もしばしば行われている。
- 対ISIL作戦
イラク軍に配備されたものが活躍した。
中東では砂嵐によってしばしば空爆が困難な状態となるため、天候を問わず攻撃が可能な榴弾砲は重宝されている。
正規戦に於ける牽引砲の限界を露呈した事例となった。
M777の唯一の売りである空中機動力はウクライナ程度の航空戦力では宝の持ち腐れであり、むしろ自走能力が皆無であるために進入・撤収に時間がかかる点が仇となり、同国に供与された大型火砲としては突出した損耗率を記録する羽目になっている。