喪黒福次郎
もぐろふくじろう
「笑ゥせぇるすまん」の番外編「喪黒福次郎の仕事」の主人公。喪黒福造の弟。
『わたしの仕事は人をたすけることです。
それもふとしたことから人生の落とし穴へおちこんだ人へ救いの手をさしのべ落とし穴からだしてあげるのが仕事です。』
『ではこれからわたしの仕事の実例をお目にかけましょう…』
概要
「笑ゥせぇるすまん」のスピンオフ作品「喪黒福次郎の仕事」という作品にて登場する。
喪黒福造の実の弟だが、人を陥れる仕事をしている(と福次郎本人が評している)兄とは対照的に、困っている人を本当に助ける仕事をしている真っ当な男。
前述の通り兄である福造の行為も「人の欲望を駆り立て破滅に追い込む」「魔性の行為をはたらいてきた」と断言、批判している。
外見
恰幅がよく常に笑顔なあたりは福造と似ているが、恵比寿様や大黒天様をそのままキャラクターにしてしまったかのような、いかにも縁起の良い顔立ちが印象的。そのため兄とは違い人相はかなり良い。
スーツは紫色で、背中には小さく「福」の文字の判子マークが刻まれている。蝶ネクタイが特徴的。
人物像・能力
- 道を踏み外しかけた人をフォローしてあげたり、頑張ったのに追い詰められてしまった人に手を差し伸べたりするのはもちろん、再三の忠告を無視して破滅しかけた人も見捨てたり不幸にする事もなく根気強く対応し(そもそも忠告を完全に無視しても最後には困難を回避したり、幸せになるように手を回している)、時には自身の救済対象者に不利益を与えていた言わば「敵」とも言える人物に対しても、ついでに人生が上手くいくように導くこともあるなど、まぶしいぐらいに真人間。
- ただし、顧客(?)の自業自得や彼のやりすぎによって空回りしてしまい結局不幸にさせてしまう事も稀にある(その後もフォローしているかは不明)。だが、その場合も取り返しのつかないような事態にはなっていない。
- 大概のものは用意してしまえたり、いかなることでも器用にこなしてしまったりする謎の器用さも福造と同様である。また、兄の「ドーン!」に似た不思議な力も持っている。作中では暗示をかけたり、「ドダーン!」や「ズーン!!」の掛け声でパワーを発揮しているが、兄とは違ってあまり多用せずなるべく自力で物事を解決している。
- セールスマンとは名乗っておらず、職業ははっきりしない。作中で顧客となる相手には「揉め事をまとめる仕事をしている」「ボランティアでトラブル処理をしている」と説明しており、現役の私服警官、あるいは警察協力者のような振る舞いを見せたこともある。警察手帳を所有しているが本物かは不明。
- 心中やプライベートが謎に満ちていた兄とは違って、心理描写が多く、個人的な趣味や余暇を楽しんでいる描写が多い。よく心中で相手の身分や人間関係を推理していたり、1人で行きつけの町中華や居酒屋に赴き、心の中で解説しながら食事を楽しんでいる描写が見られる。趣味に関しては作中では電車内を初めとした様々な場所での人間観察、飛行機旅行や高級高層ホテルでの宿泊や食事等を楽しんでいる様子が描かれ、兄と同じくゴルフに精通しているような描写もあり、ある話ではフェアプレーの大切さを熱く語っていた。
- 高層ホテルの窓から摩天楼を見下ろして優越感に浸る、赤提灯の光を見て生きていくことのしがらみを忘れるような気分になるなど人間臭い一面も見せた。
- 最もこうしたプライベート中も毎回目をつけた相手の救済に走るためこういった趣味の目的は困っている人を探す事と人助けであると思われどこまでも善良である。
- 喫煙者であり葉巻とオイルライターを愛用している。副流煙を気にせず相手に吹きかける等、意外なことに喫煙マナーは悪い。また、不倫を肯定するような素振りを見せたり、男らしさを暴力的なものと捉えている等、悪い意味で昭和的な価値観を持っている節がある(連載時期が昭和なので仕方ない所はあるが)。
- 登場時に彼が兄について言及した以外には、彼らの交流はおろか、互いの存在に関する言及はどちらの作品でも一切描かれていない。スタンスが真逆であることや1話での批判的な解説から兄の事は良く思っておらず、対立関係であるとも考えられるが実際の兄弟仲は不明。二次創作では仲の良い兄弟として描かれることが多い。
余談
作者である藤子不二雄A先生は『笑ゥせぇるすまん』を書いている時に「どうやって客を陥れようかという考えにばかり陥ってしまい、自分自身が喪黒福造になっていくような気がした」という。
そんな時、困っている人を助ける福次郎のキャラクターが生まれた。氏は本作を「心と体にとてもいい仕事だった」と気に入っていたとか。
シリーズは連載していた『カピタン』が廃刊になってしまった為残念ながらコミック1巻分しか登場しない。
奇しくも最終話となった第12話で顧客となったのは、唯一連載をしていたコミックが休刊となり仕事を失ってしまった漫画家であった。