概要
全長5m(7m表記が一般的だが、これは長く見積もりすぎである)、体重2トンほどの中型の鎧竜。
属名の意味は、モンゴル語で「美しいもの」である。多数の皮骨板で飾られた本種にふさわしい学名であろう(実は地名らしいが)。波打つような巨大なスパイク状の皮骨板と、「2連ハンマー」、アンキロサウルス科でも屈指の重装甲が魅力の鎧竜であった。・・・はずだった。
アイデンティティ崩壊
サイカニアと言えば、全身骨格がたびたびイベントなどで展示されるため、目にした方も少なくないだろう。一般的なサイカニアのイメージは、すべてこの骨格(MPC 100/1305)に基づいている。
ところで、サイカニアの模式標本(MPC 100/151)は、完全な頭骨と、上半身から成っている。MPC 100/1305はほぼ完全な骨格だったが、頭骨だけそっくり欠けていたため、MPC 100/151から流用して復元骨格が製作された。
ところが、つい最近になって衝撃的な事実が発表された。MPC 100/151とMPC 100/1305の腕部の形態が異なっており、しかも発見された場所も時代も別物だったのである。
よって、「サイカニアの全身骨格」は頭部を除いてサイカニアではないことがほぼ確実となり、「アンキロサウルス科の未定種ないしピナコサウルスっぽいなにか」となってしまったのだった。
人々が慣れ親しんだサイカニアは、サイカニアではない別の恐竜だったのである。