➩ムーンキャンサーの表記ゆれ。
奏章Ⅲ後編終盤のネタバレを含みます。
「私の滅亡案もみんなの勝利で失敗に終わった。もう他に人類を滅亡させるものはない」
「なら、本当の滅亡がやってくる。ここまでずっと先延ばしにしていた月の終わり」
「濾過人理補正現象(ろかじんりほせいげんしょう) ────ムーン・キャンサーがやってくる」
「人類の集合的無意識が澱み、あふれ出したもの。人類には抗えない同調意識」
「『永遠に霊長でありたい』『頂点のままであるべき』という理念」
「科学が発達すればするほど、人間が賢くなればなるほど、ムーン・キャンサーは強大になる」
「人類では振り払えない『後ろから掴む手』になる」
「なんて事だ」「そんな事が」「こんな筈が」「そんな筈が」
「手放せない」「譲れない」「諦められない」「俺たちは」「私たちは」「まだ」「まだ」
「これほど努力した」「これほど苦しんだ」「なのに」「なのに」「なぜ」「何故」
「私たちが 置いて行かれなければならないのか」
「認めない」「渡さない」「行かせない」「許さない」「忘れない」「逃がさない」
「俺たちは」「私たちは」「我々は」「いつまでも」「これからも」
「特別の」「特別な」「特別に」「特別で」「特別が」「特別を、「特別、「特別、特別特別特別特別-
Moon Rise Obsession
新 霊 長 継 続 戦
概要
奏章Ⅲ『新霊長後継戦 アーキタイプ・インセプション』のラスボス。
BBドバイの語った人類の美しさの対岸にあるもの。
人類の欠点、知性体の持つ攻撃性の究極。
先行くものの足を引っ張り、先頭の頭を掴み、押さえつけて先に行かせない同調圧力。
ずっと先延ばしにされていた世界の終わり。
その正体はAIの早期発展によって人類がAI化したとある並行世界の遠未来にて、人類の後継として生み出された次代の霊長"アーキタイプ"(アーキタイプはその星の最終的な霊長と同義であり、その霊長である人間がアーキタイプを作るという事は次世代の霊長を作るという事であり、次世代のアーキタイプが生まれたのなら、旧霊長である人間は全て無価値になる。いわば学術的な「世界を滅ぼす研究」である)を認めることができなかった人類たちの集合的無意識の成れの果て。
アーキタイプを宇宙に放流する=人類は役目を次代に継承し終わる、という既定路線に背いたこと(白野曰く価値がないどころか悪しき前例ですらあると言う)で、この世界は人理に見放され西暦2999年の時点で剪定寸前の状態にあった。
キアラはこれらについて、(準備も覚悟も無いのに)作ってはならないものを作ってしまった、(霊長として)犯してはならない罪を犯した、と評している。
この世界の人類を見守ってきたラストスロットことBBドバイはこれに抗うため「人類ラスボス決定戦」を計画。別世界のノウム・カルデアとこの世界を強引に繋げ、剪定の猶予を延長しつつ解決を試みたが、結局どれも無駄に終わり(男性の白野からはそもそも人類ラスボス決定戦がよくない、根本的な解決になってないと駄目出しを言っている)、彼女自身の敗北をもって遂にムーン・キャンサーが襲来した。
プロフィール
真名 | ムーン・キャンサー(月の暈) |
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クラス | ムーンキャンサー |
出典 | 奏章Ⅲ |
地域 | オールド・ドバイ |
属性 | 人属性、人類の脅威、超巨大 |
月の暈(ムーン・キャンサー)という名称だが、この名称で呼ばれたのは一度きりであり、全編通して“ムーン・キャンサー”という呼称で呼ばれている。
その見た目は蚕のような白い光の糸が寄り合った、巨大で朧げな白い輪。劇中BBによって存在の解像度が上げられた事で、輪の下に何千メートルもある白い影の巨人が姿を現した。その姿を一言で言い表すなら人型のピクトグラム。
その巨大さ故に戦闘時には、自陣のサーヴァント達が豆粒大と言うのも生易しいレベルで小さく描写される。何なら途中から全く見えなくなる(スキル使用時、攻撃時はフォーカスされる)。
ゲージ毎の描写は以下のようになる。
1ゲージ目 | 白いオーラに包まれているような状態。自陣キャラのサイズはケルヌンノス戦での大きさぐらい。 |
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2ゲージ目 | 巨人の肩から胸部までが見える。自陣キャラのサイズは豆粒大をさらに小さくしたレベル。 |
3ゲージ目 | 巨人の上半身全体が見える。ここからは自陣キャラが全く見えなくなる。 |
4ゲージ目(最終) | 巨人の全体像……どころか月の球面も確認できる。また、巨人を取り囲む巨大な白輪も見える。 |
能力
前提として、抑止力にも近しい現象そのものなので、本来なら人間はおろか全力の神霊ですらどのような攻撃を行なっても効かず、手出しできる存在ではない。
像としての姿こそ見えているが、距離という概念も本来は無い。
そして発現しただけで人間の認識を混濁させ、意識を低下させ、最終的には生命活動の停止、またはがむしゃらに世界滅亡だけを目指す傀儡になり果てる。
タチの悪いことに、この意識混濁は"精神・知能の上限を低下させる"ものなので、どんな武力や知恵や精神力の持ち主でも"人間"である限り抗うことはできず、人間を由来とするサーヴァントも例外ではない。
ムーン・キャンサーには段階があり
- いまだ霊長の座である事を誇示する世界の変異。テクスチャの簡易化。地球航海図。
- 地球航海図上にいる人類の思考停止、知能低下。
- そして全人類のムーンキャンサー化。
上記のテクスチャの簡易化という光体が持つ事象収納の亜種とも言える能力を持っており、空間における情報量を極限まで軽減させて簡単に壊せるようにできる。例えるなら1で受けるダメージが、簡易化されたテクスチャに対しては1億になる。
逆に言えば神霊やAIなどの霊長・人類に含まれない存在は一切影響を受けず、また固有結界などで違うテクスチャに避難すれば、短時間だが浸食を抑える事は可能。
保有スキル
阻害 | 毎ターン:ランダムの敵単体にコマンドカード1枚封印状態(1T)を付与 |
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アナウンス | 自身に必中を付与(3T)敵全体に防御力ダウン(3T)を付与 |
予定報復 | 自身がチャージ減少や行動不能効果を受けた時、チャージ2増加+弱体解除(1個)する状態を付与(3T/解除不可)※1ブレイク以降使用 |
公正世論 | 自身のEX攻撃以外に対する耐性アップ(4回/解除不可)※2ブレイク以降使用 |
インサイダームーン | 自身にムーンキャンサークラス以外から攻撃を受けた時、自身のHPを1万5千回復する状態を付与(1T/解除不可)※3ブレイク以降使用 |
スーパーエラー | 自身に確率回避を付与(3T/解除不可)※3ブレイク以降使用 |
ブレイク時
思考低下 | 【ブレイク1行動】チャージMAX,弱体解除,最大HPアップ(永続/解除不可),敵全体の防御力ダウン(3T),チャージ減少耐性アップ(攻撃後即解除),特殊耐性アップ(攻撃後即解除),弱体無効(攻撃後即解除) |
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知能減退 | 【ブレイク2行動】チャージMAX,弱体解除,最大HPアップ(永続/解除不可),敵全体のクリティカル威力ダウン(3T),チャージ減少耐性アップ(攻撃後即解除),特殊耐性アップ(攻撃後即解除),弱体無効(攻撃後即解除) |
月変万化 | 【ブレイク3行動】チャージMAX,弱体解除,最大HPアップ(永続/解除不可),ガッツ1回を付与(永続/HP62万回復/解除不可),[月の暈]特攻状態を付与(10T),敵全体の宝具威力ダウン(3T),敵全体に[月の暈]状態(10T/解除不可)を付与,※毎ターンNP10%減少+HP500減少+NP獲得量ダウン(5T)+スター発生率ダウン(5T),強化無効(5T/1回/1つまで),チャージ減少耐性アップ(攻撃後即解除),特殊耐性アップ(攻撃後即解除),弱体無効(攻撃後即解除) |
宝具/チャージ行動
- P.S
敵全体に強力な攻撃(HP1は残る)敵全体に防御力ダウンを付与(5T)
- 公正世界仮説(just - world hypothesis)
【ブレイク1回目】
敵全体に強力な攻撃(HP1は残る)敵全体に攻撃力ダウンを付与(5T)
- 公正世界誤謬(just - world fallacy)
【ブレイク2回目】
敵全体に強力な攻撃(HP1は残る)敵全体のNPを100%減少
- 公正世界信念(belief in a just world)
【ブレイク3回目】
敵全体に強力な攻撃(HP1は残る)敵全体の強化状態を解除
ゴールデンBBの開始時強化を解除
顛末
本来であれば概念に近い、質量を持たない非物質的存在であったが、アンソニーの説得で集結したムーン・ドバイの住人たちによる防壁で時間稼ぎをしている間、誕生したゴールデンBBによって物理攻撃が可能になるよう調整された。
結果、並行世界からの来訪者であるカルデアのマスターと月の王たちの奮戦によって討滅。アーキタイプは無事に宙へと放たれ人理定礎値も回復、世界は剪定を免れた。
最後の悪足掻きとして唯一純粋な人類である主人公を取り込んで一方的に語りかけ、「自己の全てを使い切って、見ず知らずの競争相手を先に行かせる人間などいるわけがない」と断じる。
しかし、そんな人間達を知っている主人公はムーン・キャンサー達を否定するが、脱出口が見えても自分一人の正しさで数千年の歴史を踏み躙る覚悟を持てず、足を動かせない。
だがそこに人類の完結を是正する"人類代表"がもう一人顕れ、背を押された主人公は前進を開始。尚も語りかける声が響くが、その存在と気持ちが間違ってるとは言えない事を指摘された上で勝利を宣言され、今度こそ"ヒトが克服できなかったモノ"は消滅した。
余談
今を生きる『人類』が築く物語であるTYPE-MOON作品内の世界観において、これ以上ない程の無法と言える、どんな能力・知能・強運・精神を持っていても『人類』である限り絶対に勝てない存在。主人公やマシュは元より、白野やシエルですら成す術がなかった。
BBコスモが"勝たせる気のない人類悪"と称した通り、本来なら人類自身がコレを生みだした時点でバッドエンドと言える程の潜在的厄ネタである。
一方でその根底にあるのは「特別でいたい」「自分より優れたものを認められない」「自分だけ置いていかれるのは嫌だ」という人間であれば誰もが大なり小なり抱える気持ちであり、主人公もその存在を否定しきれなかった。
なおムーン・キャンサーの使う「公正世界仮説」とは、人間の行いに対して公正な結果がかえってくる認知バイアスを指す社会心理学の用語である。
この認知バイアスは努力の原動力となるのだが、時として"努力でもどうしようもない事態"でも過度に固執し、因果関係をこじつけて"良い結果にならなかったのは良い行いをしなかったからだ"と失敗者を悪としてしまう問題を引き起こすこともある。
似た言語として、公正世界誤謬・公正世界信念などがあるが、劇中では名前が変わっていくことについて、
- 「公正世界を信じてきた(仮説)」
- 「信じたことが間違いと気づいた(誤謬)」
- 「間違いと気づいたのに認められない(信念)」
というムーン・キャンサーの集合的無意識下での心理を反映しているのではないかという指摘がある。
岸波白野が元いた世界では、こちら程酷くないものの、アムネジア・シンドロームと名付けられた濾過人理補正現象が蔓延していた。この病気は自己と他人の境界が曖昧になり、最終的に記憶の認識さえ不可能になり生命活動を停止してしまう。幸いこちらはある一人の医者によって治療法が見つけられている。
また、本章はそれまでの異聞帯では叶わなかった"剪定寸前の世界を救う"という人理保障機関の面目躍如を、結果的にとは言え果たした章でもある。