燃える物があるならいい
残る物があるならまだマシだ
けれどこの星はその残滓すら手放した
概要
Fate/GrandOrder第2部「Cosmos in the Lostbelt」の開始に伴い、人理焼却を乗り越え、特使五柱の計画を阻止し未来を取り戻したはずの世界は、突如地上諸共白紙化され、約3ヶ月という短期間に滅亡してしまった。
そしてそれと入れ替わる様にして、『何かしらの巨大な事件などを契機に、全く別の歴史を歩んだ世界』(ようするにパラレルワールド・並行世界・ifと呼ばれる世界)が地球上の各所へと出現した。
それが「異聞帯(ロストベルト/いぶんたい)」であり、合計7箇所発生している。
これまでに紡がれてきた人類史を「汎人類史」と呼び、その過程で切り捨てられ、また並行世界としてさえ分枝を許されず足切りされた「有り得ざる歴史の断片」。
汎人類史に組織された歴史を「勝者」とするなら、異聞帯は汎人類史に編纂されなかった「敗者」「歴史に敗北した歴史」ともいわれる。
この大事件を人理再編、人理漂白、地球白紙化と呼ぶ。
世界観について
数多くの並行世界がある中で、次々と増えていく並行世界全てを存在させるエネルギーはTYPE-MOON世界の宇宙には存在しない。地球レベルの文明では、それが100年を超えると太陽系は破裂してしまうとされている。これを魔術世界では「剪定事象」と呼ぶ。
そこで同世界観では100年単位で一度編纂し、「少なくともあと100年は続けられる」と判断した善い流れの世界だけを選び「編纂事象(正史)」として存続させ、悪い流れの世界を「剪定事象」として、樹を育てる時、不要な枝は切り落とすと同じように未来を閉ざし切り捨てるシステムの存在が『Fate/EXTELLA』にて明かされている。基本軸である『幹』から離れすぎた世界はたとえ理想郷であろうと『打ち切り』になる。この機能がある事で、我々の宇宙は今も問題なく広がっている、と魔術協会では考えられている。
本来、剪定事象とは誰かの悪意や過失によってもたらされるものではなく、ただ"そうなってしまった"という結果だけが全てであり善悪正誤の話ではない。
それでもあえて善し悪し、正しい間違いで分けるのであれば、宇宙にとって正しく善い流れの世界とは、今後も様々な派生を生む可能性に満ちた、正解と失敗のバランスが取れた安定した流れの世界のこと。
逆に宇宙にとって悪く間違えた流れの世界とは、過剰な滅び・過剰な進化によって他の世界よりも先鋭化し過ぎて、何を選んでもこれ以上変化することがない、もう何をしても滅亡が決まったもの。どれほど発展しようと進化が止まったものといった結末が決まった世界のこと。
基本、並行世界があると仮定した場合、そこでの文明やライフスタイルは同じものであり、基本世界の隣であるため少ししか差異は無く、みんなコースは同じである。
しかし稀に天変地異や技術のブレイクスルーなど突拍子もない展開で、コースを外れるほどの変化を迎えた世界もあり、その場合この宇宙では"違うもの"として削除されてしまう。
剪定事象に選ばれる世界の多くは不正解を選んでしまい滅びの結末を迎えたものだろうが、逆に正解を選び続けることでどの編纂事象よりも文明文化が発展繁栄し、幸福に満たされた理想の世界もあった。
しかしどちらにしても、宇宙にとっては完結した物語に過ぎず、そのような『先の展望が見えた』世界を続けていくほど、この宇宙は寛容では無く、何をしても結末の一本化が確定した世界は、そこに住む人々にとっての良し悪し関係なく、“これ以上続いても意味が無い世界”として剪定の対象となる。剪定された世界はこの宇宙から消去され「バッドエンドだった」と記録される事すらない事が後の章で判明している。
どれほどの高次の生命体ですら見通せない"まだ見ぬ未来"のために宇宙が存在する以上、未知の可能性が失われた世界に対してはエネルギーを費やさないのである。
異聞帯の世界とは、剪定事象に区分されるはずだった歴史が、その時代に剪定されずに現在まで続いてしまったという、いわば「ありえたかもしれないが全く別の人類史」であり、特異点に似た一種の異世界となっている。
ただ、特異点との明確な違いとして挙げられるのが、特異点が「歴史の分岐点」であるなら、異聞帯とはすでに特異点をとっくに通り過ぎており、いわば特異点がそのまま続いた状態の現代であること。既に独自発展した歴史が続いている為一時の「点」ではないし、テクスチャの上書きを行うため「帯」として現在まで続いたものなのである。
特異点と違うのも当然であり、特異点は正しい歴史が歪められた腫瘍だが、異聞帯は『何も間違ってはいない』世界である。
魔術王の時のように何者かの手でそのような世界になったのではなく、初めからそのような世界であり、そのような世界だからこそ築かれた人類史。本来なら100年で打ち切られる歴史が、現在まで続いてしまった世界が異聞帯である。
なお、本来剪定されるはずだった時期の違いは、異聞帯の強さには全く結びつかない。その強さや危険度は、汎人類史との違いの大きさに応じたものになり、強いほど汎人類史を否定する人理となりうる。これを「異聞深度」といい、特異点で言うところの「人理定礎値」のようにランク付けされている。
なおファンからは勘違いされやすいが、あくまで重要なのは将来の発展の可能性(どれだけ分岐出来るか)であって、編纂事象より著しい変革や衰退自体が剪定の理由になる訳ではない。
例えば『Fate/EXTELLA』シリーズは、他の平行世界より地球上の資源枯渇こそ激しいが、その代わり電脳世界の技術の進歩が著しく、この世界そのものは編纂事象と明言されている。
そして編纂事象自体も無限に近いほど無数に存在し、それぞれ等しく等価値であるという点も忘れてはいけない。
『Fate/EXTELLA』と『Fate/Grand Order』の両シリーズはともに別世界ながら編纂事象であると語られているが互いの世界に上下の差が存在するとは言われてはいない。
要するに"たった一つだけの正史"というものはTYPE-MOON作品には存在しないと思ってもらっても構わない。
コヤンスカヤ曰く、"自分たちの世界に疑いを持てない"のが異聞帯の限界であるらしく、だからこそ剪定されたという。
大まかな特徴
各異聞帯にはそれぞれ担当するクリプターとそれに仕えるサーヴァント、そしてその異聞帯を元々統治していた「王」が存在している。
キリシュタリア曰く、最終的に異聞帯を発展させるのは、異聞帯の王ではなくクリプターの役割であるとのこと。そうして汎人類史を押し潰し、異星の神を受け入れる法則を自分の担当エリアに築き上げることを目的とする。
それぞれの異聞帯には空想樹と呼ばれる巨大な柱状の構造物が存在しており、これが中核を成している。この影響で、各異聞帯の周囲には「嵐の壁」が常時発生しており、外とのつながりが断絶されている。
「嵐の壁」は、オーロラを伴っている影響であらゆる電磁波が遮断され、嵐そのものも鉄を捻り切り、都市を破壊し、生命を根絶させる、核爆弾に匹敵する規模のエネルギーを持つ雷雲となっているため、通常の方法での侵入・脱出は不可能。
その性質上、シャドウボーダーが虚数潜行からここへ浮上するということは、汎人類史を取り戻すための敵地潜入に成功することではあるが、浮上に伴い車体が損傷することは珍しくなく、修理までの間は未知の世界へ孤立無援状態で閉じ込められたに等しい状況となる。
のちにシャドウボーダーが「何もかも変わる」レベルでの強化を果たすその時まで、嵐の壁は通行できない領域としてカルデア陣営の容易な進軍を阻むこととなる。
空想樹が破壊された場合、異聞帯は中核を失うことになり、嵐の壁は消滅。異聞帯そのものもほどなく消滅へと至る。
しかし、それはその異聞帯の住民を一人の例外無く全員皆殺しにしその世界を滅ぼす事を意味する事であり、世界を救う為の戦いである人理焼却とは違い「世界を滅ぼすための戦い」である。
消滅において異聞帯の外と内では時間の流れる早さが違う事があるようで、外からの観測と実際の異聞帯内部での消滅にタイムラグが生じる場合がある。
例として中国に発生した異聞帯の場合、カルデアによる外からの観測では“程なくして”消滅したが、内部から見ると完全に消滅するまでに約三か月間かかっていた(異聞帯の王の体感時間による計測/当該異聞帯の王の幕間にて)。
具体的には、徐々に山々や森林地帯が虚無に飲まれていき、人の住む村は一夜にして虚無に飲まれ、他の村の住人は“最初からいなかった”かのごとく記憶していないという過程を経て、消滅に至ったとのこと。なお、他の異聞帯でも地域毎にタイムラグが発生するシーンが確認されている。
いずれの世界も汎人類史と全く異なった価値観に基づいた文化・文明を営んでいるばかりか、人間としての在り方さえ根本的に違うことが共通しており、これは特異点との大きな相違である。クリプター達の発言によると、基本的に発展自体は汎人類史よりも遅れているとのこと。
カルデア襲撃の際に異聞帯から来た存在は、南極の極寒や汎人類史の英霊を"生温い"と称しており、その際のコヤンスカヤの補足も合わせると、汎人類史と比べて極限の環境変化や、争いの激化に苛まれた世界が存在する事が読み取れる。実際いくつかの異聞帯はコヤンスカヤの言う"人生ハードモード"の言葉が当てはまる。
異聞帯は基本としては2つのパターンに分かれる。
- 衰退あるいは過酷すぎる環境によって、全ての打開策を失って剪定事象となった世界。変革や進歩をもたらす偉人・英雄という存在が絶えていることを前提とする世界なので、このパターンの異聞帯を出身とする英霊は存在しない。
- 理想的な環境が完成したため、変化の必要性が無くなったことで剪定事象となった世界。こちらでは異聞帯への分岐時期以降の歴史に生まれた英雄は存在している。
それらの影響からか、汎人類史に属する従来の英霊たちは、異聞帯の中では生前の記憶すら曖昧になった状態で召喚されてしまうケースが確認された。
しかし、作中の歴史や伝承上の存在の中には、本来迎えるべき終わりを迎えず、従来の歴史よりも強大な存在へと変貌した存在が幾つも登場しており、そんな者達が本来刻まれぬはずの"英霊の座"を通してサーヴァント化したものが、いわゆる"異聞帯の英霊"とされている。
一応はパラレルワールドの一種であるため並行同位体も存在し得、中にはアルトリア、ガレス、赤兎馬、カマソッソの様に汎人類史とは別の種族として生まれ育った者も居る。
そして異聞帯のサーヴァントと汎人類史のサーヴァントの同一人物同士が鉢合わせ、片方がもう片方を取り込んだ場合、片方が有していなかった要素の宝具や記録を(完全ではないにせよ)取り込むことが可能。
空想樹が健在であればタイムパラドックスすら許容される一方、異聞帯の生命が異聞帯の外で存在を保つことは原則不可能。(第六異聞帯のみ例外)
不可解な事に剪定された事で『空白』になっている筈の歴史を異聞帯の住人が何の疑問もなく認識していたり、突如嵐の壁が現れた事を疑問に思うなどの矛盾や認識の齟齬が発生しており、オフェリア・ファムルソローネ曰く、空想樹の中で実際にその空白の歴史が運営された事になっている為ではないかと言う仮説を提唱している。
これは歴史の編纂というより"創造"であり、かつて星を支配した主神級の神霊でさえ、現代の地球で此処までの権能を振るうことはできないとのこと。逆説的にこの事件を起こした黒幕がそれら以上の存在である事を示唆している。
なお、イヴァン雷帝が自分の異聞帯をビーストⅠの原罪でもある『憐憫』を失った世界と称していた事から、ビーストの原罪と何らかの関わりがあると思われるが、詳細は不明。(最後に訪れた異聞帯の住民は自らの世界をビーストⅣの原罪である『比較』することが無い世界であると評していたが)
この他、第2異聞帯から第6異聞帯は神代(紀元前)から分岐した世界であるのに対して、どういうわけか第1異聞帯のみ神代が完全に終わった時代(西暦)からの分岐となっている(ブリテンはアーサー王の時代まで神代であった為、前者に含めるものとする)。第7異聞帯に至っては人類誕生以前である。
異聞帯の住民は上記の通り今の世界の現状に疑問を持っていない住民が大半だが、今の世界の現状に疑問を持つ住民がおり(有り体にいえば異端)、その住民がノウム・カルデアの協力者になるケースが多い。
幕間の物語でホームズはこれを"連続世界殺人事件"と捉え、よりにもよって犯人はノウム・カルデアの手を汚させている事、生存のための戦いを強要させられている事に憤りを感じている。
ある意味では『人理焼却事件』と地球漂白は対になっているとホームズは考察しており、第一部ラスボスであるゲーティアは人類史を焼却しそのエネルギーを西暦2016年から遡って回収した。即ち、ゲーティアは『この先に、回収できる人類史はない』と知っていた事。故に『2016年』を一つのターニングポイントと捉えそこから過去に向かって人理を破壊した。
対して『地球白紙化』は未来に向かって人理を破壊したものであり、ある意味ではゲーティアはこの未来との対決を避けたと言え『地球白紙化』が起こる前に人理焼却を開始し問題が起こる前に地球を創り直そうしたこと。
それが意味することはあのゲーティアですら『解決』を放棄した恐るべき問題、恐るべき謎であるがそれでもカルデアは足を止める訳にはいかず、失ったものを、人理のすべてを取り戻さねばならないとホームズは評している。
BBやクー・フーリンも第1.5部の最中、人理焼却と同等かそれ以上の脅威のように呟いていた。
『MOONLIGHT/LOSTROOM』のギャラハッドも「主人公たちが人理焼却を破却したことで確定してしまった」と告げている。
異聞帯一覧
特異点同様に「漢字6文字」で始まる名称だが、末尾に使われている単語に地名が使われるケースは少な目になった。
各章の登場人物や詳細は、それぞれの記事を参照とする。
No.1 永久凍土帝国アナスタシア
異聞深度:D
マイナス100度前後の永久凍土と化し、獣人「ヤガ」へと改造されて生き延びた民衆も、無意味な恐怖政治の元苦難と困難しかない人生を余儀なくされるロシア
No.2 無間氷焔世紀ゲッテルデメルング
異聞深度:B+
ラグナロクの終わり方に異常が生じて大地が命を育めなくなった結果、善悪問わず異端な力の持ち主が生まれる土壌ひいては強くなる可能性の一切が断たれ、人が生死含め管理される北欧
No.3 人智統合真国シン
異聞深度:E
世界統一を成し得、全ての民は戦や病気という概念さえ消えうせ平穏に暮らしているが、見方を変えれば不老不死となった帝の完全支配により、民が知恵をつけ生き方を選ぶことを禁じられた中国
No.4 創世滅亡輪廻ユガ・クシェートラ
異聞深度:A
汎人類史残存数値:C
世界が10日の周期で頻繁に創世と滅亡を繰り返し、それを行う絶対神ひとりの裁量で万物の存在が剥奪され続けるインド
No.5 神代巨神海洋アトランティス/星間都市山脈オリュンポス
異聞深度:A+
失うはずだった力を維持し続けた神々の支配と恩恵により、あらゆる意味での理想郷となったが、その全てを神に依存しきっている大西洋内のギリシャ
No.6 妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ
異聞深度:EX
遥か昔から罪を重ね続けた邪悪な妖精で満たされた結果、滅ぶべきだった彼らに罰として厄災が起こり続けるブリテン
詳細は該当記事参照。
No.7 黄金樹海紀行ナウイ・ミクトラン
異聞深度:A++
永久焦土と化した地表の代わりに生命が満ちた広大な地下世界で、進化した恐竜が完璧な霊長として進歩や発展の必要なく生きる南米
詳細は該当記事参照。
厳密には後編が存在するのだが割愛する。
詳細は該当記事参照。
用語
濾過異聞史現象
読みは「ろかいぶんしげんしょう」。
汎人類史と異聞帯が衝突することで発生する、事象転換作用。
汎人類史が何かしらの作用で喪失された場合、有力な異聞帯が汎人類史の欠落を穴埋めし、新たな汎人類史として反映される。
言うなれば“歴史の「接ぎ木」”。本来あった汎人類史という樹の幹を切り倒し、そこに異聞帯という挿し木を植え付けて、新たな人類史という樹として成り代わる現象、とも言い得る。
クリプターたちはこの現象を利用し、聖杯戦争のように互いが担当する異聞帯をぶつけ合わせ、最終的に生き残った異聞帯を汎人類史の強度を上回り新たな編纂事象になるよう競い合うつもりだった。そしてその競争にカルデアが属する汎人類史は“参戦”するどころか“観戦”する権利すら与えられなかった。
人理焼却はゲーティアという個の生命意思による人類史への攻撃だが、人理再編は異聞帯という人類史による地球そのものへの攻撃である。
ちなみにコヤンスカヤはLostbelt No.2にて「異聞帯だっていつかは破綻する。すべては「異星の神」が降臨するまでの暇つぶし」、Lostbelt No.4ではさらに「異星の神に属するアルターエゴは3体とも、目的は共通して空想樹を育てきること」と発言しつつ、異聞帯を育てるとは言っていない」。
実際、アルターエゴの工作によって壊滅寸前に追い込まれた異聞帯が存在することがこの発言を裏付けている。クリプターとアルターエゴにとって、異聞帯と空想樹の関係の理解に明確な違いがあることが読み取れる。
地球の白紙化現象
宇宙(そら)からの侵略者により、地球が漂白されたかのように白紙化した現象。
地表からはあらゆる建築物や動植物はおろか、砂漠や海すらも消失し、地形も1000m級の山が均される程度に平らな地表となった結果、ただ白い地平線だけが広がる世界と化した。生命の痕跡は一切なく、生き物の死骸といった死の跡すら存在せず、細菌類さえ存在しない。唯一、大気だけは以前のままのようだ。
また、昼夜という概念が失われており、地球全土が太陽光が降り注ぎ続ける昼の状態となっている。
2017年の12月31日に宇宙からの侵略者により白紙化が急速に広がったようで、空想樹の枝が空を覆ったことによって、地上から観測した様子では最初に世界中の人工衛星がロストしたのち、宇宙線の観測が不可能になると同時に、空模様が灰色に変化したという。
そして12時間後、上空から伸びてきた無数の「樹」(空想樹の枝)によって、生命体だけが徹底的に狙われ虐殺されていった。その攻撃は執拗かつ的確で、地上を這い回り、その枝を伸ばして人間の心臓を一突きして殺害し、犠牲者は苦悶と共に塵となって消滅したとの事。そしてこの方法に例外はない。
地球全土を覆い尽くすほどの規模を持ちながらも、この手の質量兵器に見られるような"いっぺんに多くを殺害する方法"ではなく、"全人類70億人を1人1人丁寧に殺した"この方法は、わずかに残った生存者を震え上がらせた。
またそれは、人類を愛したが故に焼却した獣とは真逆と言えるものでもあった。
こうして3ヶ月後に最後まで抵抗していた合衆国が消滅したことで地上の人類はほぼ殺し尽くされ、虐殺が終わると「樹」は元通り上空へと消え、そして地上が漂白された模様。
現在地表には僅かながらに白紙化されきれずに残った建築物(残留物)や、地下にいたことで難を逃れた僅かな生き残りがいるようだが、食料すら補充ができない状況下のため、ただ全滅を待つだけの状況になっている。
宇宙線の類も途絶え、事実上地球は宇宙から切り離された一人ぼっちの星となり、その影響か本来地球にいてはならない外来種が迷いこむ事例も確認された。
デイヴィット・ブルーブックなる人物による「この白紙化された地球上で“なぜ”宇宙(そら)からの侵略が起こったのか」「侵略の予兆はなかったのか、あるいは知っててわざと看過したのではないか」を調べている様子を記録したボイスレコーダーが、第1・第3・第5章前編の冒頭にて登場する。(共通点としては奇数章であることぐらいだろうか)
ほかに白紙化現象から逃れることができたのは、白紙化現象の侵攻中に虚数空間に潜っていたカルデアの生き残りや、テクスチャによって異世界化した本拠地にいる彷徨海が挙げられる。
しかしそんな中、米軍基地であったエリア51は、地上に残っていたにもかかわらず白紙化されていない。ただしエネルギー供給が途絶えているうえ、飛行艇や装甲車などの軍備はすべて消失しているため、エリア51でも食糧供給などがまったくできない状況に変わりはない。
また、ロシア異聞帯から一度白紙化地球へと放り出された宮本武蔵は正体不明の勢力と交戦している。
クリプターは基本的に異聞帯から出ることは無く、異星の神陣営の手によるものなのか、それとも別の何かは不明だが、正体不明の謎の勢力が白紙化地球上に存在している模様。
さらに、キリシュタリアが大西洋異聞帯に保管していたデータによると、地球白紙化が先に発生して空想樹が後から加えられたこと、最初に白紙化が始まったのは白紙化されていないはずの北米・エリア51からであることが記録されている。
失われた歴史
読みは「ミッシング・ベルト」。下総国の世界である亜種並行世界の正体。異星の神がその異なる“目”で観測した世界。
現時点では異聞帯よりも詳細こそははっきりしていないが、読み方からすると存在の区分がかなり近い世界の模様。
この世界では前提条件こそ違うが、汎人類史において廃城となっている土気城が第二の江戸と呼ばれる規模に拡大している等、異聞帯ほど人類の在り様が変貌し、可能性を閉ざされる程の変化が起こっていない。
舞台であった年である寛永十五年(A.D.1639)から、汎人類史における土気城が廃城になるかならないかを分岐基点として計算をすると、廃城となるはずの天正十八年(A.D.1590)からは約50年程度が経過している。
ここで事件を起こした真の黒幕であるアルターエゴはこの世界を介して濾過異聞史現象を起こそうとしていたが、傀儡にしていた妖術師が抑止力によって遣わされた千子村正に討たれたことでとん挫している。
村正という妖術師に対して一番有効な存在が遣わされていた事から、一応通常の抑止力が働いてる模様。
アプサラス分岐
ある人物が提唱した歴史の在り方。アプラ世界とも言われる。
正史の幹に外れてしまった枝だが、特異点とも剪定事象とも微妙に違うとされ、かぎりなく類似しているし、より優れた繁栄を迎えたものの、その繁栄ゆえに歴史が途絶えてしまった泡沫の分岐。
未だ正確な定義は語られていないが、"進歩の必要を感じなくなった"シンやミクトランと比べた場合、人類全土が燃え尽き症候群に陥って繁栄する気力を無くし、剪定事象となる前に滅んでしまう、といった所だろうか。
なお呼称は提唱者の造語で、一般的なものではないと念押ししている。
現時点ではこの世界のみが該当。
ネタとしての異聞帯
①昭和95年と呼ばれるように、令和時代にそぐわない流行が起きることを総称して「異聞帯」と呼ぶことがある。
尤も、『Fate/Grand Order』作中では改元が起きる前に白紙化が発生してしまっているため「令和」は存在しないのだが…
➁「異聞帯と言ったら大体ロボ」
第五異聞帯が配信される直前まで、『TYPE-MOON世界のギリシャ神話とは、別宇宙からやって来た人工知能を搭載する宇宙艦隊が地球で神と崇められ、機械テクノロジーが発達したSF世界』であるだなんて誰が想像できただたろうか。(たしかに、FGOで初登場のトロイア兄弟の宝具は片腕サイボーグだったり、銃器をぶっぱなしているが、こんな展開とは)
汎人類史ではこの時に機械テクノロジーがもたらされた事になり、北欧のワルキューレ、中国のサイバー技術、日本の等身大~巨大機械人形など、これらオーバーテクノロジーの源泉となっている。
結果、分岐基点時代が西暦のロシア以外の異聞帯では、汎人類史では衰退していたオーバーテクノロジー=神秘が現存。(アルジュナのセリフは機械用語ばかりだった為、元々は存在していたものと思われる。)汎人類史サイドの特異点と比べても、ロボの比率が高すぎた。
余談
章をクリアすると「空想切除」の文字が出てくるが、アトランティスの場合「絶海突破」の文字になる。
ファンからは上記のアプサラス分岐/アプラ世界が2.5部もしくは3部の舞台になるのでは?と予想されている。
関連タグ
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Fate/EXTRA_Last_Encore:物語がバッドエンドを迎え、1000年の永き時を無意味な停滞と人類の否定のみに費やす様になった世界線。ムーンセル内でのそれら事実をリセットしなければ、確実に「剪定事象」となっていた事が明言されている。
プリズマ☆イリヤ ドライ!!:同じく、可能性を閉ざされ「剪定事象」になってしまう恐れがある世界線。現在進行中である主人公達の戦いの結果で、それが決まる可能性が高い。
Fate/Requiem:第五異聞帯同様、TYPE-MOON作品で散々否定されてきた人類の不老不死が実現してしまった世界線。現時点では剪定事象とは言われていないが、間違った繁栄・滅ぶべきだったと感じる者が続出している。
路地裏ナイトメア:剪定事象の原因である世界の容量とエネルギー不足が言及されている。一方ある存在は、その設定は人類が行なっているものであり、世界自体はその程度で崩壊するほどひ弱ではないとも語っている。
セファール:文明を破壊し収穫する遊星の先兵。第五異聞帯と第六異聞帯が異なるルートを辿った原因。来訪した時系列的に第七異聞帯にも来てもおかしくないが、上記の通り地表が永久焦土と化した為『文明ナシ』と判断し来訪しなかったのではないか?と考察されている。
天の杯:人類の在り様を根底から変革させ得る第三魔法。ファンからは彼の悲願が叶ったとしても剪定事象になってしまうのではないか?と考察されているが、アプローチ次第では続く未来もある模様。
TYPE-MOON作品外
スーパーヒーロー大戦GP、のび太のパラレル西遊記:同じく、ありえざる歴史のIFが現在まで起こった世界を舞台にしている。
最後に─────一番はじめの質問を返しておこう、キリエライト
オレの目的は『秩序の維持』だ。それが人類にとって善い事だと判断した。
七つの異聞帯が切除された時、ヤツの人理保障は完成する。
そうなれば地球人類は138億光年に亘る汚名を被るだろう。
“この宇宙に産まれた、最低の知的生命体”と。
その前にオレは地球を破壊する。その方法でしかカルデアを───────
地球白紙化の真相を知ったノウム・カルデアの行動は『オーディール・コール』を参照。