……分かっているのか、主人公。
異聞帯を。クリプターを知ろうとした時、今度こそ、その旅は終わるだろう。
………………まったく。度しがたいにも、ほどがある。
概要
各異聞帯に現れては「カルデアの者」と名乗る、謎の人物。白い衣服にボロボロのローブを纏う人間の外見をしているらしい。
各異聞帯の人類の調査と査定のため活動しているようであり、実際に住民の前に現れては困っている現地住民を助けたりしている。話す時に舌打ちのような音が聞こえるのが特徴。
王の兵隊宝具による人力じみた監視網だったロシア以外では、各地の異聞帯の王による異聞帯全土に対する監視網が敷かれているが、異聞帯の王達どころかクリプター達、異星の神の使徒のアルターエゴ達にも一切その存在を気づかれていない事実から、異常なまでの隠蔽能力を有していることが窺える。
キリシュタリアも2部5章前編までの間に"そのような存在がいる"という情報は掴んでいたが、その正体まで突き止めるには流石に考察材料が足りなかった。
また、後述の行動からして能力的には隠蔽・剣術・神代の魔術・医療など、できることが非常に多岐に渡る。ほかにも、その眼は未来を見る性質に分類されるであろう能力を備えていることが確認されている。
恐らくは2部OPに1カットだけ映っている人物だと思われるが、「サーヴァントなのか、魔術師なのか」「主人公らが同じ異聞帯で空想樹切除に戦っていることを知りながら、何故彼らの前に姿を現し力を貸さないのか」という不可解な点が見られ、その正体・詳細・目的は謎に包まれている。
各異聞帯の行動
永久凍土帝国アナスタシア
ヤガ達が見たことがない鋭い刃物による剣術を用いてクリチャーチを撃退することで老人のヤガを助け、私はカルデアの者だと名乗り去っている。
カルデア陣営は当初、後に合流した宮本武蔵がやったのだと思っているが、武蔵が撃退したのは野盗のヤガであり、名乗りもカルデア一の剣豪なので、明らかに食い違っている。
無間氷焔世紀ゲッテルデメルング
ゲルダ達の集落に巨人達が向かったということを聞いて向かったカルデア陣営だったが、到着した時点では巨人達は撃退されており、北欧のルーンとは違う高位の神代魔術で集落の壁を補修し、集落の者達に自分はカルデアの者だと名乗り、祝福の言葉を述べると共に去った。
ナポレオンによると、彼に北欧異聞帯の情報を提供した人物と、集落の壁を補修したのは同一人物の模様。
普通の人間のように見えたが、異聞帯を生き抜く術に長け、なぜ地球が白紙化したのかということの理由を探しているとのこと。
人智統合真国シン
カルデア陣営による空想樹メイオールの伐採が終わった後に、始皇帝の攻撃から身を隠していた集落の者達の前に現れ、もう大丈夫だと告げた。民達は彼から、カルデアの面々に近い雰囲気を感じ取っていた。
創世滅亡輪廻ユガ・クシェートラ
「(……心からの言葉だ。自分たちの蓄えもないだろうに、異邦人に謝礼とは……)」
「(……いや、それ以前に、なぜ私に好意を抱く?以前からは考えられないコトだ)」
「(私の行いは以前と違うものではない。私の行動原理は何一つ変わっていない。だというのに……)」
「(…………まさか、この姿か?人間というヤツは、そんなにもガワが重要なのか?)」
劇中で初めて、この人物の内心の描写がされた。どうやら、以前からやっていることは変わらないようだが、現在は人間の外見をとっているために人とのコミュニケーションには支障が無いと言い、元は人外であることが判明した。そして、外見の違いだけであまりにも成果が異なることには心底驚いていた様子。
人々を助け回ってるのは善意や善行としてではなく、異聞帯の崩壊を早めるための打算との事。本人も「様子見で立ち寄っただけだ。この世界の根本的な解決にはならない」と言い残し集落での流行病を治療した後に去っている。
神代巨神海洋アトランティス
「──────正気か?」
「カルデアの馬鹿者ども。あの程度の戦力でこの海に乗り込んできた。だと?」
「“攻略しにきた”という前提が過ちだ。異聞帯を知ろうとする思考そのものが間違いだ」
「“完膚なきまでに破壊しにきた”。その方針が備わってない」
これまでの異聞帯に関わっていたことを、同じく大西洋異聞帯に現れていた武蔵の前で明言。同時に、自身の眼には彼女の"この後"が見えていない旨を語る。
そして上記の言葉を語りカルデア一行に対して今までの異聞帯とは別格の完成度を誇る大西洋異聞帯に対する認識の甘さを酷評する。曰く「ここでは異聞を学ぶ余裕はない」とは言え「私は私の責務(タスク)をこなすだけだ」とも。
その後突如、圧倒的な力をもって主人公達に完勝したキリシュタリアから、カルデアを手助けするためについにその姿を現した。
「『おかしな事を言うんだね、キリシュタリア』」
「『ボクがカルデア助ける事に、理由なんて必要かい?』」
その姿はロマニ・アーキマンそっくりであったが、主人公やマシュ達が知る彼とは目つきが決定的に違っていた。
そしてロマンと同じ口調で「自分はギリシャ異聞帯から去り、二度と干渉しない」という条件を提示し、その要求を飲んだキリシュタリアを帰還させて一行を救った。本人曰く「『君は一度、異星の神の手で死の淵から助けられた。なら彼らも一度くらい死の淵で助けられていい。それでようやく対等だと思わないか?』」(キリシュタリアからはとっくの昔にギリシャ異聞帯に見切りを付けていただろうと指摘された)去り際にキリシュタリアからは「その人マネは、あまり上手ではないと思うよ」と言われている。なお、彼との会話が最初で最後のクリプターとの交流である。
去った後にはやはりどこかで聞いたことがあるような傲岸な口調で話し、カルデア側に合流しようとしないのはボーダーの中に信用できない存在がいるため(ここに召喚されて一足先に戦っていた汎人類史サーヴァントも同じ助言をしている)。なぜそうなのかは自分達で考えろと言い残し消え去った。この時「死にたくないのなら─────いや、生きていたいのなら抗え」「結果は変わらないだろうがな。どうあれこの星は救えまい」と言い残している。
この消え去り方はコヤンスカヤと同じもので、それを持つクラスとは即ち一つしかない。
ロマニと同じ姿をして、ロマニの口調で話した人物といえば、ソロモンが英霊の座から消滅した日に敗北したあの男にも通じる特徴がある。そして、別個の存在として独立しきったアルターエゴ的存在である彼が、同様に永遠の滅びを迎えたとは明言されていない。
また、ロマニの基となった英霊はとある資格持ちであり、カルデアに積極的な協力を行わないのも、その力は個人を救う為に使ってはならないという制限が付いている為、あるいはまだ別の局面でその力は使わなければならない為であるともとれる。
星間都市山脈オリュンポス
・・・・・
「……必要はない。状況が状況だ。大西洋異聞帯には必ずグランドが出現する」
「最終的には貴様なんぞよりよっぽど強力な切り札が投入されるはずだ」
「だが─────」
「確かに貴様は必要になる。大西洋異聞帯までなら同行させてやろう」
「……フン。抑止力というヤツはまあ、用意周到で、婉曲で、意地が悪い」
本人は大西洋異聞帯からもう去っているが、武蔵がどのような経緯で彼と出会い行動を共にしていたのかが語られる。
武蔵が漂流による転移を試していたら、転移中の衝突事故というギャグじみた由来で遭遇。以後、カルデアの状況を武蔵に語りながら大西洋異聞帯まで同伴して旅をしていた。
後期opでは前期opとは違い顔が露になっている。(右半分は見えないままだが)
リンボに打たれたブラックバレルの光を崖の上から眺めていた。
妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ
「分かっている。どのみち、ここが最後の介入地点だ」
「この時点で私が妨害しても、結末は変わらない」
「この異聞帯を攻略するのであれば、それこそ2000年遅かった」
「完璧な歴史。完遂された脚本。トリスタンという失点(ミス)はあれ、勝利は目前だ」
「かつて同じ立ち位置にいた者としてその道行に拍手を送りたかったのさ」
「私の見立てでは『予言の子』もカルデアのマスターも、お前に勝利する公算はない」
「もっとも─────まだ盤上に現れてない第三者。それ以外の要因があるとしたら、話はまた別だがね」
このブリテン異聞帯は人類史と呼ぶべきものではないためか、彼の目的である各異聞帯の人類の調査と査定を行う行為は確認されていない。
カルデア陣営と異聞帯の王であるモルガンの対談後に、異星の巫女と入れ替わるように姿を見せ彼女と密談を交わし(これが作中において最初で最後の異聞帯の王との交流である)、最後の介入地点であったここを最後とし、その目的の果てに起こることと、異星の神が起こすことでは、モルガンの目的である「地球全土の妖精郷化」の方が断然マシだと口にした。また、彼自身にも待っている時間がないほどに逼迫している状況下にある事が判明。本人曰く「おまえのようにに優れた魔術師ではなく、全能の身でもない」「人の範囲の仕事しかできない男だ。本来用のない場所に足を運ぶ余裕はない」それらを差し引いてもモルガンの元を訪れたのはモルガンの作品を見に来たため、曰く「見ておくに値する」らしい。空想樹の役割を見抜き、恐れるのではなく逆に利用した事、カルデアの召喚式を即座に解析し、自らの血肉とした事を偉業、魔術における神域の天才と評した。他に誰も、それを言うものはいないだろうからと彼なりに彼女の事を褒め称えに来たつもりだったがモルガンからは「貴様に魔術の腕を讃えられても喜べぬ。それこそ嫌味というもの」と言われたが。最終的にモルガンからは「これより先は私の世界だ『異星の神』にも、獣にも居場所はない」と言われそれに同意するように上記のセリフを言い去っていった。
最後の異聞帯である南米異聞帯には介入しないともとれることを口にしたが、南米異聞帯は人類史と呼ぶべきものではなかったブリテン異聞帯と並ぶほどに人類史とはかけ離れた異聞帯であるためか「各異聞帯の人類の調査と査定」には意味がないのだと思われる。しかしその後の第七異聞帯で登場していることから上記の発言は「第六異聞帯における最後の介入地点」という意味だった模様。
黄金樹海紀行ナウイ・ミクトラン
「初遭遇とはいえ、無知性化したディノス数匹も撃退できないとはな」
「仮にも『人類最後のマスター』だろうに、ひどい醜態だ」
「それとも─────六つの異聞帯を切除したことで増長したか?常に失敗を重ねる、人間らしい愚かさだが。」
大規模特異点を経て、カルデア陣営は南米異聞帯に突入した直後に敵襲に遭いメンバーが地底世界に離散しており、ほぼ孤立状態となった主人公とネモ・マリーンと記憶を失った異星の神の前に姿を現した。(この時異星の神については無視を貫いている)主人公がロマニ本人ではない別人なのだと悟っていることをわかった上で、これからは堂々その名前を使おうと「ロマニ・アーキマン」と名乗るようになった(テキストウィンドウ上も「ロマニ・アーキマン」表記になる。かつてのロマニの表記「Dr.ロマン」とは異なる)。主人公からは「その名前は相応しい人に語ってほしい」と言われたが。
主人公の現状に苦言を呈する中、「人類が7つの異聞帯を全て切除できたのならその時初めて、お前たちを敵と認めよう」と発言して去っていった。
なお、彼個人の予想ではそうはならないとのことだった(この時この発言を口にするのは複雑な心境と語っている)。というのも、この発言は「敵の敵として認める」(2部2章でも彼女が似たような発言をしている)というニュアンスであり、カルデアを名乗る者たちが核心的な真実を知れば立ち向かう事は無いだろうと考えてのことだった。(組織の暗部を隠すのは人間の習性であるため、彼自身は不可能だと考えていた)だが、最終的に予想が外れた事、現在の主人公たちが属するカルデアは自分の知るカルデアとは違う新しきカルデア、地球白紙化の黒幕たるマリスビリーのグランドオーダーを破却する新しき人理保障機関であるをことを認め、神父と対話しながら(神父からは終始敬語を使われていた)最後の地へ向かう一行を見送った。
なお異星の神曰く生物としての波長はないらしい。
奏章プロローグ
「当然だ。七つの異聞帯を切除した事でカルデアスは人類史の基礎─────人理保障天球となった」
「その壁はカルデアスを守るものではなく、異物を通さない検問所のようなもの」
「南極がお前たちを阻んでるのではない。おまえたち自身が、汎人類史を弾いている」
最後の地を目前にして、自身が想定していた通りの障害に阻まれたカルデアに追いつき姿を現す。
「この先は『完全な』汎人類史の領域だ。今のおまえたちでは立ち入る事はできない」
「─────私も想定してなかったが─────」
「ここまでの戦いにおいて、おまえたちは汎人類史にはないものを扱いすぎた」
「七つのクラス以外のサーヴァント。ルーラー。アルターエゴ。アヴェンジャー。」
「本来ありえないクラスを濫用した結果、汎人類史はお前たちを異物と認識した」
「この歪みを補正しない限りカルデアスに近づく事は不可能だ」
本来人の手に余るとされるエクストラクラスを使い過ぎたことで汎人類史から異物と認定されてしまったことを語る。
「2017年より未来にそれらは持って行けない。……いや、違うな」
「今の認識では、彼らを連れて行く事はできない」
「(主人公の名前)おまえの中の歯車が合っていない」
「本来ありえない属性がなぜ存在するのか」
「その兵器は、その在り方は、どのように人類史に寄り添うべきなのか」
「それを理解し、認めた時、異物は異物ではなくなるだろう」
「─────艦首を返せ、ノウム・カルデア」
「おまえたちの歪み。無自覚な罪を清算するための空間が、必ずある」
「果たすべき責務の呼び声(オーディール・コール)」
そして助け船として、一行が為さなければならない追加オーダー『オーディール・コール』を提唱し去っていった。
「四つ……いや、三つの清算が成った時、天球の真実は白日の下にさらされる」
「─────別離は必ず訪れる。その瞬間を迎え入れる精神を、手に入れておけ」
余談
現状第五異聞帯以降で彼が発した言葉はすべて外れている。
第六異聞帯では「この異聞帯を攻略するのであれば、それこそ2000年遅かった」、第七異聞帯では「相手はデイビット・ゼム・ヴォイドだ、お前たちにORTの撃破は不可能だろう」と発しているが、カルデア側はどちらも様々なトラブルこそあったもののどうにか乗り越えている。またアトランティスの「異聞を学ぶ余裕はない」の発言についてもアトランティス・オリュンポスの双方で断片的にとはいえ学ぶことが出来ている。
上記の「敵として認める」の発言は1部4章で第1部ラスボスゲーティアが発した言葉である「もしも七つの特異点を全て消去したのなら。その時こそ、おまえたちを、“私が解決すべき案件”として考えてやろう」と似ていること。2部4章で元々は人外であることを示唆する内心描写、2部6章でモルガンに対しかつて同じ立ち位置に居た者というセリフ、2部7章での主人公の態度から初対面では無くその人となりを把握されている様子から彼の正体がゲーティアなのではという予想が極めて多い。
それ以外にもアトランティスの冒頭で「ロシアでの無様は当然だろう。初の異聞帯だったのだから。北欧での愁嘆は汲み取ろう。あれは優しすぎる世界の末だったのだから。中国での騒動は目を瞑ろう。永く祭りの無かった世なのだから。インドでの独善は譲歩しよう。極めて単純(シンプル)な善悪の問答だったのだから」と大西洋異聞帯に突入するカルデアに言っているが、これも一部でフラウロスが似たような発言をしている。
奏章では現状登場していない。