空想樹認定
概要
『Fate/Grand Order』第2部『Cosmos in the Lostbelt』に登場する物体。
太さ数百メートル、高さ数キロメートルという規格外のサイズの真っ白な大樹のような姿で、「異星の神」なる存在によって地球にもたらされた、異聞帯の楔・要となっているモノ。異聞帯が汎人類史にすり替わるには、この空想樹の成長と根付きが密接に関わっているとみられる。
コヤンスカヤ曰く、「異星の神」のアルターエゴに属する者の目的は、全員がこの空想樹を育てきること。
これによって本来は消滅扱いになるはずの剪定事象の世界が異聞帯として復調し、汎人類史を侵略する兵器とされた。キリシュタリアによると、これがある限り異聞帯が消滅することはないという。
逆にこれが破壊されると、異聞帯は本来の状態へ立ち返る、つまり剪定された状態になり消滅する。ただし、空想樹の破壊と異聞帯の消滅にはタイムラグがあり、破壊することで即座に消滅するわけではない。
異聞帯においては、場合によっては何らかの手段で存在を隠蔽することもできるようだが、そうであっても異聞帯の外からであれば確認できる。ただし外からはうっすらとした光の柱という形でしか観測できず、詳細は読み取れない。
一定の水準まで育つと自らの意思(生存本能に近いもの)を持ち始め、敵対者が出現すれば自ら魔力光を発し、表面の裂け目から魔力砲撃等の攻撃を行ってくる。最低でもサーヴァント複数で立ち向かうことが前提である魔神柱とほぼ同程度の攻撃力を有しているようだ。
そのサーヴァントでさえ破壊は極めて困難であるが、異星の巫女だけは接触するだけで樹を破壊する能力を有している。その痕跡からはなぜか疑似聖杯が摘出された。
2部OPでは成長したと思われるこれらしき物体が映っており、その枝の内側は異世界の空を思わせる風景が広がっている等、TYPE-MOON作品でよく使われる「世界のテクスチャ」との関係性を窺わせる。
Lostbelt No.1のintroの中で、空想樹との関連を示唆させるものとして、2016年に『検体:E』と名付けられた「『樹の根』のような姿をした地球外知的生命体」の存在が語られる。
だが、FGO世界での2016年というのは、人理修復を達成した12月31日に至るまで人理焼却状態であったはずであり、1年の空白期間とそれからの復調という世界的な混乱の中では絶対に起こり得ない出来事である。
あるいは、人理焼却という大災害が発生しなかったどこかの並行世界での出来事が波及したとも考察できる。
成長すると一応は植物なのか種子を吹き出す。ペペロンチーノの話によると、クリプターが異聞帯の王とうまくやっていれば空想樹の成長は順調になり、種子を吹き出すのは発育がいい証拠だという。
さらに、オフェリアによると異聞帯の安定と空想樹の成長は同義であるとのこと。しかし、空想樹の育成が進みながらもクリプターと異聞帯の王にまともな関係性を育めず異聞帯そのものも崩壊寸前だった世界が存在するため、この関連性は必ずしも適用できるとは限らないようだ。
その種子は自律行動し、しかもサーヴァントが対処しなければならないほどの戦闘力を有している。
当然ながら既存の生物とは完全にかけ離れていて、地球のいかなる生物の体系にも当てはまらない。しかも、それから発せられる鳴き声と思しき音は、人理焼却を乗り越えたマスターの誰もがトラウマになったあの新しい生命体と同じものである。
さらに成長すると、幹自体の構造にも変化が見られ、パーツが枝のように広がる。そしてパーツが剝がれた箇所の空洞からは銀河が見えるようになっている。
これは空想樹の開花が終わったことを示しており、またその銀河は見た目だけのものではなく、実際に銀河に匹敵する膨大なガンマ線とエネルギーが検出されている。ホームズ曰く「この惑星にあってはならないもの」
本来、剪定された世界を維持するということは、権能を持つ真正の神であっても決してできはしない。そんなことを成し遂げる時点で権能を超えた大偉業であると、北欧の女神は述べている。
このことは、彼女の構成要素でもある影の国の女王が、かつてゲーティアが起こした人理焼却事件を「権能を超えた人の業、大偉業」だと評したことにも通じる。
また、その北欧の女神と言葉を交わせたオフェリア・ファムルソローネは異聞帯が現在に存在するうえでの最大の問題点、剪定されてからの空白の期間について、空想樹そのものがその期間を演算していたという仮説を残している。つまり、異聞帯とは剪定された歴史をもとに空想樹によって創造され、白紙の地球に出力された世界だというのである。
これはもはや歴史の編纂というより"創造"であり、かつて星を支配した主神級の神霊でさえ、現代の地球で此処までの権能を振るうことはできないらしく、逆説的にこの大事件を起こした黒幕がそれら以上の存在であることを示唆している。
異星文明から飛来した艦であるゼウス達オリュンポスの神々にとっては理解できなかった存在であったセファールとは違い、こちらは理解できる仕組みだという。異星文明の存在とはいえ、地球に定着した彼らでも理解できるということは、セファール以上に地球のルールに近しい存在の模様。
空想樹の関係者である異星の巫女の本質に気づいたアフロディーテからはその存在を皮肉られた。
地球の白紙化現象の一端として「宙からの信号が途絶えた」とあるが、その内容とは、空想樹から伸びた枝が天幕を形成したことによって電磁波以外が通らなくなっている事であった。したがって事実上、生き残りの人類は地球に閉じ込められている状態である。
デイヴィット・ブルーブックが見た空想樹
各章の序章に登場するデイヴィット・ブルーブックが語るところによれば、空想樹によって2018年になった直後の汎人類史全ての人類が殺害されたのだが、抹殺から白紙化までの顛末は恐ろしくおぞましいもので、そのスケールを質量そのままに叩きつければ纏めての虐殺ができるにも拘らず、「樹枝」が全ての生物へと目がけて的確に伸びてきて、全人類70億人一人一人丁寧に心臓を貫いて殺害し塵にするという、執拗さすら感じ取れる手段を用いた。これによって、おおよそ三か月で地球は白紙化されたという。
その姿勢はまさに人類を愛したが故に焼却した獣とは真逆と言えるものでもあり、僅かに生き残ることができたのは地下施設にいたために偶然逃れた者のみ。
現在の白紙化された地球では空想樹によってもたらされた異聞帯、性質上は白紙化の対象とはならない場所である彷徨海、僅かに残った残留物を除けば全て白紙化されているはずだが、デイヴィット・ブルーブックはそれ以外で唯一まともに残っているとされている場所があることを突き留め、そこへ向かっている。
その場所はアメリカのネバダ州空軍基地、即ちエリア51である。
ブルーブックがエリア51で見つけたものは、『検体:E』に対しての実験の数々というものであった。人間に例えるなら拷問同然の人体実験を延々と繰り返される所業、そして『検体:E』は実験の最中、同族を呼び出す救命信号を発していた。
というのが、ブルーブックが見た空想樹とそれにかかわる事柄であるが、ここに本編との大いなる矛盾が存在する。
ブルーブックによれば樹によって、地球白紙化したというが、これはありえない。
なぜなら、地球の白紙化は空想樹が地球に降りてくる前に行われているからである。
これはクリプター、キリシュタリアによる観測によって明らかになっており2部5章後編のテキストファイルにも「この順番はとても重要である」と書いてある。また、ノウム・カルデアの職員シオンも、白紙化は2017年最後の日の一晩で地球は白紙化されたというこれを裏付ける観測結果を口にしている。
果たして、この矛盾と順番は何を意味をするのか。
第1部で言う所の魔神柱的なポジションではあるが、まだまだ謎が多い。今後のシナリオに注目していきたい。
ゲーム上では
章の終盤で、魔神柱戦と同じような独自のカットインと共に戦闘へ突入する。
なお、クリプターとそのサーヴァントとの共通点(クラスや能力等)は現在皆無で、各異聞帯の王とクラスが一致している。
メイオールのみイレギュラーで王とクラスが合致していないが、これは後述の展開が影響していると思われる。
攻撃は通常攻撃が全体攻撃でクリティカルが単体攻撃になっておりどちらも多段攻撃なのでかなりのNPを回収可能。
各空想樹はそれぞれパッシブスキルを保有しており、HPゲージをブレイクするたびパッシブスキルが入れ替わるというギミックが仕込まれている。そのパッシブスキルにどう対応するかが攻略の鍵になる。
種も含めて“人類の脅威”特性を持っている。
クラスは異聞帯の王と基本同じで、虞美人が自身を取り込ませたメイオールは例外でアサシンとなっている。
また、割り振られている天地人属性は各異聞帯の王と同じ。
各個体
命名規則は2部2章時点で「地球から観測できる銀河の名称」からなのではないかと推測されている。2部3章でその法則性に気づいたホームズは、何か別の可能性を思い至っている。(この可能性は2部7章でテペウも感付いている)
オロチ
初めてカルデアが交戦した、Lostbelt No.1のロシアに根付いた白い空想樹。名称は担当クリプターであったカドックによる呼称。クラスはライダー。
カルデアの攻撃で機能停止状態に陥り、そこに突如として現れた異星の巫女によってトドメを刺されたかのように崩壊した。
ただし、この個体は他6つの空想樹とは違い、イヴァン雷帝が「異星の神」を信用していなかったことから、大地に根を張ることを許されていなかった。雷帝が討伐された時点でようやく「根付いたばかり」の状態となった。
宝具に相当する攻撃スキルは「ハレーション(光暈)」。
後発の個体と照らし合わせると、その語源は地球から120億光年離れたところに存在する同名の銀河からか。
ソンブレロ
Lostbelt No.2の北欧に根付いた血のような色の空想樹。クラスはキャスター。
オフェリアが異聞帯の王と良好な関係を築いていたため成長は順調で、種子を吐き出し始めていた。
終盤にスルトが幹の大半を体内に取り込んだが、その大半は切り取られておらず、彼の討伐によって復活する。しかしその影響か、異星の巫女の干渉無しで切除が可能なレベルに強度が低下していた。
スルトは取り込んだ空想樹に関して(植物だから)意思などあるまいが、奥底にて「刈り取られるのは厭だ」「生きたい」「死なない」「許さない」と命の炎で訴えていたという。
宝具に相当する攻撃スキルは「コラプサー(崩壊星:ブラックホールの昔の呼び名)」。
地球から5000万年光年離れたところに同名の銀河が存在する。
メイオール
Lostbelt No.3の中国に根付いた空想樹で、前述した2つの空想樹と違い、既に開花が終わっている。クラスはアサシン。
始皇帝の繁栄の礎となった扶桑樹の内部次元に仕込まれており、芥ヒナコとコヤンスカヤ以外の誰にも気づかれることなく、扶桑樹の力を吸い上げて成長を続けていた。カルデア陣営と異聞帯陣営の両方を共倒れさせようと考えたコヤンスカヤによって姿を現し、項羽の死によって手が付けられなくなるレベルで怒り狂った虞美人が自らを取り込ませる事で覚醒した。
この展開の関係から唯一“魔性”特性を持っている。
宝具に相当する攻撃スキルは「レッド・ハレーション(赤色光暈)」。
地球から約5億光年の位置にある融合銀河がその名の由来であると思われる。
スパイラル
Lostbelt No.4のインドに根付いた空想樹。クラスはバーサーカー。
最初から明確に目視できる形で、撹乱も何もなしに存在していた空想樹。だが異聞帯の王が上空で周囲を警戒している上、「乳海」と呼ばれる猛毒の海で守られている為、発見が容易だが切除は困難。
もともとカルデア陣営がインド異聞帯に来た時点で、メイオールと同程度あるいはそれ以上に成長していたが、当初はこれといった動きがなく安定していたため、カルデア陣営も敵陣の動向を優先して探っていた。
だが、乳海を突破したカルデア陣営を確認した異星の神の使徒の手によって本格的に開花し、メイオールを黒く変色させたような格好となった。
また、異聞帯の王がいかに絶対神の力を持ちつつ異星の神の使徒に唆されて心変わりしたとしても、ユガの周期まで短縮する計画を実行に移せたのは、この空想樹の力なくしては不可能だったらしい。
戦闘では初の「クリプター+サーヴァント+空想樹」という組み合わせになる。
名称の由来は渦巻き状の銀河の総称である渦巻銀河または、射手座にあるミニスパイラル(いて座A)からか。奇しくも異聞帯の王は弓の名手で馬を召喚して戦っていた。
マゼラン
Lostbelt No.5の大西洋に根付いたとされる空想樹。別名「アトラスの世界樹」。
海域からでも存在は確認可能だが、海域から直接見えるのは蜃気楼であり、本体は都市部に潜入できないと確認できない。
当地のクリプターの言によれば地表の8割を覆う超大規模なものへと成長している。別名はゼウスが名付けたもの。
別名の由来となるアトラスはキリシュタリアが契約した3騎のサーヴァントの一角から名付けたもの。彼を空想樹に留置して起動させることで、空想樹を異星の神が降臨するために使うことができないようにしつつ、1人の例外を除いた人類全てを神へと昇格させ、絶対の生存権を築くための世界樹とした。
しかし、獅子身中の虫の裏工作によって焼かれた結果、計画は破綻し異星の神は降臨。やがて炎は空想樹を焼き尽くし、カルデア陣営が戦うことも無く消滅した。
本来の名前マゼランの由来は、マゼラン雲とみられる。
セイファート
Lostbelt No.6のブリテン島に根付いていた空想樹。別名「トネリコの大樹」「世界樹」。
カルデア陣営が訪れるよりもかなり前に、異聞帯の王が中身を干してしまい枯れている。さらに当地のクリプターであるベリル・ガットによって燃やされ、既に異聞帯を保つ機能は失われている。
名前の由来はセイファート銀河と思われ、大質量ブラックホールがある。
クエーサー
Lostbelt No.7の南米に根付いていた空想樹。カルデアの大西洋異聞帯攻略時点で、空想樹のネットワークから切り離されていた。
南米異聞帯が存在していながら、何故か樹自体の反応は探知されなかったが、真相はセイファート同様既に枯死しており、その機能をある超生物が取り込み引き継いでいたため。
ゆえに南米異聞帯の切除には、その超生物を打倒するという無理難題がカルデアに課され、周囲の植物全てが空想樹に塗り替わった空想樹海という史上最悪の異聞帯が立ち塞がった。
その名前は、銀河の一種とされるが非常に遠方に存在するため地球からは恒星のようにしか観測できない天体を指す分類「クエーサー」に由来すると思われる。外宇宙に関わる要素が多く見られたこの異聞帯ならではの命名と言えるだろう。
地獄界曼荼羅
アルターエゴ・リンボが、異星の神に仕える中で吸い上げてきたノウハウを用い、新たな8本目として作り上げた人工の亜種空想樹。
かつて下総国で土気城を飲み込み変異させた「厭離穢土城」はこれの未完成版であった事も判明し、後の平安京特異点において遂に空想の根を降ろすに至った。
なお「曼荼羅」は宇宙を表す言葉でもあるため、空想樹の命名法則からは外れていない。またオリジナル同様自立する種子を吹き出す機能も有しているが、北欧異聞帯のそれとは違い赤くなっている。
作中ではリンボがこれと融合してビーストに至ろうとしたが、リンボには人類悪の絶対条件である人類愛がなかったため失敗し、莫大な魔力リソースとしてのみの運用となった。
上記の展開上この戦闘は空想樹戦ではなくリンボ戦として扱われており、空想樹戦のBGMは使用されていない。
盈月
『Fate/SamuraiRemnant』コラボイベント『盈月剣風帖』にて登場。
上記リンボの経験・手法を丸々真似した異星の使徒・伯爵が、慶安四年の江戸へ偽装した特異点に作り上げた、9本目かつ第2の人工となる贋作空想樹。
しかし伯爵は、根を降ろすための手引きを彼女と共にしたに過ぎず、空想樹そのものはあるサーヴァントの宝具によって成り立っている。
なお、こちらも一見は命名法則から離れているが、盈月=月を天体の一種として捉えるならば、地獄界曼荼羅のように「宇宙という括り」として法則に則っている格好となる。
スパイラル以来5年ぶりの空想樹戦でもある。
余談
上記の通りホームズは2部6.5章で退去するまでに「オロチ・ソンブレロ・メイオールそしてスパイラルすべて銀河の名称」「他の天体からの侵略兵器なのだろうが、それになんの意味がある?」「あれだけの魔力量があればゲーティアのように、熱量として使うだけで地表を焼却できる」「なのになぜわざわざ銀河の模倣に使っている?あれは本当に侵略兵器の類なのか?」と推理している。
2部2章では彷徨海との合流を最優先にし空想樹の切除を後回しにしようとしたカルデアだがシトナイはそれを否定し「後回しにするのは危ないの、時間が経てば、そのぶん空想樹は成長してしまう。完全に根付いてしまったらどうするの?ダメだよ、切らなきゃ」と一刻も早く空想樹を切除することを推奨している。ナポレオンからも「だろうな。樹はでかくなって根付く程に、伐採作業は難しくなるのが道理」とその意見を肯定している。
リンボは2部4章で「この惑星を囲う、数多有限の“最果て”なり!」と発言している
2部6章でトネリコは「─────空想樹。異星で作られた、宇宙を閉じる為の針」「仕組みはもう分かっている。設計思想は美しいけど、私には関係ない」「天球よ。宇宙はお前にくれてやる。だがブリテンは私のものだ」と空想樹が作られた目的とその真の利用方法に気づいていた節がある。
テペウも2部7章後編でカドックから「空想樹に本物も偽物もない」と言われ、「本物も偽物もない、大小はともかく、形さえ合っていればいい」「木の中にある銀河など本物である筈がないというのに我々はあれを銀河と認識している」「『大樹の中に銀河がある』まではいい、しかしそれが異聞帯の定礎になるものなのか」「事実、空想樹であるORTが休止していたにも拘らずミクトランは存続していた」「『銀河のエネルギーを利用している』のではなく、それはあくまで二次的なもので、本筋として『銀河がなくてはいけない』のか?あの木々は銀河であることに意味があると……?」と考察している。
いずれにせよ罪の清算を終えた後の追及が待たれる。
章をクリアすると「空想切除」の文字が出てくる。