解説
物体の質量と速度によって対象を破壊する兵器である。
特にSF作品において核兵器、生物兵器、化学兵器、爆弾、プラズマ兵器、ビーム兵器、音響兵器、レーザー兵器などの、破壊や殺傷に運動エネルギー以外を利用する兵器の対として使われる。
現実では、銃砲の類がほぼ全ての運動エネルギーを使用している。
ここでは特に大きな質量を持つ物体を撃ち出す兵器を分類する。
運動エネルギーとは
運動エネルギーは「質量」×「速度の2乗」に比例する。
銃砲などで弾丸などを飛ばし、対象にぶつけて破壊する兵器を考えたとき、破壊力を増すには弾丸の質量か速度を増せばいいことがわかる。
とくに第二次世界大戦まではより大きな砲弾を発射するため、より大きな大砲を製造し、巨砲を積んで戦場に向かう兵器が開発された。
ただし重い物を飛ばすには、比例して大きなエネルギーを必要とし、飛ばされる物体もエネルギーに耐えられる硬度が求められる。結果として重く、硬度の高い特別な金属や構造を持った物体が質量兵器には要求され、自然と砲弾の数も少なくなる。
同時に発射する砲身も衝撃に耐えなければならず、通常より堅牢な構造が必要となって来るが、メンテナンスの問題もあり、やはり使用回数は少なくならざるを得ない。
徹甲弾
戦車の戦車砲や艦砲などで使用される大きく重い砲弾。鉄より比重の重い重金属のタングステン弾や劣化ウラン弾が作られた。
しかしながら命中性、砲弾を運ぶ際に余りに大きい、重すぎると扱えない、単純な大質量弾を撃ち出すのは限度がある為、現代では砲弾の質量をこれ以上重くするより火薬を改良したり、弾体を軽くする方向に改良する事で速度を重視する傾向が強い。特に戦車砲弾では大口径砲から小口径砲を撃ち出す事で高速化するAPDS弾、純粋な運動エネルギーで貫通させるより塑性流動を起こす事で侵徹を行うAPFSDS弾、等が登場している。
また戦車は小型化し、戦艦と呼ばれる艦種の戦闘艦はどの国の軍隊からもなくなった。
フィクション
上記の徹甲弾の例にある通り、現実では今以上に大きく重い砲弾は扱いにくいだけで不要と見做されるようになった。また高性能火薬の登場により実弾兵器の性格は、高速化の方向にむかっている。
そのため質量兵器は、フィクションの世界に登場するものがほとんどである。
コロニー落とし
宇宙から人工的に作られた衛星都市(スペースコロニー)を落下させる質量兵器の代名詞。(ただ、コロニーは本来兵器ではないので質量兵器と呼んでいいのか微妙である。)
地球の引力、重力効果による加速と既存の建造物を利用することで弾速と砲弾確保の問題をクリアした質量兵器。また落下するだけであるため、発射するための砲身や火薬を必要としない。さらにコロニーがもともと衛星軌道に移動する機能を有するために簡易に兵器転用が可能、遠隔操作で軌道修正が出来るなど、あらゆる面で利便性が高い。
ただし、コロニー自体は住居などの機能が主なので住民の避難の必要があり、小惑星や隕石とは異なり空洞だらけなので、実際は落下中に大気圏で崩壊し大部分が燃え尽きてしまうらしい。
また、そういった問題を解決しても、その極めて過剰な破壊力から惑星そのものに影響を及ぼしてしまうこともあり、使用にはリスクが伴う。
質量兵器は、砲弾に特殊な素材を必要とする。そのため作品に登場させる場合、作者は様々な設定を巡らし、「何を砲弾に使うか?」という点に独創性が試される。
また質量兵器が登場する作品は、核兵器のような汚染をもたらす汚い爆弾、レーザー兵器のエネルギー源として核融合炉などが使用できない世界観であることを暗に強調する舞台装置として使用されることもあり、クリーンな兵器という側面を持つ。
しかし質量兵器であっても、その砲弾の大きさ、質量が極めて大きい場合、地球環境を著しく破壊するものもあるため、全ての質量兵器が生態系や環境破壊を避ける目的で使用される訳ではない。
この特殊さと異常さも相まって通常兵器とは、一線を画する変態兵器の一種と見做されることもある。
現実としての構想
なお上記の「宇宙空間から人工物を加速落下させ,その質量をもって攻撃する」という構想は
実際に米国で”神の杖”(低軌道上の人工衛星から棒状タングステン体を地上目標へ撃ち込む)として研究されていると言われている
Pixiv的解説
質量兵器の代名詞たるコロニー落としから大質量の物体が落下することで大規模な破壊をもたらす光景を連想し、転じて巨乳や巨尻などが見る者に与える衝撃を表現して、これを質量兵器と称する。
関連イラスト
関連作品
『ガンダム』
コロニー落としと言えばガンダム。(わざわざ作中の条約で禁止しているくらいである。)
シリーズによっては隕石や小惑星をぶつけるという作戦も登場した。
また、マスドライバーで大質量弾を射出するというタイプの質量兵器も用いられている。
『ガンダム00』
大質量を射出する兵器は無いが、GN粒子を用いた防御手段を敵味方の両陣営が備えるようになった1stシーズン後半から、「GN粒子やGNフィールドを表面に纏わせた剣や槍で相殺しながら叩く=MSそのものを質量兵器として扱う」という戦術が見られるようになった。
尚、ガンダム00以降の作品では、ビーム兵器の優位性が崩れる事態が起きた時、実体(質量)兵器への回帰が起こるようになった。
『ガンダムAGE』
AGE-1のタイタスとスパローが該当する。これも大質量を射出するのではなく、格闘戦特化機体、すなわちMSそのものを質量兵器として扱うというもの。
両機体ともビームライフルが通用し難い敵を相手にする為のもので、タイタスは「質量とパワーと推進力と剛靭性を以て、敵の装甲ごと耐ビームコートを破壊する」、スパローは「パワーとスピードを以て、重くて硬い刀剣の切断力を上げ、動きの速い敵を討つ」。
射撃のような瞬間的な力に対し滅法強く、ビームも拡散・反射するナノラミネートアーマーの存在により、MSそのものを質量兵器とする戦法-鈍器による殴り合い・刃物による斬り合い-がMS戦闘に於ける主戦法となっている。また弾体高速射出型ではあるが条約で禁止されている兵器がある。
月面からマスドライバーで射出した岩を地球へ落下させる場面が物語の山場で登場する。曰く「井戸の底(地球)へ石を投げる」。落下の衝撃だけで核爆発並みのスパーク(赤外線~X線)が発生した。
マスドライバーは、噛み砕いて言うと「宇宙にコンテナを打ち上げる巨大な大砲」であり、もともとは平和利用のために建造され、SF作品では兵器として転用されることがあるものの兵器ではない。
『超時空要塞マクロス』
巨大な戦艦が人型ロボットに変形して敵の戦艦をぶん殴り、そのまま味方部隊が敵艦内に突入する「ダイダロス・アタック」が登場する。衝突部位をバリアーで覆うなど、マジンガーのロケットパンチより、ちゃっかりしている。
『トップをねらえ!』
惑星に推進装置を取り付けて利用する兵器が登場した。
木星を利用したバスターマシン3号ブラックホール爆弾、地球を利用したバスターマシン・ドゥーズミーユ(douze-mille)など。
ドゥーズミーユはスーパーメガティックPK(超能力)で亜光速まで加速した地球をぶつけるという、かなりぶっ飛んだ兵器だったが敵も理論上、宇宙で一番重いブラックホールを体内に取り込んでくるなど、物理学に喧嘩を挑んだ。
『海底軍艦』
大和級四番艦轟天号ないしラ號など同じコンセプトだが、異なる数多くの艦が登場する。
最大の特徴は艦首に回転衝角(ドリル)を装備しており、全速力で突進し、衝角攻撃で敵を粉砕する艦そのものが質量兵器となっている。
『銀河英雄伝説』
ドライアイスの小天体に宇宙船のエンジンを乗せ、限りなく光の速さに近い加速を与えて撃つという作戦が登場した。相手は阻止するどころか発見することもできないまま、この作戦を許している。
大質量であることは勿論、亜光速で吹っ飛んでくるため威力は桁違いである。
『黄金銃を持つ男』
007のシリーズの一つ。殺し屋フランシス・スカラマンガが愛用する、金で作られた専用弾を使用する黄金の拳銃が登場する。
金の比重は19.32であり、質量を活かした武器という意味では普通の弾丸より威力が出ると思われる。しかし拳銃の弾のサイズでは比重の差は出にくく、大きな差はないだろう。
ちなみに最も比重が大きい物質はオスミウムで22.57である。
『ダイの大冒険』
空を移動する大魔王バーンの宮殿から地上に向け、巨大な石柱を落下させる「ピラア・オブ・バーン(バーンの柱)」が登場する。
『NARUTO』
「山土の術」や巨大な岩石落としなどの大規模土遁、「天碍震星」、口寄せ・「屋台崩しの術」、大規模水遁など、兵器の概念に当てはまるかどうかは不明だが、質量を利用した攻撃方も少なくない。
戦慄のタツマキなどのエスパーは質量攻撃を多用し、タンクトップマスターなどの怪力キャラクターなども質量弾を用いる。
神の杖をモチーフとした対地攻撃用衛星兵器ODINおよびLOKIが登場。
ODINは衛星軌道からキネティックロッドを投下する事で対地攻撃を行う。
LOKIは複数の衛星と大小のキネティックロッドを組み合わせる事で広い攻撃範囲と威力の調整が出来るODINの改良型となっている。
04では衛星軌道上に残る小惑星ユリシーズの破片をコントロールし目的の場所に落着させるメガリスが登場。
インフィニティでは同じく衛星軌道上に残る小惑星片へとレーザーを照射し、表面で爆発を起こす事で落着させるOLDSと呼ばれる兵器が登場している。
5及びインフィニティでは人工衛星であるSOLGが降下、迎撃が行われている。