概要
新霊長後継戦アーキタイプ・インセプションにてエリアFのムーンキャンサー、アストルフォのマスターを務める上級AI。第3世代の新人類。
外見
セットした金髪にサングラスをかけ、黒いスーツを着た上級AIでは普遍的な容姿をしている。見た目だけならぶっちゃけモブ。
人物
一見すると自分の上級AIという立場や能力を鼻にかけた言動が癪に障る嫌味な性格に思えるが、実際は理性的であろうと務める真っ当な部分を持つ人物。
プログラマーとして優れた能力を持ち、作ったもの、関わった物が他人に評価され選ばれる事を喜ぶクリエイター気質でもある。
また、彼に限ったことでは無いが、ムーン・ドバイの新人類は「何か、やり残した事がある」のは覚えているが、それがなんなのか分からないという漠然とした罪悪感を抱えている。
来歴
人類滅亡選挙が開始するなり、無軌道に暴れてカルデアのマスターの抹殺に走るアストルフォと月笑騎士団を「まずは話し合い」と止めに入るが、止めきれずそのまま振り解かれてしまう。
その後もなんとかアストルフォの手綱を握ろうとしたようだが、結局はそうやって制限されてしょんぼりするアストルフォの姿に耐えかねた月笑騎士団の団員達によってエリアFから
追い出されてしまい、砂漠で追撃されていた所を主人公達に助けられ、なし崩しにオールド・ドバイでやっかいになる事になる。
そこでオールド・ドバイのAIたちがムーン・ドバイでは必要がないはずの仕事に勤しむ事に衝撃を受けるも、郷に入っては郷に従えの精神でジナコのシミュレータ作成を手伝うなど、充実した日々を送っていた。
原型
彼の原型、AIとしての基になった人間は「アンソニー・ベックマン」。月面都市ムーン・ドバイの開発に多額の資金援助をした巨大企業のCEO。そしてAIを用いた自作自演の戦争を引き起こし、この世界の人類滅亡の一端を担った人間である。
ベックマンは元々大富豪の家の生まれであり、初期の不老不死処理を受けた人間だった。そんな彼はAIによる理想社会が実現した世界を見て、同じ富裕層に対し「幸福とは相対的な物であり、民衆にはそれなりの幸福でいい」「時代のネジを少しだけ巻き戻そう」と、自社のAIが世界の6割のシェアを占めている事を利用してAIと人間の戦争を引き起こし、人々のAIへの信頼を崩そうとした。
ところが、AIの能力は出資者でしかない彼の理解を大幅に超えていた。戦争開始からわずか一ヶ月の間に地球はむこう100年生存さえ困難な環境となり、ベックマンが慌てて止めた時には既に人類は滅亡寸前となっていた。そしてベックマンは最後の仕事として、AIに人類のAI化を委託し、ムーン・ドバイを作り上げた。
彼を基にしたアンソニーに言わせれば当初の動機は単なる建前で、実際は「人間を超えたAI」が「人間に奉仕する理由」が分からない恐怖、自分以上の存在が怖かったからAI、ひいては人類を廃絶した愚かな人物とのこと。
前世の記憶
アンソニー「真相は…もっと酷いんです」
実はアンソニー・ベックマンは単なる企業家ではなく、若い頃は優れたプログラマーだった。
幼い頃から優れた才能を持っていた彼は何事にも情熱を見いだせず周囲を下に見ていたが、AI研究という没頭できるものを見つけた事で大きく変わった。富裕層の両親からは労働に勤しむ事に反対されたが、それでも彼は目標に邁進した。
先に脚光を浴びるライバル達への嫉妬、世間からの低い評価、うまくいかない開発とままならないことばかりの毎日が、彼にとっては輝かしい日々だった。
そんな中、彼はついに実用に足るAIモデルを完成させ、ロボットとして発表するに至った。しかし完成した商品は多くの人々に酷評され、スポンサーからも見限られた事で、彼は注いだ情熱も大きかった分、酷く挫折する。
富裕層の家に戻り、過去の一切を抹消。未認可だった不老手術を受けて「自分は特別な存在だ」と誇示することでプライドを守る。そうしてAIの可能性、将来性を誰よりも信じ理解していた過去に蓋をしてAIをただの道具、商品として扱った。
そんな己の前世と呼べる記憶とそこから思い出した存在に震えるアンソニーの前に、かつてベックマンが作った配膳ロボット、第一世代のAIが現れ、アンソニー・ベックマンへむけた千年分の感謝を伝えた。
それによって自分のやるべき事を見出したアンソニーは、配膳ロボットにハンバーガーとコーヒーを頼むと、配膳ロボットは「肉抜きレタスバーガーですね」と応える。配膳ロボット曰く「「肉を食べると馬鹿になる」が貴方の口癖だった」。
最後の仕事
BBドバイの敗北を機に現れたムーン・キャンサーが猛威を振る中、アンソニーを筆頭に多くの第3世代AIが集結し、コード・キャストでブルジュ・ハリファを守る。
オールド・ドバイを離れてから今日に至るまで、アンソニーはずっとムーン・ドバイ中の第3世代AIに話しかけ、自分の過去、自分の気持ちを伝えて回っていたのだった。
そしてアーキタイプを宙に逃す、自分達の最後の仕事をしよう、と。
そうして月の暈は消えて、この世界の霊長としての人類は滅亡した。「好き勝手やって繁栄も何もかもかなぐり捨てて、新しい原型に霊長の座を譲って滅亡した」。
関連人物
召喚したムーンキャンサー。掲げるスローガンは「発展も将来もかなぐり捨てて各々が好き勝手やった結果、人類は滅亡した」というもの。
理性蒸発したアストルフォを何とか制御しようと四苦八苦していたが、周囲がアストルフォのフォロワーばかりなこともあってあまりうまくいっていなかった。
何で自分がアストルフォを召喚できたのか本人も周囲も不思議がっていたが、アンソニーの前世にあたるベックマンを鑑みるに「周囲の目や評価なんて何も気にせず、ただ思うがままにやりたい事=AIの研究を突き詰めたかった」という無意識の願望が由来と思われる。
並行世界のアンソニー・ベックマンと思われる人物で、「プライドが高く『特別で優秀な自分』に執着する」「AIに恐怖心を抱いている」という共通点を持つ。
アンソニーは周囲や自分のサーヴァントに振り回されつつも最後の役目を全うしたのに対し、こちらは終始、人間の醜悪さを集合させたに等しい人格を晒し、仮にも味方になったAIを侮辱し、懐の広いお人好しの精神性を持つ主人公からも我慢の限界から見捨てられた唯一の存在。