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平成28年熊本地震

へいせいにじゅうはちねんくまもとじしん

2016年4月16日に熊本県熊本地方で発生したM7.3の本震とその前後の一連の地震活動
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平成28年(2016年)4月に熊本県で発生した内陸直下型地震


概要

地震の概要
  • 4月14日21時26分(日本時間)M6.5の地震で、熊本県熊本地方で震度7を観測した。
  • 最初の地震から約28時間後にM7.3の地震で、熊本県熊本地方で震度7を観測した。なお、本震の規模は兵庫県南部地震と同規模であった。

どちらも熊本県熊本地方が震源で、震度7に2回襲われる事態になった。14日のものが前震・16日のものが本震とみられたが、前例のない2度の大地震がそれぞれ別の断層で相次いで起きたことで、これら一連の地震活動を合わせて「熊本地震」とする見方が現在では有力となっている。


前震

発生日2016年4月14日
発生時刻21時26分頃
震央(震源地)熊本県熊本地方(北緯32度44.5分・東経130度48.5分)
震源の深さ11km
地震の規模Mj6.5・Mw6.2
最大震度7(計測震度6.6)
長周期地震動階級3(高層階では、立っていることが困難になる程の非常に大きな揺れ)
地震の種類大陸プレート内地震(右横ずれ断層)

(出典: 平成28年4月16日熊本県熊本地方の地震の評価(平成28年4月17日)


4月14日21時26分、熊本県熊本地方を震源とした深さ11kmのMj(気象庁マグニチュード)6.5/Mw(モーメントマグニチュード)6.2の一連の地震で最初の地震が発生し益城町で震度7(計測震度6.6)を観測し、中越地方の一部から九州地方の広範囲で震度1以上を観測した。

震度都道府県市区町村
7熊本県益城町
6弱熊本県玉名市 西原村 宇城市 熊本市(東区・西区・南区) 嘉島町
5強熊本県熊本市(中央区・北区) 菊池市 宇土市 大津町 菊陽町 御船町 美里町 山都町 氷川町 合志市
5弱熊本県高森町 阿蘇市 南阿蘇村 八代市 長洲町 甲佐町 和水町 上天草市 天草市
宮崎県椎葉村

※震度4以下は省略

※緊急地震速報「マグニチュード6.3~6.5 最大震度6弱~6強」と予測し、発表しています。


気象庁は地震検知から3.8秒後の21時26分42.5秒に緊急地震速報(警報)を九州地方7県(鹿児島県から福岡県)、山口県および愛媛県の各県の区域を対象として発表した。



本震

発生日2016年4月16日
発生時刻1時25分頃
震央(震源地)熊本県熊本地方(北緯32度45.2分・東経130度45.7分)
震源域熊本県熊本地方(南西側)~阿蘇地方(北東側)にかけてのおよそ35km
震源の深さ12km
地震の規模Mj7.3・Mw7.0
最大震度7(計測震度6.7・6.6)
長周期地震動階級4(高層階では、立つことが困難で、はわないと動けないほどの猛烈な揺れ)
地震の種類大陸プレート内地震(右横ずれ断層)

(出典: 平成28年4月16日熊本県熊本地方の地震の評価(平成28年4月17日)


4月16日1時25分、熊本県熊本地方を震源とした深さ12kmのMj7.3/Mw7.0の地震が発生した。この地震で西原村益城町で震度7(計測震度6.6・6.7)を観測し、山形県の一部から九州地方までの範囲で震度1以上を観測した。地震発生直後には、有明海と八代海の沿岸に津波注意報が発表されたが、2時14分に解除され、津波は観測されなかった。また、ほぼ同時刻に大分県中部でM5.7の地震が発生している。

震度都道府県市区町村
7熊本県西原村 益城町
6強熊本県南阿蘇村 菊池市 宇土市 大津町 嘉島町 宇城市 合志市 熊本市(中央区・東区・西区)
6弱熊本県熊本市(南区・北区) 阿蘇市 八代市 玉名市 菊陽町 御船町 美里町 山都町 氷川町 和水町 上天草市 天草市
大分県別府市 由布市
5強福岡県久留米市 柳川市 大川市 みやま市
佐賀県佐賀市 上峰町 神埼市
長崎県南島原市
熊本県南小国町 小国町 産山村 高森町 山鹿市 玉東町 長洲町 甲佐町 芦北町
大分県豊後大野市 日田市 竹田市 九重町
宮崎県椎葉村 高千穂町 美郷町
5弱愛媛県八幡浜市
福岡県福岡市(南区) 遠賀町 八女市 筑後市 小郡市 大木町 広川町 筑前町
佐賀県白石町 みやき町 小城市
長崎県諫早市 島原市 雲仙市
熊本県荒尾市 南関町 人吉市 あさぎり町 山江村 水俣市 津奈木町
大分県大分市 臼杵市 津久見市 佐伯市 玖珠町
宮崎県延岡市
鹿児島県長島町

※震度4以下は省略

※緊急地震速報「マグニチュード7.1 最大震度6強~7」と予測し、発表しています。



長周期地震動階級

気象庁が2013年3月に長周期地震動の観測情報の提供を開始して以来、発震(4月14日21時26分、M6.5)では階級3、その40分後の地震(4月14日22時7分、M5.7)では階級2を記録、さらに翌日15日深夜の地震(4月15日0時3分、M6.4)と翌日16日深夜に最大規模となった地震(4月16日1時25分、M7.3)では観測開始以来初めてとなる階級4を共に記録したとしている。

また、新潟県中越地震東北地方太平洋沖地震でも長周期地震動階級4を観測していたことが明らかになった。


前震

階級地方地域
3九州熊本県熊本地方
2九州佐賀県南部 長崎県島原半島
1九州福岡県筑後地方 長崎県北部 熊本県阿蘇地方 熊本県球磨地方 熊本県天草・芦北地方 大分県中部 大分県西部 宮崎県北部平野部 宮崎県北部山沿い 宮崎県南部平野部 宮崎県南部山沿い 鹿児島県薩摩地方

(出典:気象庁ホームページ長周期地震動より)


本震

階級地方地域
4九州熊本県阿蘇地方 熊本県熊本地方
3九州福岡県筑後地方 大分県中部 大分県西部
2関東千葉県北西部
近畿大阪府南部
中国・四国鳥取県西部 徳島県北部 高知県東部 高知県西部 山口県東部
九州佐賀県南部 長崎県北部 長崎県島原半島 熊本県球磨地方 熊本県天草・芦北地方 大分県北部 大分県南部 宮崎県北部平野部 宮崎県北部山沿い 宮崎県南部平野部 宮崎県南部山沿い 鹿児島県薩摩地方
1関東茨城県南部 群馬県南部 埼玉県北部 埼玉県南部 千葉県北東部 千葉県南部 東京都23区 神奈川県東部
中部新潟県下越地方 富山県東部 富山県西部 石川県加賀地方 福井県嶺北 福井県嶺南 長野県中部 長野県南部 静岡県西部 愛知県西部 三重県北部 三重県中部
近畿滋賀県南部 京都府北部 大阪府北部 兵庫県北部 兵庫県南東部 兵庫県南西部 兵庫県淡路島 和歌山県北部 和歌山県南部
中国・四国鳥取県東部 鳥取県中部 島根県東部 島根県西部 岡山県北部 岡山県南部 広島県北部 広島県南東部 広島県南西部 徳島県南部 香川県西部 愛媛県東予地方 愛媛県中予地方 愛媛県南予地方 高知県中部 山口県北部 山口県西部 山口県中部
九州福岡県福岡地方 福岡県北九州地方 福岡県筑豊地方 佐賀県北部 長崎県南西部 長崎県壱岐地方 鹿児島県大隅地方

(出典:気象庁ホームページ長周期地震動より)


地震活動

確認された最大震度5弱以上、または、M5以上の地震を掲載しているが、観測した地震が非常に多い

  • 2016年
地震発生日時刻震源地規模(M)最大震度
4月14日21時26分熊本県熊本地方(前震)M6.57
22時7分熊本県熊本地方M5.86弱
22時38分熊本県熊本地方M5.05弱
23時43分熊本県熊本地方M5.15弱
4月15日0時3分熊本県熊本地方M6.46強
0時6分熊本県熊本地方M5.15強
1時53分熊本県熊本地方M4.85弱
4月16日1時25分熊本県熊本地方(本震)M7.37
1時25分大分県中部M5.76弱※
1時30分熊本県熊本地方M5.34
1時44分熊本県熊本地方M5.45弱
1時45分熊本県熊本地方M5.96弱
3時3分熊本県阿蘇地方M5.95強
3時9分熊本県阿蘇地方M4.25弱
3時55分熊本県阿蘇地方M5.86強
7時11分大分県中部M5.45弱
7時23分熊本県熊本地方M4.85弱
9時48分熊本県熊本地方M5.46弱
9時50分熊本県熊本地方M4.55弱
16時2分熊本県熊本地方M5.45弱
4月18日20時41分熊本県阿蘇地方M5.85強
4月19日17時52分熊本県熊本地方M5.55強
20時47分熊本県熊本地方M5.05弱
4月29日15時9分大分県中部M4.55強
6月12日22時8分熊本県熊本地方M4.35弱
8月31日19時46分熊本県熊本地方M5.25弱

※先発地震と分離不可能なため、定かはない。


  • 2017年
地震発生日時刻震源地規模(M)最大震度
7月2日0時58分熊本県阿蘇地方M4.55弱

  • 2019年
地震発生日時刻震源地規模(M)最大震度
1月3日18時10分熊本県熊本地方M5.16弱
1月26日14時16分熊本県熊本地方M4.45弱

(出典:気象庁資料より)


発生回数は2018年4月13日の時点で4481回、記録に残る直下の地震では歴代最多となった。

現在も無感地震を含めて余震活動が続いている。


周辺の地震

発生日2019年1月3日
発生時刻18時10分頃
震央(震源地)熊本県熊本地方(北緯33度01.6分・東経130度33.2分)
震源の深さ10km
地震の規模M5.1
最大震度6弱
地震の種類大陸プレート内地震

新年開けて3日後の2019年1月3日18時10分、熊本県熊本地方を震源とした深さ10kmのM5.1の内陸直下型の横ずれ断層型地震が発生した。この地震で熊本県の和水町で震度6弱を観測し、震度1以上は九州地方から中国・四国地方の一部まで及んだ。なお、長周期地震動階級1以上を観測した地点はないが、地震の規模が小さめでも、震源が非常に浅いため、震央付近では大きな揺れとなり、交通網などに影響がでた。しかし、負傷者が1名で済み、大きな被害は出なかった。約3年前に発生した「平成28年熊本地震」との直接的な関連は震源地が震源域から約20km程度離れているため薄く、別の未知の活断層が動いた可能性があるとしている。しかし、2016年の地震の地殻変動による応力場の影響を受けている領域であるため、間接的には影響している。

震度都道府県市区町村
6弱熊本県和水町
5弱熊本県熊本北区 玉東町

※震度4以下は省略

※緊急地震速報「マグニチュード4.8~5.1 最大震度5強」と予測し、発表しています。



地震の影響(地学現象)

  • 阿蘇山での火山活動

今回の地震により、阿蘇山の中岳の火山活動に影響を与え、同年10月に噴煙高度1万1000mに達するほどの爆発的噴火が起きた。具体的には、地震によって阿蘇山内部の流体の移動経路が変わったことで、噴火が生じたことが研究により判明した(九州大学の研究「熊本地震と、その後の阿蘇山噴火の関係が明らかになってきた ~火山噴火の予測に向けた新たな手法~」より)


  • 南海トラフ想定震源域への影響と地震前に起きていた現象

本地震の約13日前に三重県南東沖を震源とした最大震度4を観測するM6.5のプレート境界型の地震が発生した。プレート境界型の地震は約72年ぶりである(なお、誤解される可能性があるので記述するが、4月1日の三重県南東沖の地震と今回の地震は、地震発生メカニズムが異なっているや距離が離れていることから、直接的な関連はないので注意)。

また、この地震の本震後に三重県沖と日向灘の震源域で微小地震が活発化し、四国沖でもM4クラスの地震が発生し、東南海・南海地域にも影響していたことが判明している。

南海トラフ巨大地震について知りたい方は、『南海トラフ巨大地震』を参照するといい。


地震のメカニズム

右横ずれ断層型の内陸地殻内地震であり、北東~南西方向に伸びる震源断層を持つと推定され、布田川・日奈久断層帯の活動と見解が示されている。

日奈久断層帯と布田川断層帯が交差しており、これらの断層帯が連動して動いたことで、前震と本震を中心とした熊本県熊本地方における一連の地震活動が引き起こされた可能性が指摘されている。


地表地震断層

なお、約30kmの広範囲で地表地震断層が出現し、阿蘇山カルデラにも達しっていた。その出現した範囲は既存の断層とは異なっていることも多数あったと見解が示されている。


基本的にM7以上でないと地表に活断層が出現することはないが、M7.3の規模を誇る兵庫県南部地震でもここまで大きく地表に断層が出現することはなかったため、いかに断層が大きくずれ動いたかが分かる。


日向灘沿いの地震との関連

今回の地震を含めて九州地方では最近、地震活動や火山活動が活発化しており、それらは日向灘沿いのプレートの固着域との関連が示唆されている(日向灘の地震に先立つ九州内陸の地震)。すなわち、これは「日向灘沿いでのM8クラスの巨大地震の切迫」を示唆するものだとも指摘されている。

日向灘沿いでは過去に繰り返し、M7クラス以上の地震が発生してきたエリアで、プレート内地震とプレート間地震が平均数十年に1回の割合で発生している。


課題と変化

今回の地震をきっかけに、2011年の東北地方太平洋沖地震と同様に新たな課題と教訓を残した。


  • 自治体を含め、多くの人の「地震」に対する認識の甘さ

九州では多くの自治体がホームページやパンフレットで、政府や研究機関が示した地震発生確率の低さをPRしており、この地震が発生する前までは、熊本県では「安全地帯」とPRしていた。しかし、今回の地震を受けて、それは大きく覆ることになる。

熊本県が「安全地帯」としていたのは、 過去120年間M7以上の地震は発生していないからという理由である。確かに過去120年間の大地震の履歴だけを見れば、熊本県では大規模な地震は発生していない。しかし、この地域では複数の活断層帯が存在していることは、以前から分かっており、何れもM7クラスの地震が想定されていたエリアでもあった。また、特に活断層帯における地震の発生周期は、東北地方太平洋沖地震のような海溝型地震よりも非常に長く、大体の平均発生間隔は数千年~数万年に達しており、地震リスクの評価は正確には行えないのが現状で、不確実性は免れない。

改めて「地震」に対する認識を改めて見直さなければならない地震となった。


  • 気象庁が大地震後の発表文を変更

今回の地震では2回の大地震に襲われ、しかも4月14日に発生した地震よりも、16日の地震の方が大きくなってしまった。このように最初の地震が本震と思われていたものが、その後にさらに規模の大きな地震に襲われるということが確認されている。その他の事例では、2011年の東北地方太平洋沖地震にもあり、3月9日にM7.3の地震が発生したのだが、その2日後にM9.0の巨大地震が発生してしまった。

そのため気象庁は今回の地震以降は、大地震発生後に「揺れの強かった地域では、地震発生から1週間程度、最大震度〇〇程度の地震に注意して下さい。特に地震発生から2~3日程度は、規模の大きな地震が発生することが多くあります。」というように「余震」という呼び方を控える内容に変更するきっかけとなった地震である。


  • 長周期パルスの観測

長周期地震動については、東日本大震災でも観測され、大阪市にある大阪府咲洲庁舎が長く揺れ、最大で2m以上も左右に大きく揺れたことでも話題となった。そのため、高層ビルにおける課題は徐々に揺れが大きくなり それが長時間にわたる「長周期地震動」が課題だと考えられてきた。

しかし、ある危険な揺れが観測されていたことが後に判明したことで、その考え方は今回の地震を受けてさらに課題を生むことになった。それが「長周期パルス」という特殊な揺れだ。この揺れは同じ周期の長い揺れでも、地震による大きな変位によって一度に生じる地震動で、「長周期地震動」とはまた違う揺れである。実際にそれが観測されたのは、西原村役場に設置されていた震度計で、しかも国内観測史上初である

「長周期パルス」は、特に内陸の活断層が大きな地震を起こした時に生じる問題で、高層ビルが傾いたり、変形したるする恐れのある危険な揺れである。今回の地震では、観測地点の付近には被害が拡大するような高層ビル群がなかったので、そこまで注目を浴びなかった。しかし、この揺れが東京などの大都市を襲った場合は、不測の事態をもたらす危険があることを地震大国である日本は改めて理解しておかなければならないと言える。なお、「長周期地震動」に関しては、大きな揺れになるまでのある程度の猶予があるのに対して、「長周期パルス」は大きな揺れになるまで最大でも数秒程度しかないので、事前の備えが大前提となる。


「地震低リスク」PRは慎重に 九州の自治体、企業誘致で多用ウェザーニュース熊本地震から3年、高層ビルや免震ビルの新たな課題「長周期パルス」を参考


被害や影響

2018年4月時点で死者数は273人、負傷者数は2800人以上に上り、19万6000人以上が避難をした。

都道府県死者数負傷者数住宅損壊・損傷床上・床下浸水非住宅被害
山口県3棟
福岡県17人255棟
佐賀県13人1棟2棟
長崎県1棟
熊本県270人2737人19万8243棟270棟1万3324棟
大分県3人34人8342棟59棟
宮崎県8人41棟

(出典:熊本県熊本地方を震源とする地震 第121報より)


震源地近くの益城町および熊本市の同町に隣接する地域では特に被害がひどく、最大震度7の揺れで建物の崩壊が発生し、その他にも、熊本県内や九州各地で震度3〜6弱までの地震によって、徐行中の九州新幹線が脱線、九州道や国道が各地で寸断されたことにより、高速流通網にも大きな打撃を受けることとなった。


また余震が大変多いという特徴があり、発生直後から震度5弱以上の強い余震が頻繁に発生し、また震度6弱~7以上の強い余震が起きるのではないかと危ぶまれる事態となっていた。


一方で内陸部が震源であることから、津波や広範囲に渡る大規模火災といった災害は発生しなかったものの、熊本城阿蘇神社などの重要文化財、国道57号線、阿蘇大橋や俵山トンネル(2016年12月24日復旧)、熊本県東北部の幹線道・菊池・阿蘇スカイライン(2016年12月22日、対面通行を行うことにより仮復旧)などの交通の要衝の破砕・崩落が続いた。その結果、熊本城、国道57号線、阿蘇大橋はいまだ復旧のめどは立っておらず、また、住宅の崩壊による圧死や避難所における住環境の劣悪さに人的被害が熊本県内で増加の一途をたどりつつある。


さらに4月16日の午前1時25分ごろに再び大きな地震が起きた。この時のマグニチュードは7.3(Mwでは7.0)と14日のものより大きく、震度は当初6強と考えられていたが後の分析で益城町の一部では局所的に再び震度7だったことが判明し、短期間に震度7に2回襲われるという、観測史上例をみない震災となった。さらに本来一週間程度で収まるはずの余震は勢いを衰えさせることなく震度5弱を超える余震が散発的に起き、大分県でも余震とそれに伴う土砂崩れが起きて被害が拡大している。


震源自体も断層に沿って熊本県北西部、大分県側と熊本県南西部へと移動したとみられ、そのため前日に被害の大きかった益城町に加え阿蘇地域に被害が拡大。特に南阿蘇村は火山地帯であることによる土壌の弱さも一因となって地滑りや地割れなど甚大な被害を被った。この結果、東海大学農学部の阿蘇キャンパス周辺に住んでいた学生に犠牲者3名が出たばかりでなく、熊本市と大分市を結んでいた同地区の国道57号線が土砂崩れにより破壊、国道57号線と南阿蘇村以南を結ぶ阿蘇大橋も崩落したことにより、併設するJR豊肥線・南阿蘇鉄道も壊滅的打撃を受けることとなった。また阿蘇地域で盛んな農業や畜産業にも打撃を与えた。

益城町や熊本市東区・南区は地盤の弱い川沿いのエリアに特に甚大な被害が発生、熊本市民病院は使用不能となり建て直しを余儀なくされ、南区では液状化現象が発生。

また、さらに幅広い断水停電も発生し、元々老朽化で立て替えの話が出ていた人吉市役所や宇土市役所も崩壊。

熊本県高校野球のメッカ・熊本県営藤崎台球場も、一時は「夏の高校野球選手権大会」の開催が危ぶまれ、県外の開催も検討されていたが、急ピッチの復旧作業により無事開催することができた。


その後も余震が続き、熊本市内・益城町内のみならず、熊本県の広範囲に及んでおり熊本県立劇場や熊本県立美術館(5月28日復旧)が損害を受け使用不能、同月19日には八代市でも震度5弱~5強に2回見舞われて老朽化していた同市役所や八代市立病院が使用不能となった。

さらに29日には大分県由布市で震度5の地震が発生。

これらの震災の直接被害で合計49人が亡くなり、行方不明となっていた大学生も、8月14日、死亡が確認され、大分県も含めて避難生活での持病悪化などで震災関連死の認定を受けた人は200人を超えるに至った。深夜の本震発生や余震の恐怖から車中泊をして体調を崩した者が特に急増。8月14日時点で避難所14ヶ所で約1800人が生活していたが10月までに仮設住宅やみなし仮設住宅の整備が進み避難所はほとんどが閉鎖された。


また「九州は地震が少ない」との今までのイメージから古い一般家屋の耐震化工事が遅れがちだったこともあり、農業地帯の古い日本家屋を中心に多くの被害が発生し、1,2万棟を越える家屋が損壊。

中でも西原村・益城町・南阿蘇村の被害は大きく、益城町では町内半分の家屋が半壊以上〜全壊の被害を被っている。


一方で津波や大規模火災の発生が無かったことや原子力関連施設から遠く離れていたこと、熊本市中枢の都市機能は致命的打撃を受けていなかったため、全国から復旧のための技術者が派遣され、被害が比較的軽かった地域の復旧が早い面もある。

同年5月後半以降はさすがに余震の回数自体は減少し規模も縮小してはきたが完全には止んではおらず、たまに震度3〜4のやや強い地震が起こっており、特に宇土市や宇城市、熊本市西区では執拗な余震の被害に遭っている。度重なる地震で地盤が緩んでいた最中の同年6月末には数日にわたって梅雨前線の影響で強い雨が降って土砂崩れなどが発生、6人が死亡した。同年8月30日には「警戒態勢」を「復興段階」に引き下げたが、その翌日の8月31日午後7時46分、M5.2、震度5弱の地震が発生、いまだ油断がならないことを改めて示した。


救助などで自衛隊が地元の部隊のみならず全国各地の部隊から災害派遣され、米軍も最新鋭輸送機・オブスレイを物資輸送用に派遣した。また全国各地の自治体からも職員が応援に派遣された。東日本大震災の被災地からも多数の職員が派遣され、災害時の対応を伝授した。


観光・畜産業・農業への打撃

一方で観光・畜産業・農業への打撃は計り知れない。これは上記にあるように余震がいまだ収まっておらず、熊本・大分両県を縦断する国道57号線、JR豊肥線、阿蘇大橋、地域の足であると同時に観光鉄道としての一面のある南阿蘇鉄道が遮断され、復旧のめどが立っていないことが大きい。これらの道路・鉄道は観光はもちろん、物流・農産物の流通に利用することが一層大きいからである。また、地割れによる田畑、水路の損壊により、田植えが不可能になったり地中の給水設備が損壊したところもあり、それらの復旧にも多くの時間を要するものと見られている。

中でも阿蘇大橋は復旧に数年以上を要するとみられている。

また、九州有数の温泉地である熊本県北西部にある阿蘇地域、由布院を中心とする大分県中部に余震が多く、今回の震災で熊本の象徴である熊本城の石垣・櫓が多く崩落したのに続き、2018年6月20日、元太鼓櫓も地震の影響による石垣の崩壊と梅雨末期の大雨が重なったことにより倒壊した。

ほかにも阿蘇神社の楼門・社殿が崩壊、本妙寺の石灯籠が倒壊、さらに地下水の水脈が移動したことにより水前寺成趣園(水前寺公園)の湧水が激減して一時的に池が干上がる(2018年までに回復)、菊地水源の散策路修復、阿蘇市の内牧温泉の温泉が地盤のズレにより出なくなり掘り直しを余儀なくされるなど、観光地・熊本により大きな打撃となっている。

被害が軽微だった黒川温泉などの観光地でも、道路の寸断や風評被害で客足が激減するなどの被害を被っている。

また、熊本県内の映画館は熊本市中央区にある「電気館」、熊本県中南部の「TОHОシネマズ宇城」を除いて再開されていなかったが、9月13日に熊本県中北部の「TOHOシネマズ光の森」、11月23日に熊本市中央区の「ユナイテッド・シネマ熊本(旧シネプレックス熊本)」が復旧、唯一残されていた熊本市南区の「TОHОシネマズはません」も2017年3月16日復旧の運びとなった。

民間企業だけでなく熊本大学も震度6に2回見舞われて研究用の機材や建物が多数損壊し、中でもiPS細胞の研究を行っていた熊本大学発生医学研究所の機材損壊と2ヶ月半に及ぶ研究の停滞は山中伸弥ら学会の大物達が危機感を表明する会見を行うほどの影響があった。

畜産の研究を行って来た東海大阿蘇キャンパスも損害が大きく2年以上の休止を余儀なくされており、農学部は熊本市内の東海大キャンパスに移動することとなり、2017年1月24日、校舎の再建を断念、農業実習のみ南阿蘇で行うこととなった。



注意

既に発災から2年以上経由しているため、直接的な支援物資や災害ボランティアの受付はほとんど終了している。


あと、過去の大震災の時にあったような「古着・不要物・千羽鶴を送る」という行為はやめよう。なぜかと言えば、現地の人の手を煩わせてしまうことになり、たとえ善意で行なったとしても、結果的には迷惑行為になりかねないのだ。詳しくは下記のイラストを参照。


防災の知識

古着以外の迷惑が少ないと思われる物資でも、今回の震災は物流が何かと滞りがちであったため、被災地の各自治体は支援物資の新たな受け入れができないところ、個人での支援物資送付を断らざるを得ないところがある。


現在復興も進んでいて、ぶっちゃけ今足りないのは諸般の事業や被災者生活支援の資金である。

「何かを送りたい」と思うときは各自治体の公式サイト・SNS公式アカウントの最新情報を熟読し、できれば自治体の義援金口座への現金支援やふるさと納税の形が望ましい。


また、原発反対を主張する者の中には九州電力や官邸に執拗な電話をかけたりそれを推奨する行為をSNSで拡散する者もいる。

日奈久断層帯は八代海から鹿児島県の薩摩川内市沿岸を経て東シナ海へと沈み込んでいくことから不安もわからないではないが、今回の被害地は鹿児島県の川内原発とは120kmも離れており、被害地域の停電復旧作業にあたっている九州電力にとっては作業妨害以外の何者でもなく、今原発を停止しても燃料が内部にあるうちはリスクはほとんど変わらず、むしろ停止作業に多大な手間とリスクがかかる。


また執拗な抗議電話は貴重な電話回線を無駄に占有する行為でもある。関係官庁や企業は復旧・救助作業のため頻繁な連絡が必要な時期であるため、九州電力をはじめ関係各所・官庁への不要不急な電話はいかなる用事であってもやめよう悪質である場合、「公務執行妨害」として逮捕となる可能性がある


これとは別に「誤った情報」をネットやSNS(特にツイッター)で流布する者もいる。もちろん「誤った情報」を鵜呑みにして悪意もなく広めた人々が多いと思われるが、中には「朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ」などという、明らかな悪意をもって「誤った情報」を広めようとする者がいる。情報を得るのに四苦八苦している被災者にとって、それらのデマは明らかに有害であり、パニックを起こしうることを、その人たちは知るべきである。

さらには崩落寸前の神社や八代市役所に心ない落書きをするものまで現れた。書かれていたのはありがちな人工地震陰謀論であり、落書きの主は逮捕された。

また、震災直後に「熊本市動植物園からライオンが逃亡した」とのデマを、海外ニュース画像を加工したコラ画像とともにツイートした神奈川県在住の20歳会社員が同年7月に偽計業務妨害容疑で逮捕されている。

著名人の支援活動

震災直後から多くの県出身有名人および有名人が寄付や炊き出しなどの支援活動を行った。

避難所への慰問や炊き出しに止まらず、多くのチャリティ活動が行われた。

県出身者では、水前寺清子が自身の代表曲「365歩のマーチ」の新バージョンを歌い、コロッケらも参加。

尾田栄一郎も出身地の熊本市東区に隣接する益城町ふるさと納税返礼品用としてONEPIECEの描き下しグッズ絵を提供され、一部運行を再開した南阿蘇鉄道、人吉温泉~湯前間を運行するくま川鉄道にもラッピング列車が期間限定で登場、11月27日にはルフィ役の声優田中真弓が高森駅(南阿蘇村)を訪れ運行開始を祝った。

また、この震災以降に宮崎美子など熊本県内での仕事やローカル局の仕事を増やすようになったり堀江信彦くりぃむしちゅーのように復興イベントを続ける県出身有名人も少なくなく、井手らっきょ伴都美子のように長らく東京で活動していた芸能人がこれを機に熊本に生活拠点を戻した例もある。


何か支援をしたい方に

上記のように、現在でも余震などで不透明な状況であり、交通網がある程度復活してきたとはいえ県外からのアクセスはまだすんなりとはいかない。迷惑をかけず支援する方法はやはり「間違いのない先への現金もしくはそれに准ずるものでの寄付」「被害地域企業の製品購入」に限る。

各市町村へのふるさと納税もおすすめ。


また、日本赤十字社および熊本県庁・熊本市・宇城市・西原村・大津町・嘉島町・宇土市・南阿蘇村・菊陽町・産山村・益城町においても寄付を受付けているため「どこの団体が信用できるかわからないが何かしたい」という方はそちらが勧められる。


なお、受付期間が限定されているものもあるため、リンク先を熟読の事。

義援金の受付は延長しているところが多いが、一部受付を終了している市町村がある。



平成28年熊本地震をモチーフにした作品

映画

  • いっちょんすかん

行定勲監督が2018年のくまもと復興映画祭に向けて製作した。

本震の日を舞台にしたコメディ映画で、キャストにローカルタレントも起用。

(地震シーンがあるため閲覧注意)

  • 駄菓子屋小春

八名信夫が監督を務めた、商店街を舞台とした作品。

漫画

アニメ

地震から復興描くオール熊本アニメ。声優も熊本出身者を多く起用。2020年1月放送。全12話

被災体験エッセイ漫画

  • ひさいめし(ウオズミアミ)。
  • ネココの熊本地震日記(みやわきりこ)

関連タグ

地震 災害派遣 西日本の直下地震 災害 阿蘇山


震度7を観測した地震

兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災):1995年(平成7年)1月17日5時46分頃に淡路島付近を震源として発生した地震。『20世紀に発生した戦後最悪の震災』となり、観測史上初の震度7を記録した。死者・行方不明者数は6437人

新潟県中越地震:2004年(平成16年)10月23日 17時56分頃に新潟県中越地方を震源として発生した地震。阪神・淡路大震災以来9年ぶりに震度7を観測した。死者数は68人。

東北地方太平洋沖地震東日本大震災):2011年(平成23年)3月11日14時46分頃に三陸沖を震源として発生した地震。『戦後最悪の震災』となり、日本の観測史上最大規模の地震となった。死者・行方不明者数は約2万2000人

北海道胆振東部地震:2018年(平成30年)9月6日3時7分頃に胆振地方中東部を震源として発生した地震。北海道内初の震度7を記録した。死者数は44人。

令和6年能登半島地震:2024年(令和6年)1月1日16時10分頃に能登半島沖を震源として発生した地震。日本海側に大きな被害をもたらし、13年ぶりとなる大津波警報が発令される事態となった。死者数は6人。


西日本で発生が懸念されている海溝型巨大地震

南海トラフ巨大地震:東海・東南海・南海・日向灘を震源として繰り返し発生している巨大地震。歴代の地震の中には東北地方太平洋沖地震の規模を上回る規模の地震も発生している。


外部リンク

平成28年熊本地震(気象庁) 平成28年熊本地震(内閣府) 平成28年熊本地震関連情報(総務省) 平成28年熊本地震の前震(Yahoo!JAPAN) 平成28年熊本地震の本震(Yahoo!JAPAN) 平成28年熊本地震における地表地震断層の特徴


激甚災害:地震や風雨などの大規模災害のうち、被災地域や被災者に助成や財政援助を特に必要とするもの。

エコノミークラス症候群:長時間同じ姿勢でいるときなどに、血流が悪くなり血栓ができて発症する疾患。

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