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羽田空港地上衝突事故

はねだくうこうちじょうしょうとつじこ

羽田空港地上衝突事故とは2024年1月2日午後6時頃に羽田空港内で発生した事故である。
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事故内容編集

発生日時2024年1月2日
発生場所東京都大田区羽田空港
第一機体所属日本航空
第二機体所属海上保安庁
犠牲者総計5名(海保機乗員)
負傷者総数15名(2024年1月2日時点)

日本航空・日本航空516便(新千歳発羽田行き)

機材エアバスA350-900 登録記号JA13XJ
乗員12名
乗客367名
負傷者数14名(2024年1月2日時点)
犠牲者数0名

海上保安庁・みずなぎ1号(羽田発新潟行き)

機材DHC-8-300 登録記号JA722A
乗員6名
負傷者数1名(機長)
犠牲者数5名

概要編集

2024年1月2日の夜、新千歳から羽田に向かっていた日本航空516便が、羽田空港C滑走路へ着陸直後に海上保安庁DHC-8(メイン画像)と衝突。双方は大破炎上してしまった。

幸い、516便の乗員乗客は火が回る前に脱出し全員が生存。多少の怪我人が出た程度だったが、海保機のクルー6人中5人が殉職(機長は生存したものの、重傷)する大惨事となり、日本エアシステム451便着陸失敗事故以来ほぼ30年ぶりとなる運行中の日本国籍旅客機による全損事故かつA350型機最初の全損事故となってしまった。


海保の航空機は、奇しくも2011年の東日本大震災で被災しながら、唯一修復された機体であり、前日に発生した能登半島地震を受けて被災地へ支援物資を輸送する予定であった。後に殉職した5人の司法解剖が行われ、全員の死因が全身挫滅であったことが公表された。衝突時の衝撃と機体の圧壊により、ほぼ即死状態だったものと推測される。


事故原因は現在調査中。


影響編集

この事故で羽田空港は滑走路全てを閉鎖したため後続便全16便が欠航。成田空港中部国際空港関西国際空港へのダイバートも続出したため、その救済として京成電鉄が臨時のアクセス特急を終電後に運行。JRも札幌から函館へ臨時特急(261系はまなす・ラベンダーを使用して4両で運行)を運行し、臨時「はやて」(普通車全車自由席、グリーン席とグランクラスは営業なし)と接続するダイヤを急遽設定して救済に当たったほか、新大阪行き「のぞみ」が普通車全車自由席で急遽設定された。特に2日は、東京発新大阪行と新大阪発東京行の2本が運転されたが、いずれも終点には24時を過ぎて到着するダイヤが特別に組まれた。また上記の影響で東京行きの長距離バス夜行バスには長蛇の列となり、一部の運行会社は増便や臨時便を出す対応に追われた。


翌日以降も事故調査と残骸撤去のために欠航便が続出。お正月帰りの客が足止めを喰らう事態になった。こちらも羽田の使用できる滑走路の他、成田空港も活用する形で臨時便が設定され救済に当てられた。7日までに残骸撤去、仮整備が完了し8日からC滑走路の運用が再開。欠航便も殆どなくなったが、損傷した施設の復旧を行うため一部着陸ルートの運用を1ヶ月ほど見合わせる模様。だが、この復旧作業も2週間後には完了した。


また、この事故でJALは最新フラッグシップ一機を喪失し、150億円の損失を出したが、保険が降りる上に代替機を発注した。


また宮内庁上皇陛下を始め皇族方が能登半島地震と航空機事故に関して大変心を痛めていると述べられている。


その他編集

事故機のうちJAL側のA350はフランス製だったため事故調査にはエアバス本社のエンジニアとフランス航空事故調査局(BEA)も参加している。後にアメリカの国家運輸安全委員会(NTSB)やイギリスの航空事故調査局(AAIB)も調査に参加すると表明した(前者はブラックボックスを始めとしたシステムの一部を、後者はエンジンを製造した国だったため)。また海上保安庁側のDHC-8はカナダのボンバルディア社製であるため、カナダ運輸安全委員会(TSB)も支援している。

また、警視庁も業務上過失致死傷容疑で捜査を進めているが、これに関して航空従事者、航空ファンを中心に批判の声が上がっている(海外では「再発防止」の観点を重視する為、「明らかな故意」でない限り刑事責任に問われる事は少ない)。これについては、航空安全推進連絡会議と日本乗員組合連絡会議も「調査は刑事捜査が優先されるものではなく、結果が再発防止以外に利用されるべきではない」という趣旨の緊急声明を発表している


また、メディアも警察や国交省から提供された事故調査の進展(管制官や生存した海保機機長の供述、管制交信の記録など)を報道しているが、これに関しても条約違反であると上記の航空従事者、ファン達から批判されている。この事故に関して現時点で出回っている情報が断片的なものであることや事故調査の目的が「再発防止」である以上、憶測に基づいた考えをSNS等で公開することは控えるように。関係者や団体への誹謗中傷(クルーや管制官はもちろん、捜査関係者も)や責任追及などもってのほかである


日本航空は事故直前の2023年12月、整備を巡る不祥事が発覚し批判を受けたが、この事故では乗務員の非常事態訓練の成果が見事に発揮されたと海外メディアを中心に高く評価されている。

JALは1985年の123便墜落事故の教訓から、安全対策には特に力を入れており、非常事態訓練の強化もその一環である。また本件の客室乗務員9人のうち半数が2023年4月入社の新人で訓練学校を卒業したばかりだった為、訓練の成果を遺憾なく発揮した事も全員脱出に貢献した要因とも言える。

SNSでも元・および現役両方の客室乗務員のアカウントから緊急脱出訓練の厳格さが語られている(日本のCA業界ではエマージェンシー+訓練を略して「エマ訓」という略称もある)。さらに日本航空は事故の教訓を伝えるために機体の残骸の保存を決定した。


この事故は機内安全ビデオ、説明の転換点ともなった。以前から乗客がこれらを無視する事態が問題視されており、興味を惹かせるために人気コンテンツや各国の伝統文化とのコラボや奇抜なBGM、演出を盛り込んだものが作られていたが、逆に安全設備の解説や対応法の説明から離れた本末転倒なものとなっていることも問題視されていた。一方JALはこれらの演出を一切含まない「真面目」なビデオを使っており、上記のような模範的な脱出が可能となった要素の一つとみなされたため、他社もこれらに追従する動きが高まっている。


JALの機内安全ビデオ


この事故は、CFRPを主な素材とした旅客機初の全損事故であり、その燃え方や残骸の焼け残り方も含めて、貴重なデータとなることが指摘されている。

また、撤去作業中、A350側の残骸から小規模な火災が発生したが、燃え広がることもなく直ちに待機していた消防車によって消し止められた。


この事故を皮切りに2024年の航空業界では事故やインシデント、不正が頻発することとなった。例えば、1月5日にはアメリカでアラスカ航空ボーイング737MAXの非常口ドア(事故機ではオプションを適用し、封鎖していた)が吹き飛ぶ事故が発生、死者は出なかったもののまたしても同機が運航停止を喰らっただけでなく、その調査の過程でボーイングの腐敗ぶりが次々と晒される事態となった。さらに国内外では飛行機同士の小規模な接触事故や誤侵入の事案、エンジンやバッテリーのトラブル、小型機の事故も多発し、5月23日には羽田事故の僚機同士の接触事故が起きている。さらにシンガポール航空機の急降下事故では、乗客に死者が出る事態となった。その後も7月にはネパールでCRJ200型の、8月にはブラジルATR72型機の墜落事故まで起きている。


さらに上記航空従事者らのSNSでは、羽田空港の芝生整備が非常に杜撰で標識が見にくいという問題点が指摘された。一方で国土交通省も地上灯火や誤侵入防止のシステムの整備や見直しを進めている。


事故から2ヶ月が経った3月2日、殉職した5人のクルーの海保葬が執り行われた。なお、殉職した副操縦士は事故の前年にも、航空事故の当事者となっていたことが判明している。(彼が教官として乗務した訓練機のセスナがエンジントラブルで大分に不時着した)


ペットの搭乗(搭載)に関する問題

なお、JAL機側の乗客乗員は全員生還したがペットの同伴が2件確認されており、そちらは置き去りにされたまま救助できなかった。

現状、国内主要航空会社において盲導犬などを除くペットの輸送は『受託手荷物』として貨物エリアに専用スペースを設ける形で請け負っており、客室同様に与圧と気温調整がなされているが基本的には『貨物』の括りである。緊急時において乗客はパスポートが入った手荷物すら持ち出すことはできず、荷物を置いて速やかに脱出することが求められる。まして貨物など顧みられることもなく、全てが終わってから無事かどうか確認するのが関の山である。

今回はそれが功を奏して乗員全員脱出という奇跡につながったわけだが、「人間の命が助かればペットの命はどうでもいいのか」という難しい問題をも浮き彫りにした。

これに関連し、件のペットたちは上記のように貨物扱いとしての輸送だったこともあり、海外の事例も参考にして『ペットの貨物扱い禁止』として手荷物で機内へ持ち込むことを求める署名も提出され、有名タレントが賛同して炎上する騒ぎとなり、当初はこの運動に賛同していた石田ゆり子も謝罪する羽目になっている。


これらの賛否両論は問題提起と議論における『ペットの客室同伴』について賛成派に『緊急時のペット救出』との混同が見られることが挙げられる。

本来ペットの客室同伴は『輸送中の貨物室における管理不備』を起こさないための取り組みであり、現在持ち込みサービスを展開している海外事例や一部国内航空会社においてもあくまで『手荷物』扱いであり、乗客の括りではないため当然緊急時には他の手荷物同様置き去りにすることが求められ、当然サービス利用時には緊急時には置き去りにする旨に同意する必要がある。また航空会社によっては、『家族にも等しいペットが手の届く場所にいるにもかかわらず置き去りにすることを求められる飼い主』による混乱を避ける目的で、飼い主本人の脱出優先度が乗客として最下位になる、つまり乗務員の前に最後の乗客として脱出することを求められる例もある。

このように、『ペットの客席同伴』と『緊急時のペット保護』は本来別軸の問題であり、むしろこの制度化においてもペット保護の可能性は人命を優先して否定されてきた経緯がある。


また、ペット保護の問題と切り離したとしても様々な課題を抱える制度であり、

  • あくまでも動物であり、全面的な意思疎通の図れないペットの行動に関して何らかのトラブルが起きた際、飼い主の管理責任をどこまで問えるのか
  • 動物アレルギーの乗客についてどのように配慮するか
  • ペットと言ってもどの個体も聞き分けが良いわけではない。特に緊急時にはパニックを起こし、飼い主が置き去りにする決意を固めたとしてもペット自身が吠えたり暴れたり逃げ出したりといったトラブルを起こす可能性が否定できないのではないか。
  • これらに関連して体躯の大きいペットをどこまで許容するか。極論、ほぼ手荷物として完結するハムスターならこれらの問題はないに等しいが、大型犬などでは無視できない問題となる。

と言った問題もある。

これらに対して賛成派が『かけがえのない生命に優劣をつけるのか。特に飼い主にとって家族同然であるペットの命は尊重しないのか』とまた別軸の意見を展開するため、そもそも議論にならず着地点の模索が困難という点がさらに問題をややこしくしているという面がある。


このことから、いわゆる中立的な立場からは「趣旨や気持ちとしては理解できるが、少なくとも今回のような事例では結局置き去りにせざるを得ず、手に届く場所にいるだけにかえって飼い主にとって負担になるのではないか」とする意見が比較的多い。


また、そこから関連してペットを連れた旅行では空路を利用すべきでなく自家用車や鉄道を使うべき、同伴せずペットホテルを利用すべき、そもそもペットのことを考えるのであれば飼った時点で旅行についてはある程度諦めるべきなのではないかなど、更に根本的な議論に発展することも多い。

実際に転居や旅行などで一度はペットを預ける経験をした者からも、「迎えに行った時の表情を見て後悔した」という意見もあり、そもそも「個体の性格や品種の特徴次第では旅行に連れ出すこと、あるいは飼い主が旅行をすることそのものがストレスになる」という観点もある。そのため「ペットがいるので泊を伴う旅行はしないし断る」「遠方への帰省など家族そろって家を空ける機会が強く想定されるため、ペットは飼いたいが飼わない」等の決断を下す人もおり、本来の議論から脱線して『ペットの扱いはどうあるべきか』というかなり根本的な問題にまで発展しつつある。


関連タグ編集

テネリフェの悲劇:1977年に起きた航空機同士の衝突事故。事故直後のニュースでも有名な事例として引き合いに出された。

ロサンゼルス国際空港地上衝突事故:1991年に発生。着陸したジェット旅客機が滑走路上でプロペラ機と衝突という、類似した事故。こちらは双方で死者が出てしまった。

航空事故 事故

JAL 海上保安庁 令和6年能登半島地震

マフィア梶田:成田空港にダイバートした便に乗っていた。

ザ!世界仰天ニュース:発生から9ヶ月後の2024年10月1日放送回で本事故を取り上げると告知されていたのだが、放送前はSNS上で原因調査中の出来事をバラエティ番組の題材に選ぶのは時期尚早ではないかと疑問の声が上がっていた…が蓋を開けてみれば放送尺の殆どが日本航空123便墜落事故の特集に割かれていたため、単なる視聴者の早とちりに終わった。

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