カタログスペック
頭頂高 | 39.2m |
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本体重量 | 143.2t |
全備重量 | 246.7t |
ジェネレーター出力 | 21,370kW |
装甲材質 | ガンダリウム合金 |
スラスター総推力 | 28,710kg |
概要
サイコガンダムの系譜に連なるかのような、40m級ニュータイプ専用大型モビルスーツ。
型式番号NZ-000は、冠された“NZ”が示す通りネオ・ジオンの象徴として開発された事を示しており、サイズに見合ったカタログスペックは同軍最強……を超え、『第四世代モビルスーツ最強』に到達している高性能機である。
機体設計にはグリプス戦役時に、密かにティターンズから鹵獲したサイコガンダムMk-Ⅱを始め、その他ネオ・ジオン製MS全てのノウハウが投入されている。
このため本機は、グレミー・トトが率いたネオ・ジオン叛乱勢力において、フラッグシップ機として運用された。
しかしながら実戦においては、操作性の煩雑さが極限域に達した必然として、プルツーのような過剰なまでの施術を受けた強化人間でなくては扱えなくなっており、戦力としての安定性を極端に欠いていた。特にアクシズ宙域の攻防では、マシュマー・セロの気迫に負け防衛地点(任務)の放棄すら起こしている。この際には、『クィン・マンサありき』で戦場を構築していたラカン・ダカランも激しく動揺し、一時的に撤退せざるを得ない状況に陥った。
無論、ドック艦ラビアンローズを撃沈し、アクシズ内部での戦闘においてガンダムMk-ⅡおよびΖガンダムを事実上の撃墜に追い込んでいるが、かといって“その程度”の戦果では開発・運用コストに見合っているとはとてもではないが言えるものではない。
上述の『グレミーの叛乱』も含めた、第一次ネオ・ジオン抗争末期の一連の戦闘では、有り体に言って、規格サイズ機であるドーベン・ウルフ部隊の方が、よほど高い戦果を挙げている。これは、ドーベン・ウルフに搭乗していたのがラカンを始めとした、一年戦争期からの歴戦の猛者ばかりであった事も大きなファクターではあったが、それでも“モビルスーツの恐竜的進化の限界”を白日の下に晒した面が大きいだろう。
何よりもサイズの大型化は、モビルスーツ本来の開発思想である近接戦においての不利を、克明にしており、ザクⅢ改からは一刀をまともに浴びせられ、フルアーマーΖΖガンダムにはミサイルの爆炎に紛れた等の要因があったとはいえ簡単に取り付かれている(『肘関節の内側』にもぐりこまれると、物理的形状の問題で咄嗟の対応が不可能となる)。
結局のところ、クィン・マンサを最後として『人型』かつ『大型・規格外』の機動兵器は開発系譜が途絶えているため、モビルスーツと大型モビルアーマーの運用戦術を統合するという思想は、技術的に一旦頭打ちとなったようである(達成には更に半世紀以上がかかった)。
また、上述の近接戦における不利は、後年における『小型モビルスーツ』の急速な台頭に通ずるものがある。
総じて、様々な要因の重なりでもあるのだが、歴史としては本機を変節点として、以降のモビルスーツ開発のトレンドは機能収斂に向かっている。
コクピット
サイコガンダムMk-Ⅱ同様に、頭部に内蔵される形で据えられている。
大型機だけあり、全天周囲モニター・リニアシートを搭載するために充分なスペースを有し、「マスク」部分が上方向にスライドして、パイロットが搭乗する。更に、やはりサイコガンダムMk-Ⅱと同じく、頭部が脱出ポッド機能も備えており、首との接続面には機動用のスラスターが配されている。
なお、コントロール・スティックは後年に採用されたシリンダースロットルに外観の似た、独自のものが採用されているが、グリップ周囲にボタンが配置されているわけではなく、機能的には通常のスティックと大差がない。
武装
額部三連メガ粒子砲
V字アンテナ中央部に、縦に三門並べられたメガ粒子砲。
脱出ポッド時には、唯一の武装となる。
手首部メガ粒子砲
キュベレイ他、多くのアクシズ開発機に見られる固定武装。左右に一門ずつ、計二門を内蔵。射角が広く、大型ゆえに規格装備(ビームライフルなど)をマニピュレーターに装備できない本機の、メイン射撃武装である。
なお、キュベレイ・シリーズと異なり、ビームサーベルとしての機能は有さない。
バインダー部メガ粒子砲
肩部フレキシブル・バインダー先端部に一門ずつ配されている、固定武装。
長大なバインダーがメガ粒子の収束バレルを兼ねているようであり、当該武装から射出されるビームは拡散しない。
胸部メガ粒子砲
胸部左右に、計二門を内蔵装備している。
収束バレルが実質的にゼロのため、この武装自体は単なる拡散メガ粒子砲である。
しかしながら、後述のメガ粒子偏向器との組み合わせにより、多機能武装として機能する。
詳細は「メガ粒子偏向器」を参照。
背部メガ粒子砲
ファンネルコンテナ先端部左右に、計二門を固定装備として有する。ファンネルコンテナ自体が本体との稼動軸を有するため、背面のほぼ全体をカバーする。
ファンネル
背部ファンネルコンテナに三十基(キュベレイの三倍)が搭載される。
しかし、ハマーン軍との戦闘(内乱)では、同数のファンネルを搭載したゲーマルクと激しいファンネル戦を繰り広げたが、クィン・マンサはメガ粒子偏向器(Iフィールド・ビームバリア)というアドバンテージを有していたにも関わらず、敵機に決定打を与えられなかった。
『決戦兵器』として開発され、多数のファンネルを搭載した本機が、開発側の想定していたほどの戦果を上げられなかった事が原因となり、後年代ニュータイプ専用機種のファンネル搭載数は基本的に少数となったとされる。
なお、クィン・マンサの背面構成は、近似した形状のバインダーが背部と臀部の二段型として接続されているが、ファンネルコンテナは背部(上段)のバインダーだけであり、臀部(下段)バインダーは単なるフレキシブルスラスターである。
ビームサーベル
本機のサイズに合わせて設計された、専用の大型サーベル。柄部の形状は中世の騎士剣を思わせ、本機がフラッグシップ機として開発された背景を垣間見る事ができる。
形成されるビーム刃は長大だが、出力面で特に優れているというわけではないようで、20m級の各敵機と切り結んだ際には、一方的に競り勝つような事はなかった。
メガ粒子偏向器
両肩に埋め込まれるように内蔵された、本機の特殊装備。肩の軸部、黄色に塗装されたスリット部がこれに当たる。この偏向器を基点として、Iフィールドの斥力展開面を任意に変更することが可能となっている。
斥力面を外側、かつ凸レンズ状に全周囲展開すれば、単純なIフィールド・ビームバリアとして機能する。
防御機構としてだけでなく、前方向(つまり、胸部メガ粒子砲照射方向)に向けて凹レンズ状に収束展開すれば、メガ粒子の収束バレルと同じ効果を果たし、胸部砲の貫通力・射程を大きく向上させられる。逆に凸レンズ状にして照射すれば、射程は更に短くなるが拡散範囲の極めて広い火砲となる。
1ユニットで多機能を賄おうという思想は、宇宙世紀0120年代以降に開発された、ヴェスバーに近いものがある。
特に凹レンズ展開機能は、近接戦闘にとって邪魔(弱点)となり易いロングバレルを機体から撤廃させることに成功させるなど、多くのメリットを示した。
しかしながら同時に、防御・攻撃の切替判断を常にパイロットに意識させる事に繋がるため、クィン・マンサの操作系を更に煩雑にしてしまい、戦力としての不安定化を呼び込んだ一因となったと推察される。
結局は、防御には専用の防御機構、攻撃には専用の攻撃兵器という単一機構の方が好まれたようであり、「メガ粒子偏向器」は(ダウンサイジング試作機を除いて)後時代のMS・MAに採用される事は無かった。
バリエーション
クシャトリヤ
OVA『機動戦士ガンダムUC』に登場。
サイコフレームを用いてダウンサイジングされたクィン・マンサの後継機。
詳細はクシャトリヤを参照。
クィン・マンサ(アンネローゼ機)
PS3ゲーム『機動戦士ガンダムサイドストーリーズ』に登場。
第一次ネオジオン戦争後にグレミー派残党が、クィン・マンサの残骸を回収し、補修を加えた機体。
ニュータイプ兵士のアンネローゼ・ローゼンハインが運用したが、彼女のニュータイプ能力がクィン・マンサのサイコミュに対応出来なかった為、リミッターが設けられている。ファンネルの同時使用可能数に制限があるなど性能面ではプルツー搭乗時より劣る部分が多い。
外見上の特徴として全身が紅く塗装されている他、胸部にはアンネローゼのパーソナルマークとなったマルコシアス隊のエンブレムがマーキングされている。
クィン・マンサ・セプテット
筐体ゲーム『ガンダムトライエイジ』に登場する、クィン・マンサの強化・改造を目的としたIF機体。
両肩に合計六枚のバインダーを装備しており、それぞれにプルシリーズ一人が搭乗する事でバインダーを独立したモビルアーマーとして運用可能となっている。
完成すればネオ・ジオンの強力な戦力になる筈であったが、本機の開発を進めていたグレミー・トトが、エゥーゴのMSパイロットにうつつを抜かしてしまった為に本機の開発がおろそかになり、完成する事は無かったとされている。
余談
元々のクィン・マンサの頭部はオーラバトラーのような有機的でラスボス然としたデザインであったという。しかし、その頭部デザインが採用されるには至らず、同作で頭部デザインの変更が指示されていたドーベン・ウルフの頭部デザインを基にしている。
クィン・マンサがV字アンテナ付きの頭部を有しているのは、それがガンダムタイプとしてデザインされていたドーベン・ウルフの頭部の初期案であったためである。