概要
1978年に特撮TVドラマとして放送が開始された和製『スパイダーマン』作品の一つ。
全41話。
ニコニコ動画をはじめとするインターネットコミュニティで名づけられた。さらに略して「ダーマ」とも。
本家と一線を画す『カオスっぷり』ゆえに、爆発的な人気を獲得した。
由来は、名乗り口上の時にあまりにも力んでいるため、「スパイダーマッ!」と聞こえることである。
またこれは本家との区別のための呼称としての意味合いも持つ(以前は「東映版」「和製スパイダーマン」等と呼ばれたことが多い)。
カルト的人気を誇るため動画サイトでの無断アップロードが後を絶たないが、著作権が複雑なため即時削除対象となる。しかし百万回死んでもなお地獄から蘇り続けた男、スパイダーマッ!
pixivでなら手描きなので心配無用。すり替えておいたのさ!。
本家との違い
主人公は山城拓也というレーサーだったり、スパイダー星人のガリアに変身能力とマーベラーを与えられたり、敵はモンスター教授率いる「鉄十字団」だったり。
というかいろいろと違いすぎて説明不能。
大雑把にいえば、東映特撮色全開のスパイダーマンである。
ストーリー
モンスター教授率いる「ケツ十字……いえ、「鉄十字団」によって科学者であった父を殺され、自身もまた瀕死の重傷を負った青年、山城拓也。彼の命を救ったのは、数百年ものあいだモンスター教授によって幽閉されていたスパイダー星人の王子ガリアだった。彼の命と引き替えにスパイダー星人の超能力を得て生還した拓也は、父とガリアの復讐を果たすべく、スパイダーマンとして「鉄十字団」の陰謀に敢然と立ち向かう!
登場人物
本作の主人公。詳しくは該当記事を参照。
ガリア
地球から遠く離れたM77星雲の第17星列に存在するスパイダー星の王。
母星をモンスター教授によって滅ぼされてしまい、鉄十字団に復讐を誓う。
瀕死の拓也にスパイダーエキスを注入させスパイダーマンとして蘇らせた。
佐久間ひとみ
拓也の恋人であるフリーカメラマン。
山城新子
城南大学に通う拓也の妹。
亡き父に代わり、山城家を切り盛りする。
山城拓次
拓也の弟で小学1年生。イタズラっ子で野球が大好き。
間宮重三
劇場版から登場したインターポールの秘密捜査官。
鉄十字団を壊滅すべくスパイダーマンと協力する。
敵側を除けばメインキャラの中で唯一、スパイダーマンの正体を知る人物である。
地球征服を目論む鉄十字団のボス。詳しくは該当記事を参照。
アマゾネス
鉄十字団の女幹部。作戦執行や諜報活動を行うほか、マシーンベムやニンダーを指揮する。
普段は週刊ウーマンの編集長吉田冴子に化けており、地球の情報を収集している。
ベラとリタ
アマゾンの秘境に眠っていた女ゲリラのミイラを、モンスター教授が蘇生させたもの。
毒の弓矢やマシンガンを使い、スパイダーマンを苦しめる。
鉄十字団が送り込む動物と機械の特性を持った合成怪人。
地球侵略の為に様々な破壊活動を行う。共通として巨大化能力を持つ。
スパイダーマンから「冷血動物」と称されている。
ニンダー
鉄十字団の戦闘員。集団で行動する事が多い。戦闘の他、基地で武器を製造したり仲間の怪我を治療する者もいる。
人間に化ける事も出来るが、体の一部に機械が露出してる等、一般人に怪しがられた事もあった。
主な武器はナイフ。
解説
MARVEL独特の、人とヒーローのはざまで悩む青年としての要素を残しつつも、東映特撮としてきっちり仕上げた快作、あるいは怪作。ちょうど東映特撮としては『快傑ズバット』の制作直後だったこともあり、そのハイテンションな勢いが持続していたものと思われる。
MARVEL社との協議の末、商業上必要ということで巨大ロボットレオパルドン、本家のウェブシューターに似たスパイダーブレスレットなどのガジェットをはじめとして、和製ヒーローらしさも多く含まれている。
それゆえに、本家ファンからしてみれば非常に不自然なシーンも数多く散見されるが、特撮自体のクオリティは非常に高く、マーベル側も「CGの完成していない時代にありながら、スパイダーマンのイメージをほぼ完璧に再現してみせた」と絶賛している。内外での評価は極めて高い。
レオパルドン以外は。
ちなみに本家の原作者スタン・リーは、レオパルドンを高く評価していたりする(主にデザイン面に関してだが)。作品自体も「日本版は別格」と言わしめるほどにお気に入りであったようだ(同時期の米版が酷かったという噂もある)。
ちなみに、この作品に影響され興味を持ったのか、スタン・リーは後に大変な親日家になっている。
この作品の成功が後の「HEROMAN」や「機巧童子ULTIMO」の原作提供につながったという意味でも中々に意義深い作品であったのかもしれない。
レオパルドン
あまり知られていないが、このレオパルドン。東映特撮に登場する巨大ロボットの先駆け的存在でもある。
上記の通り商業上必要ということで登場したレオパルドンであったが、この超合金レオパルドンは爆発的な大ヒットを達成し、以降の戦隊ヒーローにおいて巨大ロボットを出すという路線を決定づけたのである。
一方、それ以前の東映特撮において巨大ロボが出る作品は『大鉄人17』くらいしかなく、ノウハウが足りなかったため、着ぐるみとしてはいささか使いづらいものになってしまっていた。
高下駄式で動きづらく、怪人のスーツとはサイズがあっていないので並ばせると不自然になってしまう(また、着ぐるみそのものが破損あるいは盗まれてしまったという説もある)ので、バンクシーンを多用するようになり、結果的に巨大化した怪人を一方的に必殺技で爆殺する最強ロボットというキャラクター性を確立した。
しかし…
ネット上ではネタとして親しまれているが、ストーリーの大筋そのものは基本的に本家以上に重い。最終的に明るいオチで締められる話もあるのだが、それを差し引いても展開そのものはとてもじゃないがハードすぎて笑いの種にできない場合が圧倒的に多い。「鉄十字団」の作戦は、無辜(むこ)の人々を情け容赦なく犠牲にし、その明日を奪い去る、洒落にならないものばかりなのだ。
悪への絶対に尽きることのない怒りを体現したOPテーマ、ヒーローの孤独と悲壮感を押し出したEDテーマが、『東映版スパイダーマン』という作品を端的に表現している。ネタ要素こそ多いが、断じてネタ要素だけの作品ではないのだ。
視聴していただければ「ガチな作品」ということがお分かりいただけると思う。
余談
スパイダーマッの名乗りは、よく聞くと「スパイダーマン!」と聞こえるものと、どう聞いても「スパダーマッ!」としか聞こえないものとある。
この作品から36年ぶりに東映とマーベルが手を組んだアニメ「ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ」で公式ネタにされた。だが行ったのは本人ではなく→ディスク・ウォーズ:デッドプール
余談というか留意点
ネット上にて、本家スパイダーマンの特徴として知られる腰を深く落とした印象的なポーズは「東映版からの逆輸入」と言われてきたが明確なソースはない。それどころか、原作でも似たようなポーズはこの作品の前からしている(参照)。長年、このような裏付けのない情報がネットに拡散してしまった。
また、評価を受けてきた東映版のアクションも、よく調べてみると、これ以前に制作された本国の実写作品のアクションの踏襲であるという指摘もある。
そしてついに…
「I am the emissary of hell! And I shall fight this great evil for the fate of all spiders!」
(地獄からの使者、スパイダーマッ!全てのスパイダーのために俺が巨悪を倒す!)
本家コミック「アメイジング・スパイダーマン」のイベント「スパイダーバース」(平行世界のスパイダーマンが全員集合する)にて、ついに東映版スパイダーマンがレオパルドン込みで参戦した。
残念ながらレオパルドンはソードビッカーを放たんとした所、腕を捥がれて破壊されてしまった。しかし、これは相手が敵側の長で、さらに別次元のコズミックパワー(ギャラクタスと同じ物)を得たスパイダーマンを下した直後で、その力を吸収していたことが大きい。またこの時敵はレオパルドンを破壊するために吸収したコズミックパワーを全て使い切り、その隙に山城拓也本人を含めた多くのスパイダーマンたちを逃がすのに成功している。さらに言えばここでコズミックパワーを使い切ったことが大きかったのか、敵はその後息子らからも驚かれるくらいあっさりと倒されてしまった。
その後、擱座したレオパルドンはスパイダーマン2099たちによって回収され、修理を始めたところでヴィランたちの奇襲を受ける。その最中に覚醒したレオパルドンは、手脚がバラバラの状態ながらヴィラン達を退け、最終決戦には修理完了し援軍として駆けつけることができた。
活躍等はそこまででもないのだが、見せ場には恵まれていたスパイダーマンの一人だろう。
さらに…
2019年11月6日、上記のコミックを原作としたアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』の続編作品(2022年公開予定)に、なんと東映版スパイダーマンが登場する可能性があることを、同作のプロデューサーであるフィル・ロード氏が正式に認めた。
この情報に日本のファンが大きな驚きと興奮に包まれたことは言うまでもなく、1日に渡ってTwitterのトレンド上位に“東映版スパイダーマン”“スパイダーマッ”“レオパルドン”といったワードがランクインし続けるという事態が起こった。
一応、ティザームービーが公開された際に東映版スパイダーマンを思わせるロゴが一瞬だけ映し出されていたほか、1作目にも主人公のマイルスの描くイラストの1つとしてレオパルドンがカメオ出演していたり、ポストクレジットシーンで原作のコミックでレオパルドンを回収したスパイダーマン2099が登場したりと、登場へ向けての伏線とも捉えられる要素自体は存在していた。それでも本当に製作側が出演へ向けて動き出すことになるとは誰も思わなかったことだろう。
なお、勘違いされがちだが、現段階ではあくまで“登場の可能性が示唆された”だけであり、まだ東映版スパイダーマンの参戦が正式に決定したわけではない。そもそもハリウッド映画では諸々の事情で企画がポシャってしまうこともよくあるので、まだまだ喜ぶのは早いのである。
いずれにせよ、彼が“スパイダーマン映画史上最高傑作”とも言われた同作の続編に本当に登場することができるのか、世界中から大きな注目が集まっていることに変わりはない。
今後の続報に期待しよう。
こんなところでも…?
PS4のゲーム「スパイダーマンPS4」にて、なんとこの東映版スパイダーマンのセリフが使われた。
ゲーム内で「ホログラムのスパイダーマンが出てきて敵を挑発する」という能力があるのだが、その中のセリフの一つに、
「地獄からの使者、スパイダーマン!」
というセリフがある。もはや公式が最大手である。