鉄の腕は萎え、鉄の脚は力を失い
埋もれた砲は二度と火を噴く事はない
鉄の戦士は死んだのだ。狼も死んだ、獅子も死んだ
心に牙を持つ者は、全て逝ってしまった...
作品解説
高橋良輔が監督を務めた1981年製作の日本のアニメーション作品。
ひたすら濃ゆい泥沼の政治劇と頬の痩けたヒロインで有名なリアルロボットアニメである。
主役メカ「ダグラム」が第1話で既に朽ち果てた姿で登場するという衝撃的な導入から始まり、政治劇を中心に繰り広げられる「リアルロボット」アニメのリアルさを追求した作品となっている。
主役メカであるダグラムがストーリーに登場して活躍するのが第7話と遅く、ストーリー自体も主人公の行動が大局に影響を与えず、主人公側とは無縁な場所で状況が動いていくというその展開の前代未聞さで話題を誘った。
これらにより、理想に燃えた少数の集団が命をかけて戦いメディアによって「英雄」と祭り上げられてもなお、政治力を持たない武装集団では歴史の大局を動かすことなどできないという残酷な現実を描ききったとして、そのリアルな作品描写への評価は高い。
また、サンライズ製作のオリジナルロボットアニメとしてタイトル変更やシーズン分け等のない作品では全75話という最長の記録を残しているが、その一方でリアル指向を追求し娯楽作品としてのエンターテイメント性を疎かにした結果、視聴者を選ぶ作品となってしまった等反省点も多く、監督である高橋氏はその反省点を活かし、『装甲騎兵ボトムズ』を生み出すことになる。
そしてTV放送開始から40周年目の2021年、機動戦士ガンダムサンダーボルトを手がける太田垣康男氏によってコミカライズが決定。
表題は「Get truth 太陽の牙ダグラム」
あらすじ
SC(スペースセンチュリー)152年(西暦で言うと2200年代辺り)、移民から130年経過した植民地惑星デロイアでは、地球連邦に対する独立運動が高まっていた。
そんな中、地球連邦評議会議長のドナン・カシムら評議会議員を地球連邦軍デロイア駐留軍フォン・シュタイン大佐率いる部隊が軟禁、デロイアの独立を宣言するという事件が起こる。
ドナンの息子で士官候補生クリン・カシムは父の救出作戦に参加してデロイアへ向かうが、事件解決後、父がシュタイン大佐を赦免してデロイア自治州代表に任命、独立運動派の弾圧を開始したことで、全てがデロイアを支配するための茶番だった事を知って苦悩する。
やがて独立運動の指導者デビッド・サマリン博士と出会ったクリンは、デロイアが独自に開発したコンバット・アーマーダグラムのパイロットとなり、ゲリラ太陽の牙の一員としてデロイア独立戦争へと身を投じた。
Not even justice,I want to get truth.
真実は見えるか。
登場人物
太陽の牙(デロイア7)
デロイア独立派
地球連邦関係者
用語
- 地球連邦政府
地球を統治する統一国家。メドール、マルドー、テシオ、マラン、コホード、ミンガス、ローディアの7つの自治州で構成されておりそれらが連邦評議会という最高意志決定機関により統治される。
- 地球連邦軍
地球連邦内部の治安を守る軍隊。
陸海空軍が各自治州ごとに一括して7つの軍に編成され、さらにデロイアに駐屯している第8軍が存在する。中には私設の傭兵部隊も存在する。
地球から遠く離れたスタフェラス二重太陽系の第5惑星。ワームホール航法によって移民が出来るようになったことで植民地惑星として開拓された。
自治権が与えられずに地球側に資源を搾取されている状況である為、住民であるデロイア人により独立運動が行われている。地球連邦としてもデロイアの資源が必要なので安易に独立を認められない状況である。
- Xネブラ
デロイアに時折やってくる帯電性ガス星雲の一種。
未観測要素が多く、コンピューターの性能を大きく低下させてしまう。
今作におけるロボット兵器の名称。陸戦用に開発された。
初期構想&没構想
- 初期構想では太閤記を模したサクセスストーリーとして考えられ、一ゲリラ兵士(足軽)が出世し、最終的には指導者(太閤)になる展開も考えられた。この構想は後にコードギアス反逆のルルーシュでレジスタンスが最終的に皇帝に即位する展開に反映された。
- 一年の予定が放送延長が決まり、最終展開案の一つに「太陽の牙がデロイア独立の内容に不満を抱き自ら地球でテロ活動を行う」展開も考えられたが、主人公側が悪役に見えるとの事で不採用になった。
漫画版
森藤よしひろ版
『コミックボンボン』(講談社)にて、1981年11月号から1983年4月号まで連載。原作のストーリーに沿っているが、優勢な敵相手のアクションシーンを中心としている。デイジーとラルターフは登場しない。単行本はボンボンKC版、大都社版、コンビニコミック版が存在する(いずれも現在は絶版)。
岡崎優版
『冒険王』(秋田書店)にて、1981年11月号から1983年4月号まで連載。
ボンボン版とは逆に原作の複雑なストーリーのポイントを抑え、コンバットアーマーのバトルは簡略されている。ジョルジュは最終話で背景にまぎれて登場しているのみである。単行本は2011年3月にマンガショップにて『サンライズロボット漫画コレクションVoi.2 』として「ボトムズ」とのカップリングで発売された。
太田垣康男版
TV放送開始から40周年を記念したコミカライズ。表題は「Get truth 太陽の牙ダグラム」
関連イラスト
商品化
放送当時はタカラ(現:タカラトミー)や日東科学(ニットー)から玩具やプラモデルが発売。
タカラから発売されたプラモデルはコンバットアーマーから周辺機器まで商品化されている。1/72というスケールモデルでも使用されている縮尺比を採用しており、一般兵等のフィギュアが同梱されるなどタミヤのMMシリーズといったミリタリーモデルを意識したような商品内容になっている。
キャラクターモデル関連からタカラが一時撤退したり日東科学が廃業した際に日東科学の金型を利用した復刻版が童友社より発売された事もある。
後にマックスファクトリーにて新規で発売されている。
関連タグ
チョロQダグラム - こんなシリアスな作風の中生み出された公式が病気な代物。
戦場まんがシリーズ - 松本零士による第二次世界大戦を題材にした短編集。『鉄の竜騎兵』の冒頭に登場する朽ち果てたサイドカーが、『太陽の牙ダグラム』の冒頭に登場する朽ち果てたダグラムのモチーフであるとされる。後に『ザ・コクピット』というタイトルでOVA化された際、高橋良輔はまっさきに『鉄の竜騎兵』の監督を希望したという。
鉄の腕は萎え、鉄の脚は力を失い
埋もれた砲は二度と火を噴く事はない
鉄の戦士は死んだのだ。狼も死んだ、獅子も死んだ
だが砂漠の太陽に照らされながら巨人は確信していた
若者は今日も生き 若者は今日も走っていると
巨人は若者の声を聞いた
吹き渡る砂漠の風の中に確かに聞いた