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キーロフ級巡洋戦艦の編集履歴

2015-08-30 21:13:28 バージョン

キーロフ級巡洋戦艦

きーろふきゅうじゅんようせんかん

ソ連海軍・ロシア海軍が所有している軍艦の艦級。

概要

「キーロフ級重原子力ミサイル巡洋艦」または「キーロフ級ミサイル巡洋艦」とも呼ぶ。2015年現在、唯一保有している戦艦の艦級。ソ連海軍での正式名は「1144号計画型重原子力ミサイル巡洋艦」。計画名は「オルラン」であった。さらに厳密には、2番艦以降は改良が施されており、「11442号計画型」となる。

空母を除く水上戦闘艦としては、第二次世界大戦後世界最大の軍艦であり、また非常に強力な対水上打撃力・防空力を備えている。さらに装甲も施していることもあり、ジェーン海軍年鑑などの西側観測筋においては、「巡洋戦艦」とも通称される。

ソ連崩壊後、1番艦が『アドミラル・ウシャコフ』に改名され、同時に『アドミラル・ウシャコフ級巡洋戦艦』と呼称されるようにもなったが、これはあまり定着せず、現在も『キーロフ級』のほうが通りが良い。


解説

船体(ステルス性

本級の設計にあたっては、ステルス性に配慮してレーダー反射断面積(RCS)の低減に意が用いられており、ステルス艦の嚆矢とも称される。ミサイル発射機には世界で初めての垂直発射方式が導入され、複雑な上部構造物にも、垂直面をほとんど作らないよう、各所に傾斜がつけられている。「キーロフ」がデンマーク海峡を通過する際、NATO軍のレーダーには「2,000t程度の小型フリゲート」にしか映らなかったとも言われている。


装甲

第二次大戦後に建造された艦としては珍しく、キーロフ級はバイタルパートを中心に50~100mmの装甲が施されている。際だって巨大な船体ゆえに装甲防御が必要と考えられたのだが、当時は既に装甲防御のノウハウが失われていたために、スタッフは第二次大戦時の戦艦の設計を引っ張り出す羽目になったという


動力(謎の煙突)

本級の大きな特色の一つが、核動力艦としては不釣り合いに巨大な煙突である。当初、西側諸国ではこの煙突の意義を理解できず、長い間「CONAS(Combined nuclear and steam propulsion)方式」、つまり「原子炉が供給する蒸気をボイラーで追い炊きして改質する"スーパーヒート"推進システム」であると信じられていた。

しかし実際には、初期の原子力潜水艦の原子炉の信頼性の低さに苦しめられた経験を持つ海軍総司令官セルゲイ・ゴルシコフ元帥の特命により、重油焚きボイラーによる予備動力が確保されただけであった。予備動力は西側の核動力艦でも用意されているが、キーロフ級は予備動力だけで10ノットを超す速力確保を求められたため、ひときわ大きなボイラーと煙突が必要となったのである。(実際は、核動力と予備ボイラーを同時には稼働しない)


主動力の原子炉としては、当初は原潜用のVM-4型を使用する予定であったが、MG-355「ポリノム」統合ソナー・システムの搭載などによる艦型拡大を補う必要上、原子力砕氷船用のOK-900型をベースに開発された第3世代加圧水型原子炉であるKN-3型とされた。ウラン燃料の濃縮率は70%、寿命は10年強と見積もられていたが、実運用では停泊中も原子炉を積極的に稼働せざるを得なかったことから、実際の寿命はより短かった。


武装

システム

本級の主武装は、P-700「グラニート」艦対艦ミサイル・システム(NATO名: SS-N-19「シップレック」)である。最大700km(核弾頭型)という長射程を誇るが、このために発射重量7トンと巨大化していた。元来は949型原子力巡航ミサイル潜水艦(オスカー型)用に開発されたものであり、その垂直発射機(VLS)は、コスト低減のため、原潜用のものを流用して搭載された。なお、水上戦闘艦でVLSを本格的に装備した戦闘艦は、(東西通じて)本級が初めてである。しかし、本来潜水艦用のランチャーであるため、発射時にはVLSに海水を注水する必要があり、戦闘機動中には致命的な速力低下を招く恐れもあった。

本ミサイルの大射程を生かすため、「コレル」型データ・リンクを含む17K114「レゲンダ」型衛星照準・通信システムに連接されている。これは宇宙ISRシステムを含む非常に精巧な戦術レベルC4ISRシステムであり、フォークランド紛争時には戦況を克明に中継して注目されたが、一方で、実戦時における偵察衛星の生残性や衛星データ・リンクの抗堪性には疑義も指摘されていた。


一方、艦隊防空ミサイル(SAM)システムとしては、先行して計画された1164型ミサイル巡洋艦(スラヴァ級)と同じS-300F「フォールト」(NATO名: SA-N-6「グランブル」)が踏襲された。ただし、同型ではB-204型8連装VLS×8基と3P41型ミサイル射撃指揮装置(GMFCS)×1基が搭載されていたのに対し、本級では、VLSは12基、GMFCSは2基に増強されている。また搭載するミサイルは順次に更新されており、1・2番艦は5V55RM型ミサイル、3番艦は48N6E型ミサイル、4番艦は48N6E2型ミサイルが用いられている。特に4番艦のシステムは全体に強化されていることからS-300FM「フォールト-M」(NATO名: SA-N-20「ガーゴイル」)と称されるが、これを搭載しているロシア軍艦は、2015年現在も同艦のみである。


またこれを補完する短・近距離の防空システムとしては、3K95「キンジャール」個艦防空ミサイル(短SAM)および「コールチク」複合CIWSと、いずれも新装備が予定されていた。しかし開発遅延に伴い、1・2番艦では従来通りの「オサーM」およびAK-630Mが搭載された。3番艦では短SAMは改良型の「オサーMA」、CIWSは新型の「コールチク」となり、4番艦ではとうとう当初予定の「キンジャール」短SAMの搭載にこぎつけた。


航空偽装

本級では、Ka-25/27×3機を収容できる、強力な航空運用能力を備えている。

艦尾甲板がヘリコプター甲板とされており、その直下にハンガーが設けられている。甲板とハンガーとの行き来はエレベーターを用いるが、重航空巡洋艦を除けば、ソ連/ロシア海軍でエレベーターを有する水上戦闘艦は本級だけである。


電子装備(レーダー)

長距離捜索用の3次元レーダーとしては、1134A型(クレスタII型)以来のMR-600「ヴォスホード」(NATO名「トップ・セイル」)[脚注 2]が踏襲された。一方、副レーダーとしては、従来採用されてきたアンガラー・シリーズに代えて、新型のMR-710M「フレガート-M」(NATO名「トップ・プレート」)[脚注 3]が搭載されている。また4番艦以降ではさらに改良型のMR-750「フレガート-MA」に更新されており、これとMR-600による統合システムはMR-800と呼称される。これらは1143型重航空巡洋艦(キエフ級)、1164型ミサイル巡洋艦(スラヴァ級)と同系列の装備でもあった。


対潜兵装

搭載する対潜ヘリコプターのほか、艦自体にもMS-35“ポリノフ”統合式ソナーシステムを搭載し、艦首と艦尾(VDS;可変深度ソナー)にソナー・アレイを装備している。

攻撃用としては、1,2番艦がRBU-6000、3,4番艦がRBU-12000対潜ロケット2基、RBU-1000対潜ロケット2基(全艦)を装備。2番艦以降は533mm魚雷発射管からRPK-6“ヴォトパード”対潜ミサイルも発射できる。



このように、西側での分類こそ古めかしい“巡洋戦艦”だが、実際は対艦、対潜、対空のバランスの取れた武装を搭載したシステム艦であり、VLSやステルス性など、西側さえもリードした新機軸も盛り込まれた「ブレイクスルー」的な艦であった。

キーロフ級重原子力ミサイル巡洋艦4番艦 ピョートル・ヴェリーキィ

もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな


現状(復活)

冷戦の終結と、ソビエト連邦崩壊(1991年)後は、深刻な財政難もあり、就役済みの3番艦までは活動が極度に低下。建造中だった2隻のうち、4番艦・ピョートル・ヴェリキー(ヴェリーキィ)のみ1998年に完成したが、これも当初は不活発で、2004年には海軍総司令官が「いつ核爆発してもおかしくない」と口走って、大騒動となった(実際は政争がらみで流されたデマだったらしい)。


「冷戦の異物」として朽ち果てるかに見えたキーロフ級だが、プーチン政権誕生後のロシア海軍の立ち直りに従って、徐々に活気を取り戻していく。海外拠点の乏しいロシア海軍にとって、無限の航続力を持ち、単艦でも突出して進出できる重武装を誇るピョートル・ヴェリキーは、「使い勝手の良い艦」として株を上げたのである。

再評価が進むにつれ、休眠状態(つか廃艦寸前)だった3艦も復帰計画が持ち上がり、状態の不良な1番艦キーロフは解体が決定したものの、2番艦アドミラル・ラーザレフ(旧・フルンゼ)は保留、3番艦アドミラル・ナヒーモフ(旧・カリーニン)は復帰に向けて改装工事に着手された。

現在ロシア海軍が計画中の大型駆逐艦「リデル」級や、空母なども核動力化がほぼ決定しており、これらの新世代艦とともに、キーロフ級もロシア海軍の主戦力として活動するものと考えられる。


関連タグ

巡洋艦 護衛艦 巡洋戦艦 ロシア海軍

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