概要
「ノウンスペース」とはアメリカの作家ラリー・ニーヴンによるSF小説シリーズ。シリーズ名のノウンスペースとは、既知空域を意味し人類が進出している領域を指す。超巨大人工建造物「リングワールド」、絶対に壊れない宇宙船の船殻を売っている「ゼネラル・プロダクツ」、時を封じ込める力場「停滞フィールド」などで知られている。
主な種族
- 人類
宇宙へ進出しており、人類の活動領域は既知空域《ノウンスペース》と呼ばれているl
宇宙航行技術、高度な臓器移植技術、細胞賦活剤、転移ボックスなどを持っている。
黒人、白人、アジア人が希釈された平地人(フラットランダー)、高重力惑星ジンクスに定着しているジンクス人などの人種がいる。
- パペッティア人
3本の脚がついている馬のような胴体から、2本の蛇のような腕兼頭が生えている種族。
2本の腕兼頭の先にある一つの目でものを見て、こぶ状の唇と二又に分かれた舌をものを持つ。脳は頭ではなく胴体の中に収まっている。背中に生えているたてがみを編んで社会的地位や役職を示す。2人の男性と1人の女性がつがいになって繁殖を行う。草食動物から進化したため主な食べ物は植物。
性格は非常に臆病で慎重。銀河を股にかける商業ネットワークを構築していたが、一部のパペッティア人を残してノウンスペースを去った。人類など異種族の前に姿を表すことができるパペッティア人は、彼らの社会では重度の精神障害者のように見なされている。慎重が美徳とされるパペッティア人の社会では、危険を犯すような気質は本来ありえないはずだからである。
- クジン人
二足歩行の猫のような種族。
非常に獰猛で好戦的な気質を持つ。かつて人類との間で戦争があったが敗れる。貴族や社会的地位を持たない者は名前を持たず役職名で呼ばれる。主な食べ物は生肉。
- スリント人
高度な精神操作能力で20億年前に星間帝国を築いていた種族。奴隷使い(スレイヴァー)とも呼ばれる。
全身は緑の鱗。目は大きな単眼。口の横には食事用のひげが付いている。身長は人類よりも低い。
星間帝国は崩壊したが、彼らが残したテクノロジーは今も残されている。
- バンダースナッチ
高重力惑星ジンクスの海洋で発見された地球外生命体。
スリント人は「ホワイトフード」と呼んでいる。地球人は「おどろしきバンダースナッチ(Frumious bandersnatch) 」と名付けた。
数十メートルの大きさと、60トンを超す白い巨大なナメクジのような形をした巨大生物。竜脚類のような首が生えており、頭の先に感覚器官として機能する毛の房が付いている。身体の底にある巨大な口で酵母をすくい取って食べる。首の先にある骨の中に細長い脳が収まっており、とぐろを巻いている。重さ5キロの心臓を6つ持つ。出芽によって無性生殖を行う。全身が一個の細胞で構成されており、染色体が非常に長く厚いため、放射線に強い耐性を持ち、突然変異を起こさない。
スリント人の家畜としてトゥヌクティプ人に作られた。スリント人の星間帝国が崩壊し15億年が経っても同じ姿のまま存在し続けている。スリント人達は知性を持たない生物だと思っていたが…?
『プタヴの世界』、『リングワールド』などに登場する。
主な登場人物
- ルイス・ウー
地球人。200歳の冒険家。髪は辮髪にしている。トリノック人とのファーストコンタクトを成し遂げた人物。パペッティア人のネサスに連れられリングワールドへと向かう。
- ティーラ・ブラウン
地球人。20歳の女性。奇妙な幸運の持ち主。出生の秘密を理由にパペッティア人のネサスにスカウトされる。
- ネサス
リングワールド調査の指揮を取るパペッティア人。背中のたてがみはボサボサ。
女性のような低い声で話す。パペッティア人の社会では重度の精神疾患であると見なされており、子どもを作ることが許されていない。躁鬱気味で鬱期に入ると頭と脚を折りたたんでボールのようになったまま動かなくなる。自身の種族のセックスのことについては奥手なたち。名前はケンタウロスのネッソスに由来する。
『リングワールド』、『ソフト・ウェポン』などに登場。
- 至後者(ハインドモースト)
パペッティア人の指導者。社会的地位は高く、背中のたてがみを編み込んだり染めたり、髪飾りを付けたりしている。至後者とは後ろで指令を出す者というような意味。実験党(エクスペリメンタリスト)の党首。
『リングワールド』、『リングワールド ふたたび』などに登場。
- 〈獣への話し手〉(スピーカー・トゥ・アニマルズ)
外交官的な役職を持つクジン人。オレンジ色の毛皮を持つ。ネサスにスカウトされリングワールドに赴く。クジン人らしく武闘派で宇宙船を乗っ取ろうと企てるが阻止される。先行しがちなせいか割と散々な目に合う。
『リングワールド』、『リングワールド ふたたび』などに登場。
技術・用語
- 停滞フィールド(ステイシス・フィールド)
時間の流れを極端に遅くさせる力場を発生させるテクノロジー。停滞状態(ステイシス)の物体は時間が止まっているため決して変化することがない。境界面はあらゆる波長の電磁波を跳ね返すため鏡面状。生命体の安全性を確保する緊急装置や、長期間の宇宙航行時に使われる。かつてスリント人が使っていたためスレイヴァー式停滞フィールドと呼ばれている。
『プタヴの世界』、『リングワールド』などに登場。
- 自在剣(ヴァリアブル・ソード)
単分子チェーンを停滞フィールドで包み込んだ武器。けん玉のような形状をしており、グリップの先に赤い球が付いている。剣を使用する際は、グリップの先から単分子チェーンの紐が伸び、停滞フィールドが包み込み剛体になることで目に見えないサイズの細い剣になる。スリント人が作った。
『リングワールド』などに登場。
- ゼネラル・プロダクツ社製の船殻
パペッティア人の会社が販売している宇宙船用の船殻。船殻は透明で、可視光を除きあらゆるものを通さず絶対に壊れない、という売り文句で売られている。用途に合わせていくつかの種類がある。
3号船殻:円筒形を横にして平たくし、前後を潰したような形。
『中性子星』、『リングワールド』などに登場。
ちなみに、アニメ制作会社ガイナックスの前身となったSF専門店「ゼネラルプロダクツ」は、これに由来している。
- 転移ボックス・跳躍円盤(ステッピング・ディスク)
一種のテレポート装置。人類が作った転移ボックスは密閉された小部屋の箱型。パペッティア人の作った跳躍円盤は開放式でより洗練されている。
『リングワールド』などに登場。
- 自動医療装置(オートドック)
治療を自動で行なってくれるベッド。
- 細胞賦活剤(ブースターバイパス)
不老化技術。人類はこの薬剤を投与することで数百年の寿命を得ている。
- タスプ
生物の快楽中枢を遠隔操作して骨抜きにする道具。この道具を使うことは春を送ると呼ばれる。
- 再生調理装置
食品を合成する装置。地球人向けの料理からクジン人向けの生肉、パペッティア人向けの植物など大体の食品が作れる。
物語の舞台
- リングワールド
リング状の超巨大人工建造物。幅160万km、長さ10億km、半径1億5千万km(約1天文単位)の円環。約1,200,000 m/sほどのスピードで回転することで人工重力を作り出している。リングの縁には高さ1600kmほどの外壁があり大気を押しとどめている。
恒星の周囲を周回する20枚の巨大な長方形型の遮光板(シャドウ・スクエア)が日光を遮ることで30時間周期の昼夜を作り出す。
リングワールドの居住可能面積は960兆平方km。これは地球の地球の面積の300万倍にあたる。
『リングワールド』の発表後、「リングワールドは力学的に不安定であり、少しのズレが拡大していき、いすれ恒星と接触する」という読者からの指摘が相次いだ。続編の『リングワールド ふたたび』ではリングワールドの中心軸がズレ、リングワールドに崩壊の危機が訪れる。