概要
文庫版はオーバーラップ文庫にて第1巻が2022年3月、第2巻が同年9月に刊行された。イラストは山椒魚。
2022年7月には葦尾乱平の作画によるコミカライズが『コミックガルド』にて連載されている。
物語の舞台は、主人公であるヴェルナー・ファン・ツェアフェルトが前世で遊んだ経験があるファンタジーRPGと同じような世界。いわゆる転生ものだが主人公はゲームの主人公ではなく、ゲームの舞台となる国で生きるモブ貴族となっている。ヴェルナーは前世の記憶がよみがえった後は、ゲームで起きた魔物の軍勢による王都襲撃イベントを生き残るという目的で奔走するという展開が繰り広げられる。
元となったゲームに関してはそれほど語られてはいないものの、主なイベントやアイテムの効果などについては前世の記憶通りで、ゲームの主人公パーティのメンバーには音声が付いていたことが作中で明言されている。
物語序盤で発生するはずの王国軍敗北イベントで生き残るどころか、ヴェルナーの活躍で勝利を収めたことで以後の物語展開は大きく異なっていく。
物語
「内政、防衛戦、戦後の後始末――勇者(とも)と違う、俺の戦場。
いずれ魔王と勇者の戦いが世界の命運を決める。そんなRPGゲームの世界へ転生したことを思い出した貴族の子息ヴェルナーは、本来名前も出ずに死を迎えるモブ。理由は魔王軍による王都襲撃だろう。そう判断したヴェルナーは悲劇を回避するため、前世の知識と知恵を総動員して生き残る術を模索する。
ゲームの知識で己を鍛え、勇者マゼルと親友になり……迎えたゲーム開始イベント『魔物暴走(スタンピード)』。勇者のいない戦場で、誰も気付かなかった魔物の狙いを阻止し獅子奮迅の活躍を見せたヴェルナーは、ゲームの歴史をも変えることに――!?
伝説の裏側で奮闘するモブキャラの本格戦記ファンタジー、此処に開幕。」(公式サイトの解説文より)
登場人物
- ヴェルナー・ファン・ツェアフェルト
スキル:槍術
本作の主人公。年齢は明言されていないが学生。
ツェアフェルト伯爵家の次男だったが、幼い時に優秀な兄を事故で失っており嫡男となった。その事故のあたりで前世が日本人であることを思い出し、以後は魔軍による王都襲撃イベントを生きのびるべく前世の記憶と知識、今生での貴族家嫡男としての立場を活用して立ち回る。
日本人としての記憶と感性を持っているため、他の人から見ると時々規格外の発想をする。
前世では歴史オタクかつ仕事中毒だったような模様。偽悪的な言動をすることがあるが、基本的に波乱やトラブルを避けるべく、他者には穏便に対応しようとする。
ヴァイン王国の学院側からは「優秀だが、他者を遠ざけようとするところがある」と評されてはいたものの、学生たちからは伯爵家嫡男あるいは大臣の息子という程度のモブキャラ扱いだった。しかし魔軍最初の侵攻となった魔物暴走(スタンピード)で王国軍に勝利をもたらした後は王太子をはじめヴァイン王国の重鎮たちに目をかけられ重用されていくことになる。
- マゼル・ハルティング
スキル:勇者
ゲームにおける主人公キャラクター。
勇者のスキルを持つが、自身も努力家で高い能力を有する。また一度見た物を忘れないという特別な記憶力も持つ。
実家は宿屋であり、両親と妹リリーがいる。
物語開始前には王都の学院に在籍しており、ヴェルナーと友人となっている。能力の高さと温厚な人柄から学院では人気者だったが、魔軍が侵攻を開始して以降は次々と軍功を打ち立てて更に名声を高めていく。
ゲームではラウラと結婚、魔軍により荒廃したヴァイン王国の王となっている。
- ラルラ・ルイーゼ・ヴァインツィアール
ゲームにおけるヒロインで、パーティメンバーの1人。
ヴァイン王国の第二王女。教会からは聖女として認められるほどの実力を持ち、「神託」を受けたこともある。
王族あるいは聖女として相応しい気品と気さくで親しみのある性格を併せ持つ。
ゲームでは神聖魔法による高い攻撃力と回復魔法を使いこなしていた。エンディングではマゼルと結ばれた。
- ルゲンツ・ラーザー
ゲームでのパーティメンバーの1人で戦士。
熟練の冒険者で、マゼルの兄貴分のような役回り。
いわゆる「貴族らしさ」を嫌っている描写があるが、この世界の貴族らしくないヴェルナーのことは高く評価している。
作中でヴェルナーに雇われていた傭兵隊のゲッケとは友人。
ゲームでは渋い声が評判の声優が演じていたらしい。
- フェリックス・アーネスト
ゲームでのパーティメンバーの1人で設定年齢は14歳。
孤児院出身の斥候(スカウト)。素早いだけでなく勘が鋭い。
ゲームでは罠の解除で活躍、特に彼がいないと攻略できない罠だらけの迷宮があった。
作中ではヴェルナーが渡した金貨の袋のおかげで妹のように可愛がっている孤児院の女の子を助けることができたため、ヴェルナーを兄貴と慕うようになった。
- エリッヒ・クルーガー
ゲームのパーティメンバーの1人。
各地を旅していた修道僧(モンク)で、格闘による戦闘能力と回復魔法を習得している。
僧侶らしく言動は温厚で礼儀正しい。
ゲームでは「当時としては珍しい修道僧」という設定で、前半では回復と物理戦闘を、後半では回復メインで立ち回ることが多かったらしい。
作中では、ヴェリーザ砦撤退戦後に兵士たちの治療に協力していたところでヴェルナーと遭遇。ヴェルナーの提案で勇者パーティに合流している。