ストーリー
2022年8月13日、長野新幹線の開業から25年の節目を迎えようとしていた頃のこと。埼玉県さいたま市で暮らしている高校1年生・北条望結は家族と一緒に母親の故郷である群馬県安中市松井田町横川へ帰省する。
朝倉家にて昼食後、母親と部屋の片付けをしていた望結は押し入れの中から一冊のアルバムを発見する。ページを捲ると鉄道員の中年男性の写真が納められていた。望結は写真の人物について母に尋ねようとしたが、そこに姿はなかった。家中を隈なく捜索するも見つけられずに廊下をふらつきながら諦めかけていた時、玄関扉越しに自分の名前を呼ぶ声がした。望結は溜息をついて玄関の引き戸を横に滑らせ一歩踏み出すが転倒し、全身を地面に打ちつけて意識を失ってしまう。
次に目が覚めたとき、目の前に女子高校生らしき人物が現れる。彼女の名前は『朝倉つかさ』といい、隣県の軽井沢にある高等学校に通う1年生らしい。呼びやすければ「つーちゃん」と言ってもいいそうだ。望結は女子高生の指示に従って再び朝倉家に戻ったものの、部屋の様子がおかしいことに気付く。家具や置物、日用品などの見た目が古臭いのだ。自身に起きていることを理解できないまま望結は呆然と立ち尽くしてしまう。壁に掛けられたカレンダーは「1997年9月」と表記されている。今日は28日らしい。
その後、望結は「埼玉県から来たお客さん」という設定で朝倉家に温かく迎えられた。ここでアルバムで見た中年男性と再会する。男性の名前は『朝倉勤』といい、信越本線の碓氷峠区間で機関士をしている人物であることが発覚する。夕食が終わると「つーちゃん」と機関士の二人に連れられて『特急あさま』を見るために夜の横川の町へ出ることとなる。
その日の晩、望結が夢の中で出会う存在をきっかけに明らかになっていくタイムスリップの真相とは…。
信越本線の未来と一家の命を賭けたひと夏の戦いが幕を開ける。
登場人物
・北条望結
主人公 16歳
埼玉県さいたま市出身。東京都内にある峰泉学園高校の1年生。運動部に所属していて、いつもは元気がよく明るい性格だが、ある日から謎の夢を毎晩見るようになった事を機に精神を病むようになる。また、抑強扶弱であり勘が鋭い一方で涙脆い一面を持っている。
・友人
同級生 16歳
峰泉学園高校の1年生で望結のクラスメイト。
本作では時系列を表す重要な存在として描かれる。
・北条つかさ
望結の母親 41歳
群馬県安中市出身。学生の頃は父親に憧れて横軽の機関士を志すも挫折する。北条康則とは高校時代からのパートナーで大学卒業後は埼玉県に移住し県内の企業に就職。同年に彼と結婚。ここで「朝倉」から「北条」に姓が変わる。娘に対してはやや心配性である。
・北条康則
望結の父親 41歳
長野県佐久市出身。当時の『朝倉つかさ』と同級生であり彼女の彼氏でもある。大学卒業後は東京都内の企業に就職し、埼玉県さいたま市大宮区に居を構える。冷静沈着な人物なのだが、娘からは舐められているようだ。
・朝倉文子
祖母 75歳
新潟県上越市(旧高田市)出身。夫の勤務先の関係で群馬県安中市松井田町に移住。温厚な人柄が特徴で、孫の北条望結に対しては昔も今も献身的に接している。
・朝倉勤
祖父 享年71才
群馬県高崎市出身。信越本線の碓氷峠区間を担当していた元機関士。横軽で機関士をしていた親の後を継ぐために日本国有鉄道に入社する。横軽廃止後は新前橋電車区に配属され、定年退職までの余生を過ごす。作中での登場シーンは限られているが、北条望結の護衛人として活躍する。
・朝倉つかさ
通称:つーちゃん 朝倉家の長女 16歳
群馬県安中市出身。長野県軽井沢町にある高等学校に通う1年生。幼い頃から父親に影響され信越本線の機関士を志望するようになる。しかし、長野新幹線の建設開始に併せて横軽を走る信越線自体が廃止されることがJR側で決まり、機関士になる夢が打ち砕かれてしまう。つかさはその事を引きずりながらも高校に進学する。また、本作では物語を動かす鍵となる人物であり、北条望結との出会いで展開がどう変化するのかが見どころだ。
・裏倉車掌
年齢不詳。
信越本線に携わってきた人々の記憶が集まり形成された空間で成仏出来なかった人間達の魂を吸収して完成した巨大な怪異。北条望結や朝倉つかさに対しては警戒心を持たせないようにと女子高生の姿に変身している。本作の登場シーンでは常軌を逸した行動や狂気に満ちた表情などを多くみせる。
・白髪のお爺さんと元機関士のお爺さん
年齢不詳。
どちらも北条望結と接触後に姿を消している。元々は生きていた人間だったが、登場した時点では既に怪異と化している。
本作品に登場した車両などの詳細
『軽自動車』
・三菱 ミニカ
『列車』
・国鉄115系電車 長野色
・国鉄115系電車 湘南色
・国鉄211系電車 湘南色
・国鉄169系電車 湘南色
・国鉄165系電車 高崎モントレー色
・国鉄183系、189系、489系電車 グレードアップあさま色
・国鉄489系電車 白山色
・国鉄スハ43系客車「スハフ42」
・鉄道省、国鉄ED42形電気機関車
・国鉄EF63形電気機関車「ロクサン」
・JR東日本 新幹線E2系電車
・JR東日本 新幹線E7系電車
・JR西日本 新幹線W7系電車
・JR西日本681・683系電車
・JR西日本125系電車
舞台関連の詳細
『鉄道路線等』
・JR北陸新幹線 大宮駅-敦賀駅間
・JR信越線 高崎駅-横川駅間
・旧信越本線(廃線) 横川駅-軽井沢駅間
・しなの鉄道 しなの鉄道線(旧信越本線) 軽井沢駅-篠ノ井駅間
・JR篠ノ井線 篠ノ井駅-長野駅間
・しなの鉄道 北しなの線(旧信越本線) 長野駅-妙高高原駅間
・えちごトキめき鉄道(旧信越本線)
妙高高原駅-直江津駅間
・JR信越本線 直江津駅-青海川駅間
『駅等』
・JR大宮駅 西口コンコース
・JR高崎駅 新幹線のりかえ口
・JR横川駅 構内
・JR長野駅 構内
・しなの鉄道 軽井沢駅
・しなの鉄道 中軽井沢駅(旧駅舎)
・しなの鉄道、えちごトキめき鉄道 妙高高原駅
・JR、えちごトキめき鉄道 直江津駅構内
・JR青海川駅 構内
・JR敦賀駅 新幹線改札口
『店舗等』
・おぎのや「峠の釜めし」
群馬県安中市松井田町横川297-1
・関所食堂
群馬県安中市松井田町横川553-3
・旧軽井沢銀座商店街
長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢
『保存施設等』
・碓氷峠鉄道文化むら
群馬県安中市松井田町横川407-16
・EF63-2
しなの鉄道 軽井沢駅構内
・169系S51編成
しなの鉄道 坂城駅前
・クハ115-1106
万葉超音波温泉 長野県千曲市磯部新戸倉1125
出版
デザインエッグ株式会社 Amazonにて発売中です。
【国際標準図書番号】
・上巻 978-4-8150-3919-6
・下巻 978-4-8150-3928-8