卓球
たっきゅう
解説
よく中国発祥と誤解されるが、イギリス発祥のスポーツであり、18世紀にテニスを元にして考案された(中国へは1970年代に荻村伊智朗、松崎キミ代の当時の男女世界チャンピオンが本格的に指導している)。
1902年に日本に伝来。
英語では、「table tennis(テーブルテニス)」と「ping-pong(ピンポン)」の2種類の呼び方があるが、前者が一般的。後者は、中国語は「乒乓(ping pang/ピーンパーン。パンパンの擬音語と同じ)」である。
呼称の通り、大き目のテーブルの上で、ミニチュアライズされたテニスを行うようなスポーツ。手の平サイズのラケットで、ピンポン玉を打ち合う。
見た目のスケールは小さいが、その分、プレーのスピードが非常に速く、瞬発力や動体視力、とっさの判断力などを要する奥の深いスポーツである。
トッププレイヤーともなると最高時速120kmを超える玉をわずか3m弱しかないテーブルの上で打ち合うことになるが、これではそもそも人間の体では反応できない。そのため、激しい応酬の中でも、相手の考えや動きを読んでいく戦略性が必要になる。
しかし、聴力はあると吉だが無くてもできるなど、老若男女を問わず始めやすいスポーツとして人気がある。
球技としては要するスペースが非常に小さいため、部活動やチームとして設置しやすく、だいたい何処の学校や組織にも卓球部がある。
しかし、室内でしか行えず、片付けも複雑なので、体育館で卓球の試合をするときは多人数で台のセッティング・片付けを行わなければならない。
余談だが、旅館の浴場の入り口に置いてあることが多く、何故か温泉旅館といえば卓球というのが日本では定着している。
そのため、pixivではスポーツとしての卓球のイラストだけでなく、浴衣姿で卓球をしているイラストも見かける。
バロメーター
必要な力
筋力
- 腕:即座に動かす力は要るが、怪力だと逆に不利になる。
- 腹筋・背筋:どのスポーツでも体幹の筋肉は重要。もちろん卓球も。
- 脚:必要。フットワーク練習を積むとマッチョな足になってくる。
用具と値段
- 卓球台:15万円~30万円程度。一体式とセパレート式がある。
- ネット・サポーター:セットで5000~9000円程度。個別だとネットが1500円~2000円、サポーターが3000円~4000円。
- カウンター:3000円~10000円程度。大きさは様々。
- ラケット:8000円~30000円程度。競技用はラバーが貼られていない状態で売られているのが一般的。
- ラバー:3000円~6000円程度。1枚ずつ売られているのが一般的。自分のラケットに合わせて切って使用する。
- ボール:3個で800円~1080円程度。1個ずつ売られていることはあまりなく、3個入~50ダースほどで売られている。ラージボールも大体同じ値段。また、視覚障害者向けに中に金属球が入っていて音が鳴るサウンドボールも販売されている。
- シューズ:5000円~10000円程度。
- ユニホーム:シャツが4000円~9000円程度。パンツ・スカートが3000~5000円程度。公式試合どちらも日本卓球協会公認マーク(赤いJTTAマーク)がついているもので、ボールが見えやすく、試合の妨げにならないデザインのものでなければ着用することはできない。
競技ルール(2016年現在)
卓球台(コート)
長さ2.74m、幅1.525mの長方形で、地上から76cm上の高さ。
ネットは長辺の真ん中に硬式卓球は15.25cm、ラージボールは17.25cmの高さで張られる。これが自分と相手のコートの境界線となる。
ボール
硬式卓球は直径40mm、重さ2.7g。プラスチック製。色は白かオレンジがあるが、白が一般的。ラージボールは直径44mm、重さ2.2~2.4g。色はオレンジのみ。
割れたときはもちろん、ヒビが入ったときも即交換。
ゲームの進行
試合前には、互いにラケットを交換し、相手の使用するラケットを確認する。その後コイントス(部活動レベルだとじゃんけん)で先攻後攻を決める。
サーブ権となるボールを持った人は(JTTAに於けるTリーグは20秒以内に)サーブを行う。卓球のサーブは、自分のコートと相手コートに1度ずつバウンドさせる必要がある。また、ネットにボールが触れてはいけない。
サーブ権は2回で相手にチェンジされる。
サービスされたボールは、テニス同様、相手コートに1回だけバウンドするように打ち返す(レシーブ)。両者は相手コートにレシーブを続ける。
得点を獲得する主な条件は
- 自分が打ったボールが相手コートに2回バウンドした
- 自分のレシーブに相手が打ち返せなかった
- 相手の打ったボールが自分のコートにバウンドせず床とかに落ちた
- 相手がボレーをした(バウンドしてないボールを打つ)
- キチンとしたサーブが出来なかった(前述。ただしネットに触れて相手コートに入った場合、打ち直し)
といったところ。
サーブと違ってレシーブの場合、ネットに引っかかって相手コートに入ったり、相手コートのテーブルの端(エッジ)に引っかかるようなきわどい形で入っても、有効とみなされる。
この場合、ボールは非常にイレギュラーな動きをするため、相手は失点してしまうことが多い。自分にとってはラッキーな得点と言えるが、得点した方が一言謝るのがマナーである。
どちらかが11点取れば、1ゲーム獲得。
ただし2点以上の差が必要で、10対10で並んだ場合デュースとなり、どちらか2連続で得点を取った方がゲームを獲得する。この時のみ、サーブ権は1回で交代。
最終的に既定のゲーム数を取った人が勝利。
ラケット
卓球のラケットはテニスやバドミントンのラケットとは異なり、枠(フレーム)に網(ガット)を張るのではなく、木製の板(ブレード)に赤もしくは黒のラバー(後述)を貼り付けるものである。
基本的に以下の2種類に大別される。
シェークハンド
現代卓球の主流……なのだが、一般的イメージとしては何故かあまり定着していない。
テニスなどのラケットと同じように、握手の形で握る(実際には人差し指のみ伸ばしてブレードの裏側に添えられる)。ラバーは表と裏の両面に貼るのが基本で、フォアとバックで切り替えつつ運用する。
フォア・バックの両方とも処理しやすく、特にバックハンドでも積極的に攻撃していける点が、ペンホルダーに比べ優れている。一方、ミドル(フォアかバックか微妙なエリア)への球の処理はやや弱い。
型の主流は、両面に裏ソフトを貼って攻守に対応していけるオールラウンド型や、片方に粒高ラバーを貼り、台から離れた位置で相手の打球をひたすら殺して返すカット型などがある。
グリップの形状にも幾つか種類があるので、自分に合ったものを選ぶと良い。
ペンホルダー
文字通りペンを持つ要領で握るラケット。中国式と日本式の2種類が主流。
アジアでは主流だったが、シェイクハンドが人気となって以来、特に日本式ペンホルダーの数は減少傾向にある。
フォアハンドでの攻撃力が高く、ミドルも裁きやすいが、手首を返さないといけないバックで弱い。
中国式ペンホルダー
シェークハンドのような形をしたペンホルダーラケット。文字通り中国で生まれたラケットで、中国の選手に多い。
一見シェークハンドに見えるが、グリップがシェイクよりも短い。ブレードは、シェイクハンドと同様に丸く薄いことが多く、基本的に両面にラバーを貼って使用する。
ペンホルダーでありながら裏面にもラバーを貼り、シェイクハンドと同等のバック処理能力を得る裏面打法を、実戦でも通用するレベルまで押し上げた画期的なラケットで、いわばシェイクハンドの長所を取り入れたペンホルダーといえる。
現在、世界トップレベルのペンホルダーはほぼ全てこのラケットと言ってよい。
日本式ペンホルダー
一般的に想像されやすいであろうラケット。競技用ではなくレジャー用の卓球グッズは、だいたいこれである。
指を引っ掛けやすいように、グリップが表側に大きく張り出しているのが特徴(張り出した部分はコルク材を使用)。ブレード形状には角型、丸型、その中間の角丸型の3種があり、非常に厚いのが特徴。基本的には表側にのみラバーを貼って運用する。
分厚く長いブレードが生む反発力のおかげで、フォアハンドでの攻撃力は猛烈の一言。後述の表ソフトラバーと相性が良く、台に近い位置に立ち攻撃的な試合を展開する前陣速攻型と呼ばれる選手が多い。
しかしバックハンドの弱さも一際で、戦術の幅も小さい傾向にある。以前はフォアハンドで多く打てるようにフットワークを激しく使うことで成立していたが、競技のスピードアップによりカバーし切れなくなり、現在絶滅危惧種となりつつある。
日本式ペンホルダーだからと言って裏面にラバーを貼ってはいけないと言うわけではなく、むしろ両面にラバーを貼っている選手が実際多いが、中国式に比べかなり厚いブレードにラバーを2枚も貼ることでラケットの重量はかなりのものになってしまい、取り回しが非常に悪くなる。
日本式、という割には、もはや日本のトップレベルの選手でこれを使っている人はいない。どころか世界的に見ても人気は低い。しかし柳承敏など、韓国や台湾のトッププレイヤーでは、これを用いてオリンピックを制覇する人もいる。
ラバー
ラケットに貼るゴム製のシート。現代の規則では、両面に貼る場合、片方が赤色、もう片方が黒色でなければならない。試合開始直前にラケットを相手に見せて、どのようなラバーを使っているのかを示す。それを守っていれば裏表は基本的に決まっていないので好きにチェンジして使うことができる。(なお2021年から色の選択肢が増えることになっている。)
サーブ・攻撃と守備とで面を使い分ける選手が多く存在する。
種類にもよるが、だいたい1ヶ月、趣味レベルのプレイヤーでも2~3ヶ月で交換となる。こまめにクリーナーで表面を磨き、使わないときにはシートを貼るなどして手入れしないとあっという間にだめになる。
裏ソフトラバー
粒上の部分が隠れていて、外見は平たいラバー。
回転のかかった球を出すのに適している。
反対にいえば、相手の出す回転球にも影響を受けやすい。
コントロール系や粘着系など種類がまた分かれる。
表ソフトラバー
粒上の部分が表側に露出しているラバー。浅い粒がいくつも並んでいる。
球離れがはやく、速度のある球を出すのに適している。
回転球を出すのは裏ソフトラバーに、回転球への影響の受けにくさは粒高ラバーに比べると劣る。
また、ラージボールではこのタイプのラバーのみ使用できる。
変化系やスピード系など種類がまた分かれる。
粒高ラバー
表ソフトラバーと同じ構造だが、文字通り粒が高く、細さもさまざまである。
自ら回転球を出したり、速度のある球を出したりすることは難しいが、相手の回転球に影響を受けにくく、さらに変化球にして返すことができる(上回転↔下回転。無回転には無回転)。
回転球を出すことができる裏ソフトラバーとの組み合わせで使うことが多い。
アンチスピンラバー
見た目は裏ソフトラバーと同じではあるが、自ら回転球を出すことができない。
別名「変化系裏ソフトラバー」。
長所は、粒高ラバーと同様に、相手の回転球に影響を受けにくいことである。また、無回転球にして返すことができることである。
回転球を出すことができる裏ソフトラバーとの組み合わせで使うことが多い。
現代のルールでは、ラバーの色は同色禁止と、試合前に相手とラケットを交換して確認し合うのがあるため、使用者は少なくなった。
戦法
卓球の戦法はテニスやバドミントンと違って複雑なため、勝つためには相手の戦法を理解する必要がある。戦法には、大きく分けて以下の2種類がある。
攻撃型
攻撃中心の選手。卓球の醍醐味の一つであるスピードを扱うため、打っていて楽しい。
ドライブで攻めるドライブ型と、思い切りのよいスマッシュで攻める速攻型、両者の混合型である変則型とに分かれる。
現在は、シェイクハンドの両面に裏ソフトラバーを貼り、フォアとバックの両方で鋭いドライブを返す型が主流。
守備型
粘り強い返球を繰り返し、相手にミスをさせる戦法を使う選手。点を取りやすいが、かなり陰湿で地味な印象を受ける。ラリーが続きやすく、攻守が入れ替わる展開になる傾向があるため見ている分には楽しい。
カットで粘るカット型とショートやブロックを多用するショート型とがあり、前者は長身の選手に、後者は素早い移動に向かない選手に向く。
主な技
攻撃技
ドライブ:球の上部をこすることで高速の上回転をかける技。
スマッシュ:強打。卓球の場合、叩きつけるのではなく、後ろから叩いて振りぬく。
フリック:相手の浅い下回転球を拾い、逆に小さいドライブで返す技。
チキータ:下回転系の短い打球を回転の影響が少ない側面をとらえ横回転の打球で返す高等な返球術。繰り出すのはかなり難しい。
守備技
カット:台から離れ、下回転や横回転をかける技。
ツッツキ:台上で球の下をこすり、前に押し出す技。返す感が強い。
ブロック:相手の攻撃技を受け止めて返す技。
ショート:相手の回転球を押し出して返す技。回転に強い。押す力が強い場合プッシュとも呼ばれる。
ロビング:台から離れ、相手の強打を山なりの打球で返す。
サーブ
下回転サーブ:下回転のかかったサーブ。手前に落とすと返しにくい。
横回転サーブ:横回転のかかったサーブ。間違えると飛ばされる。
ナックルサーブ:無回転サーブ。突っつくと球を上げてしまう。
王子サーブ:しゃがみ込みながら放つサーブ。汎用性が高い。
大会
世界的には、世界卓球がとくに有名である。国内では、国体にも種目に卓球がある。
卓球はもともとイギリスでテニスが雨でできない時のための遊びとして始まった。
その後、コルク球がセルロイド球になり、台上で弾む時に「ピンポン」と鳴ることから卓球のことを「ピンポン」と呼ぶようになった。
20世紀になると、ラバーが登場し、競技色が強くなった。
各国の様子
卓球はアジアの国々が強い傾向にあり、特に中国はほぼ一貫して世界のトップクラスにある。
80年代には、シェイクハンドによる新たな戦法の開発と共にスウェーデンが中国を抜いて世界トップの座に立ったが、その後中国が盛り返している。
今、卓球大国と言われているのはなんといっても中国で、卓球を国技としており、選手人口はもちろん最大。他国の強豪選手にも、中国から帰化した人がいることがざらである。
そのほか、韓国や台湾、シンガポール、そして日本など、アジアは押しなべてハイレベルな傾向にある。日本勢は1970年代以降中国の陰に隠れている感があるが、福原愛や福岡春菜を中心に奮闘しており、男子も好成績を残し続けているなど、現在は盛り返してきている。
プロリーグのあるドイツをはじめ、新戦法で中国の王座を一時揺るがしたスウェーデンなど、ヨーロッパでも人気は高い。
日本でも2017年に独ブンデスリーガを参考にセミプロリーグ・Tリーグを立ち上げ、競技の発展に努めている。