概要
福岡県の石材メーカー『國松石材株式会社』社長・國松良康氏から、福岡県立美術館に寄託された『化物尽くし絵巻』に記載されている妖怪。
この絵巻に描かれている妖怪画は、狩野派に伝わる同名の絵巻と共通であるが、それぞれに独自の名称と詞書が書かれているという違いがある。
この妖怪は他の絵巻や書物ではおとろしやおどろおどろとして記載されているものと同じ姿をしているが、書かれている物語は全く異なっている。
物語
豊前国(福岡県)にある奈良林という村で、夜になると農民に飼われている牛馬が突然いなくなるという事件がおきた。
村に住む藤助という男の家は被害にあっていなかったが、ある晩生臭いにおいが漂ってきたと思うと、厩の中で化け物が牛を一口に飲み込んでいたのである。
それを目撃して肝を冷した藤助は、急いで庄屋のもとに駆けつけてそれを伝えると、次の日に村人総出で山狩りを行うことになった。
山狩りが始まってしばらくすると、生臭いにおいのする岩穴が見つかり、その中には昨晩牛を一飲みした化け物が潜んでいたのであった。
村人たちは竹槍でこの化け物を仕留めたが、その亡骸を調べると背丈が6尺(約1.8m)、口の大きさは1丈1尺(3.3m)もあったという。
なお村の古老はこの化け物は「ししこり」というものだと語ったとされる。