ルナ・アーツェノン
るなあーつぇのん
以下ネタバレのため注意
「愛する人と一緒なら、ほんのちょっとのスープと堅いパンがあればいい。こんな豪華なドレスがなくたって、自分で縫ったツギハギのお洋服を着ればいい。二人で一緒に見られるなら、綺麗な宝石じゃなくても、小さなガラス玉が一つあればいい」
「いつか、愛する人ができたら、結婚して、二人で小さなお店を開くの。その人の子供を生んで、愛情をたっぷりかけて育てるわ。普通の子でいい。元気で、幸せになってほしい」
「なにも、特別はいらない。ありふれた日々でいいわ。穏やかで、優しくて、楽しい、そんな家庭がわたしの夢よ。」
「誰かの大事にしている、小さな幸せを守るのが優しさなの。」
「銀水聖海の平和とか、統一とか、正義とか、それはすごく大事なことなんだろうけど、そんな大きなことを成そうとしたら、きっと、小さな幸せは忘れられちゃうんだわ」
概要
ルナ・アーツェノンとは、『魔王学院の不適合者』のキャラクター。
災淵世界イーヴェゼイノの幻獣機関所長「ドミニク・アーツェノン」の孫娘で本作の主人公、アノス・ヴォルディゴードの前世の母親。弟はパリントン・アネッサ
髪はショートカットで、活発そうな十代の背格好をしている。
イーヴェゼイノに住む幻魔族。その中でも特に魔眼が優れており、本来は見えないはずの幻獣を見ることができる。
有する渇望は「子を産みたい」というものであり、愛する人ならどんなに質素で、貧しい暮らしでもよく、結婚して子供を産み、穏やかで優しくて、楽しい、そんな家庭で暮らすのが夢であると、彼女は語った。
災渦の淵姫の宿命
ルナの祖父であるドミニクは滅びの獅子の研究に熱中し、狂っていた。
そこでドミニクは滅びの獅子とは如何なるものかという渇望に駆られ、彼女を獅子を産む母胎にしようとする。
だが、滅びの獅子を産むのには子宮を《渇望の災淵》に変える必要がある。
ドミニクはルナの「子を産みたい」という渇望を《渇望の災淵》と同じ力を持つといわれる「懐胎の鳳凰」という幻獣に変え、滅びの獅子を孕ませた。
これによりルナは銀水聖海を滅す厄災、アーツェノンの滅びの獅子を生むという運命を背負わされる《災渦の淵姫》となってしまう。
この事件にはとある人物の思惑も絡んでいるようだが……?
ある子供との出会い
一七〇〇〇年前 ルナが《災渦の淵姫》であると告げられてから千年後
ルナはある子供と出会った。
容姿は銀髪で、黒い衣服を羽織っている、どこか大人びている子供だった。
その子供はどうやら味が理解できないらしい。ルナはその子供───影に「美味しい」と思わせるような料理を作ろうと、花嫁修行の一環として鍛えた料理を振る舞ううちにしばらくの間一緒に暮らすようになった。
穏やかで、楽しく暮らしていく日々の中。ルナは次第に、《災渦の淵姫》という宿命を忘れられ、遠い昔に諦めたかつての夢を思い出すようになっていた。花嫁となり、子をもうけ、幸せに暮らすという夢を─────
ある日、ルナは真実を打ち明ける。───だが、影は「諦めるのはまだ早い」と言い、ルナに救いの手を差し伸べた。影はルナと暮らすうちに味を覚えるようになっていた。彼はルナを「自分にとっての恩人」と呼び、あるものを与えて、一つの希望をルナに与えた。
聖剣世界にあるという霊神人剣エヴァンスマナを使えばその宿命を断ち切ることができるかもしれない、と。
宿命から逃れ……そして
影は自分と同じく大きな宿業を背負っていた。唯一違ったのは彼はそれを悲観せず、戦い続けてきたということ。そんな彼といるうちに次第にルナは自分も運命と戦える。そんな気がした。
場所は鍛治世界バーディルーア
そこに一隻の銀水船が停泊していた。聖剣世界ハイフォリアが男爵、レブラハルド・フレネロスのものである。ルナがそこに逃れ、影からもらった「あるもの」———ハインリエル勲章を見せ、自らの宿命を断ち切ってもらえるよう、頼み込んだ。
狩猟貴族はハインリエル勲章に自らの遺言である《聖遺言(バセラム)》を遺す。その《聖遺言》はレブラハルドにとっても友人、ジェインのものだった。
友人の遺言に思うところがあったのか。レブラハルドはその頼みを聞き入れてくれた──
影と出会い三千年の時が流れた───
エヴァンスマナを手に入れるには生涯に三度行われる王位継承戦に勝ち抜かねばならない。
その間、ルナは銀水船の片隅で必死に己が渇望と戦い続けた。雨が降るたびに胎動し、自らを産んでくと希うその衝動を彼女は泣きながら押さえつける。
そして、その日は唐突に来た。
ルナが滞在していた銀水船にイーヴェゼイノの災亀が衝突したのだ。船内が混乱している中1人の男が現れた————彼女の弟パリントンである。
パリントンは言った、
自分が孕む子が獅子となる宿命からは逃れられない、と、自分は祖父とは違う、イーヴェゼイノに戻り自分と一緒にささやかな幸せを送ろう、と
そして狩猟貴族たちに矢で打たれながらもルナをつれもどそうとする。
だが———
「……わかるよ。パリントンの言うことも。馬鹿なことしてるかもしれないって思うわ。だけど、わたし諦められない。信じたいの」
「最後は必ず、愛が勝つって」
————その時だった。
一筋の光明がルナとパリントン、そしてパリントンを排除しようとする狩猟貴族たちを照らした
光の先にあるのは男爵レブラハルド。その手には聖剣が握られていた。
王位継承戦によりレブラハルドが霊神人剣エヴァンスマナに選ばれたのだ。
レブラハルドが指揮を取る。
彼とその部下が放つ深層大魔法《破邪聖剣王道神覇(レイボルド・アンジェラム)》
そして目にも止まらぬ速さで《渇望の災淵》を貫いたもの
その二つの瞬きによりルナへと続く道が現れる。すかさずレブラハルドは霊神人剣を振り下ろす—— 霊神人剣 秘奥が肆《天覇王剣》
それは宿命を断ち切る剣。その剣身ごとルナと《渇望の災淵》を切り裂いた
そしてルナは泡沫世界へと落ちていく。彼女を蝕んだ宿命を捨てて────
その後エレネシア世界へときたルナは滅びの世界を生きる亡霊である幻名騎士団の団長セリス・ヴォルディゴードと出会った。彼は銀水聖海において夢物語とされる転生魔法の実験をしていた。ルナは次第にそんなセリスに興味を持つようになっていった。
転生魔法は失敗すれば永劫に死の苦しみを味わうことになるという。
転生魔法《転生(シリカ)》が不完全ながらも完成し、その効果を証明するために亡霊である幻名騎士の面々が次々と減っていく。
そんな中、ルナは自ら望んで転生魔法の実験体となった。
そして転生に成功し、2000年前に転生したセリスと結婚。
子どもを身ごもるが、不適合者グラハムに襲撃され、自分の命と引換にアノスを生んだ。
そしてその根源は命の輪廻の赴くまま、混沌の時代にイザベラとして生まれ、再びセリスの転生体であるグスタと出会い、アノスを再び産むことになる。彼女が望んだ幸せな家庭の母親として。