※この記事は八章以降のネタバレを含みます。注意してご覧ください。
「亡霊に名は不要 しかし、冥府に行く者は、せめてこの名を刻むといい。幻名騎士団、団長──」
CV:森川智之
概要
情を捨て、存在を亡霊として殺し、魔族のために魔族に仇なす存在と密かに戦っていた「幻名騎士団」の団長(イシス)であり、アノスの父親。
ヴォルディゴードの一族であるため「滅びの根源」を有し、使用する魔法も滅びの属性のものが多い。<幻影擬態>と<秘匿魔力>をアノスに教えたのも彼である。
魔族を守るために非情に徹し、多くの者を葬り去ってきた。笑うこともほとんど無く、仲間が負傷していても意に介さないなど冷酷な一面もある。
前代の創造神エレネシア曰く、彼もまた神族の秩序から逸脱している「不適合者」とのこと。
能力
主に紫電を操る滅びの魔法を得意とする。また、膨大な紫電の魔力を秘めた「万雷剣ガヴドゲィモン」の使い手でもある。
主な使用魔法・技
「滅尽十紫電界雷剣(ラヴィア・ネオルド・ガルヴァリィズェン)」…<波身蓋然顕現>にて本体含め計十本となった万雷剣を天にかざし、空から落ちた滅びの紫電を纏い、一振りの刃として振り下ろす魔法。浅層魔法でありながら、深層世界の住人にもダメージを与える程の威力。
「灰燼紫滅雷火電界(ラヴィア・ギーグ・ガヴェリィズド)」…一〇の魔法陣を繋ぎ合わせ、巨大な魔法陣を構築し、世界が紫に染まる程の量の紫電を撃ち出す魔法。魔法が終わった後には灰燼しか残らない。
「波身蓋然顕現(ヴェネジアラ)」…可能性を現実化させる魔法。セリスはこの魔法で九つ(本体含めると十本)の万雷剣を現実化させ、<滅尽十紫電界雷剣>を発動するなどした。
「幻影擬態(ライネル)」「秘匿魔力(ナジラ)」…「幻影擬態」は姿形を透明にする魔法であり、「秘匿魔力」は魔力を隠蔽する魔法。偵察や奇襲などに使用される。両者は隠密性を高めるために同時に使われることが多い。
万雷剣、秘奥が拾「滅刃雷火」…斬りつけた箇所に滅びの稲妻を走らせ、相手を滅ぼし尽くす秘奥。その際に放たれる魔力は<滅尽十紫電界雷剣>以上であり、幻獣が憑依した勇者エルウィンに放った時はその体を跡形もなく滅ぼした。
経歴(ネタバレ注意)
第八章
幻名騎士団として暗躍している中、彼は人間、魔族、精霊、神族の遺体が、腹を食い破られて置かれてある光景を目にする。
誰が何の目的で行なったのか、その謎を追っている途中で、黒幕である不適合者グラハムと対峙する。その最中に彼が行ってきた蛮行を軽々しく打ち明けられながら、それでも感情を動かすことなく死闘を繰り広げるも、最後のところで首を刎ねられセリスは命を落としてしまう。その首と万雷剣はグラハムに奪われてしまい、それ以降グラハムはセリスの首を付けて活動している。その為、六章以降に登場していた、セリスを騙る軽々しい口調の男の正体はグラハムである。
彼が敗れる直前に放った<波身蓋然顕現>も特に効果が出ず、またグラハム自身や彼の持つ乱竄神鎌の特性などにより根源が切り離されてしまい、<転生>も叶わなかった。
亡霊としてひたすら戦ってきた彼だが、その根底には息子に平和な時代を生きて欲しい、平和を見せてやりたいという願いがあった。グラハムに敗れた後、創造神ミリティアに両親に関する記憶をアノスから消すことを望んだのも、両親を滅ぼしたのが人間であることを知られない(=アノスが人間への憎しみを持たないようにする)為という彼なりの気遣いであった。最期には自身の力で息子の願いを叶えてやれなかった、厳しいばかりの不甲斐ない父であったと嘆き、涙を流しながら滅びた。
八章エピローグのネタバレ注意
グラハムとの一件が落着し、ミッドヘイズの見晴らしの良い丘に父の形見(=万雷剣)を突き刺しアノスが感傷に浸っていると、近くで現代のアノスの父親が剣の素振りをしながらアノスを気にかけている。アノスが話しかけると、親子は普段のような砕けた会話をしたあと、父の一言で二人で一緒に剣の心を研ぎ澄ますやつをすることに。
すると彼は丘に墓標として刺された万雷剣を抜こうと手をやるが、両手で力を入れても当然ビクともしない。父は気にせず無理やり構えたように装い、俺に名前を聞けとアノスに猛アピールする。
アノスが仕方なく聞くと彼は自信ありげに、
「亡霊に名は不要っ!」
「滅びゆく貴様は、この名を頭に刻め。俺は幻名騎士団、団長─────
────滅殺剣王ガーデラヒプトッ!」
と名乗った。
すると剣に熟練した者以外には抜けないはずの万雷剣が何と現在の持ち主であるアノスを差し置いて勢いよく抜けた。
まるで本来の持ち主の手に戻るかのように。
彼は時代を越え、記憶と力を変え再びアノスの父親として生まれ変わっていたのだった。
また、四章序盤で彼が二千年前の魔族を自称していたときの名前「滅殺剣王ガーデラヒプト」が何とセリスの二つ名であったことが判明する(実際に過去回想でセリス本人が使っていることが十二章で判明する)。
第十二章
一万四千年前
霊神人剣の渾身の一撃により「渇望の災淵」を切り離され銀海を彷徨ったルナ・アーツェノンと二匹の猫の幻獣は泡沫世界エレネシアに流れ着く。そこに居合わせた勇者エルウィンが彼女の存在を怪しみ、殺そうとしたが、二匹の幻獣はエルウィンに憑依してしまう。それでエルウィンは幻獣に操られるようにルナに迫ってくるが────
それを退けたのがセリスだった。彼はいとも容易くエルウィンを滅ぼすと、創造神エレネシアの創り出した餌食霊杯に授肉した猫の幻獣を<羈束首輪夢現>にて無力化し、その場を後にした。が、彼女はついて行き…その後色々あって幻名騎士団と行動を共にするようになる。
それから一ヶ月程後、セリスは幻名騎士団のメンバーに実験台として<転生>をかけていった。しかしその実験が失敗したとエレネシアから聞かされると、傍で聞いていたルナは自分も実験台にしてくれと頼み込む。否定する彼に対し、曖昧ながらも「胎内にある霊神人剣が<転生>を成功させてくれるはず」と言い、彼に<転生>をかけさせる。そして彼女の体が消えゆく直前に、初めて二人は互いの名前を打ち明けたのだった。
神話の時代
ルナは転生に成功し、ディルヘイドに生まれる。両親と共に農耕都市デルアークにて、食には恵まれないながらも穏やかに生活していた。記憶は徐々に戻っていっているが、朧気な箇所もある模様。
しかし彼女がまもなく十五歳になる日のこと、幻名騎士団を名乗る何者かに襲われ、両親を殺されてしまう。彼女も目を付けられ絶体絶命だったその時___
<転生>を成功させたセリスが現れ、<滅尽十紫電界雷剣>及び万雷剣にてその何者かを滅ぼした。そして以前と同じように彼は何も言わず去って行くが、彼女は何も言わずついて行く。その後セリスは「強い母体が必要だ」「俺の子供を産め」と言い、二人は子供を作ることにした。
アノスを身篭ったルナは静養の為、ツェイロン家の集落へ向かうことになる。ルナとは仲が良く到着すると歓迎され、出産までの日々を用意してくれた部屋で過ごす。
しかし、ある日謎の男が訪れて____突如ルナに襲いかかった。
ルナは応戦するも既に衰弱しきっていた為、抵抗することは敵わず、腹を切り裂かれてしまった。直後にセリスも加勢し、<滅尽十紫電界雷剣>にて一旦退けるが、彼女はもう手遅れであった。最期にセリスはルナを看取りながら「亡霊の妻に、それは望んでなったのだ」と言い、ルナの根源は滅び、息絶えた。
愛を伝え合うことこそなかったが、それでも夫婦として互いを真に愛し合った二人はこのようにして別れたのだった。
関連タグ
十章以降のネタバレ注意
「──見ているか、アノス。これは二千年前の俺が贈る魔法」
「我が生涯、最後の<波身蓋然顕現>」
実は不適合者グラハムに敗れる直前に行使した<波身蓋然顕現>は発動しており、二千年に渡って可能性としてのセリスの存在を繋ぎ続けてきた。
そして可能性のセリスは現代の自分の体にて、エクエスによって操られ鍛冶・鑑定屋「太陽の風」を襲っていた暴食神、狂乱神、福音神をかつての幻名騎士団一番と共に退け、<滅尽十紫電界雷剣>にて滅ぼした。
一度は見殺しにしてしまった母親の命、そして息子の帰る場所を二千年越しに守り通したのだった。
そして彼の意識は____父親として、息子の勝利を確信し消えゆくのであった。