二律僭主ノア
のあ
「二律を定める」
「そうか」
「しかし、卿は狂いはしないと私は思う」
「卿は私と同じぐらい強いからだ。アムル、我が兄弟よ」
「──凪の日とて、この海のどこかで風は吹いている。それは卿らとつながっている自由なる風だ」
銀水聖海において「決して触れてはならない」とされる存在「不可侵領海」に指定される人物。不可侵領海の代表格「魔王」にとって唯一の不可侵領海とされる極めて強大な存在。不可侵領海にとっての不可侵領海
彼が〝二律僭主〟と呼ばれる所以は、一万七千年前に融合世界ボルムテッドの王位を力によって簒奪したからだと言われている。秩序に従った正式な即位ではなかった為、ノアは「僭主」と呼ばれるようになった。
そして、一万四千年前から「銀水学院パブロヘタラ」を監視するため、パブロヘタラ大陸付近に樹海船アイオネイリアこと幽玄樹海を置き、周辺の海域がパブロヘタラの手に落ちないように牽制していた。
《追憶の廃淵》
銀水聖海において既に滅びた、あらゆる世界の追憶を具象化するとされる、銀水聖海にある《淵》の一つ。
「今はもう存在しない世界」、「故郷へ馳せる想い」、「主への忠心」、「在りし日の仲間達との思い出」。
行き場を失った全ての感情はこの《追憶の廃淵》に引き寄せられ、時としてそれらが具現化する。
そんな《追憶の廃淵》から生じた存在は総じて「廃淵の落とし子」と呼ばれる。多くの追憶を体現した存在である為、他の者よりも優秀な存在として誕生する。
だがノアはその中でも「滅びていない世界」から誕生した初めての例であり、唯一の存在である。
銀水聖海で最も深きに位置する世界「深淵世界」へと赴くまでは幼い外見をしており、その身体に成長の気配は存在していなかった。
しかし深淵世界に赴き、そこで全ての世界から集まる混沌と魔法によって融合したことで「混沌を操る力」「混沌を克服した肉体」を手に入れた。
後に身体は成長し、長身の美青年へと成長を遂げた。
ノアはアノスと同じく根源に滅びの力を内包するが、主に影魔法や深化魔法、そして混沌の力を使用する。
不可侵領海の代表格である魔王にとって唯一の不可侵領海であり、その実力は並の「魔王」を優に上回る。銀水聖海においても頂点を争う程の高い実力を持つ。
魔法
- 二律影踏(ダグダラ)
対象の影を踏むことで、あらゆる防御を無視して存在の「根源」を踏み砕くことができる二律僭主の魔法。
この魔法を使えば本体への攻撃が効かなくなり、敵味方問わず影を攻撃しなければ攻撃が当たらなくなる。
「覇弾炎魔熾重砲」より遥か深層に位置する魔法。
- 背反影体(ダヴエル)
あらゆる秩序に反する影体を生み出す魔法。
この魔法によって具現化された影は、あらゆる理から離反する力をもつ。作中では「世界から秩序を切り離す」、「〇〇であるという秩序(概念)を打ち破る」といった様に、あらゆる秩序(概念)に干渉できる。
汎用性が高く、本編では様々な使い方がされている。
- 覇弾炎魔熾重砲(ドグダ・アズベダラ)
蒼き恒星を射出する炎属性の深層魔法。「魔黒雷帝」を纏った「獄炎殲滅砲」を軽く飲み込むほど強力で、高い連射性を誇っている為に使い勝手が非常に良く、ノアが使う魔法の中でも使用頻度の高い魔法の一つ。
元々は魔弾世界エレネシアの魔弾魔法である。
- 掌握魔手(レイオン)
あらゆる秩序(概念)や権能、攻撃魔法などを一点に収束させ、魔力と膂力に任せて力尽くで掌握する魔法。
魔法制御を僅かにでも間違えると即座に暴発する。
しかし一点に収束させ、掌握した力の分だけその威力が跳ね上がり、自身の魔法の強化にも使用できるので使い方次第では既存の魔法の強さを凌駕する魔法を放つことができ、強力である。
- 黒七芒星(デムド・イヴ)
黒の七芒星を描き、そこを通過した魔法の威力を著しく増加させることができる深化魔法。通常の手段では深化させられない魔法も、遥か深淵へと迫らせて深化させることができる。途方もない威力の増加率を誇る同系統の魔法の中でも、最強格に位置するほど強力。
- 黒六芒星(デムド・イラ)
深化魔法「黒芒星」の上位互換。黒の六芒星を描き、通過した魔法の威力を途方もなく増幅させる魔法。
- 黒芒星(デムド)
「黒七芒星」や「黒六芒星」と同系統の深層魔法で、この系統の中では最も弱い深化魔法である。
それでも、通常の深化魔法である「深印」と比べると、桁違いの威力の増幅率を誇る、途方もない魔法。
- 影縫鏃(デミレ)
黒い鏃を影に突き刺して、相手を地面に縫い付ける束縛魔法。深層世界の強者だろうと身動き一つ取れない程の拘束力を誇る。
- 影鈴(ゼン)
影の鈴を鳴らすことで、対象の影を浮かび上がらせる魔法。作中において、アノスが「波身蓋然顕現」にて分身した可能性と本体を判別する為に使用された。
- 幽影創造(ゼブラル)
二律僭主ノアが樹海船アイオネイリア(幽玄樹海)を創造する為に使用した影魔法。影を操ることで、あらゆる実体を有するものの形状を変化させる事ができる。
魔眼
- 混滅の魔眼
混沌とした滅びを本質とする魔眼。矛盾や混沌とした存在を上書きして滅ぼす強力な力を持つ。
開眼しかけただけで世界を滅ぼしかねない程、圧倒的な混沌とした滅びの力を内包する魔眼。
あまりに強力すぎる為、普段はその力を極限まで抑えることで秩序(概念)を滅ぼす力を発揮する。
魔法
- 転生(シリカ)
転生魔法。あの大魔王ジニア・シーヴァヘルドをして不可能と言わしめた夢の魔法。
仮初めの転生魔法とは違う、真の転生魔法。
前世の能力や記憶を引き継いで生まれ変わることができる。魔法を発動さえすれば、火露(滅びた後の根源)が世界の外に流出しても効果がある。
転生世界ミリティアでのみ成立する限定魔法である。
※この先、原作「魔王学院の不適合者」における極めて重大なネタバレを含みます！
「誰かの大事にしている、小さな幸せを守るのが優しさなのだそうだ」
「そして、私は優しい子なのだそうだ」
「恩人の言葉を、偽りにするわけにはいかぬ」
その正体は、「アノス・ヴォルディゴード」の転生前の姿、前世である。
一万四千年前、二律僭主ノアは永劫の呪いに縛られた恩人を救うために、泡沫世界エレネシアで転生の秩序を構築した後、転生魔法にてその世界へと消えた。
それ以降、銀水聖海でアノスが出会った二律僭主は本人ではなく、彼の執事たるロンクルスが替え玉として戻らぬ筈の主の帰りを信じ、二律僭主を演じていた。
