概要
何かを習得・学習するには、それに対する一定の知識や経験、興味、そして心身の成熟といった素地が必要であり、これらをまとめて「レディネス」と呼ぶ。これが満たされない状態での訓練は効率が悪く、時にマイナス効果すら生んでしまうとされた。アメリカの心理学者ゲゼルは、実験である一卵性の双子の赤ん坊に対し、片方には階段を上る訓練を多く施し、もう片方は片方がある程度登れるようになってから訓練を施した。しかし、両者が階段を登れるようになった時期は後者のほうがむしろ早かったことから、「レディネス」が提唱されるに至った。
子供の学習に関しては「成熟優位説」と「学習優位説」の二つの主な立場があり、レディネスは「成熟優位説」に基づいている。教育は早ければ早いほど良いとする「学習優位説」に対し、「成熟優位説」は一定の成熟がなければ教育は無意味であるとした。レディネスの提唱は過剰な早期教育に待ったをかけたが、消極的な「待ちの教育」を生み出すにも至ってしまった。また、一定以上の成熟があれば(つまりレディネスがあれば)年齢に関係なく効率的な関係ができるわけではなく、ある時期を過ぎてしまうと学習が困難、もしくはほぼ不可能になるものも存在するため、学習可能性と学習適時性を概念の中に取り入れる必要性に迫られることとなった。
現在においても「レディネス」という言葉は使われるが、「成熟優位説」を前提として自然に形成されるのを待つことよりも、「学習優位説」に基づいて形成するための教育を行うことが重視されている。