概要
複数の国家の同意により中立を保証された国。戦時には交戦国からの侵攻や攻撃を受けない代わりに、交戦国のいずれにも便宜を与えてはならないとされる。また平時にも、他国と軍事同盟を結ぶことは禁止される。
なお「永世」が永遠の意味では無い為、周辺国の事情によってはベルギーのように中立を放棄することもある。
永世中立の維持において問題となるのは、周辺国が中立の保証を破棄して侵略して来た際に対抗手段が限られる事である。永世中立であるので他国から同盟軍を呼ぶ事もできず、自国の戦力だけで対処を狭られる。
実際、第一次世界大戦において永世中立国であったベルギーとルクセンブルクは、ドイツの侵略を受ける。非武装であったルクセンブルクは全土をドイツに奪われ、軍事力はあったベルギーは抗戦するも国土の大部分をドイツに奪われた。
永世中立国の代名詞的なスイスは二度の世界大戦を中立で乗り切った。だがそれは、徴兵制・世帯ごとの重火器義務があるなど、国民皆兵を地で行く戦力で参戦両陣営を軍事的に撃退し続けた結果である。
現代でも永世中立は続いているものの、ロシアによるウクライナ侵攻が発生してからは、中立による立場の危うさが浮き彫りとなっている。
各国がウクライナへ武器弾薬を供与、売却するなか、スイス製の武器弾薬がウクライナへ再輸出できないという問題が発生し、各国から非難される事態となった。これはスイスが、戦争中の国への武器輸出を禁じているため。さらにウクライナへの再輸出だけでなく、もし購入国が戦争状態になった際に、スイスからの供給が停止するのではないか?という懸念が広まり、スイスからの購入を控える国が出た結果、兵器輸出は大きく減少している。
この事態を重く見たスイスは、兵器再輸出緩和を巡って国を二分する議論へ発展している。
主な永世中立国
オーストリアがNATOに加盟していないのは永世中立国であるためであるが、軍事同盟ではないEUには加盟している。
永世中立国
永世中立国(自称)
- カンボジア(憲法で永世中立と非同盟を規定するが、周辺国は保障していない)
- コスタリカ(永世中立を宣言しているが、米州相互援助条約に加盟し米国の庇護下にあるため事実上は中立国ではない)
- モルドバ
- ラオス
- リヒテンシュタイン
永世中立国だった国